連勝ストップも「ポシティブな終わり方ができました」
4月27日、琉球ゴールデンキングスはアウェーで島根スサノオマジックに68-77で敗れた。3月15日の天皇杯優勝後から始まったレギュラーシーズンの連勝は16でストップ。第3シードでチャンピオンシップに進み、クォーターファイナルで島根と再び対戦することが決まった。
この試合、琉球は帰化枠のアレックス・カークがコンディション不良で欠場。島根の帰化枠ルーク・エヴァンスにミスマッチを突かれてインサイドで得点を許し、先手を取られる。また、司令塔の伊藤達哉も大事を取って後半は出場せず。岸本隆一が骨折で離脱している上、ゲームメークに長けた伊藤がプレータイムを制限したことは、オフェンスの停滞を招く筆頭の要因となった。
桶谷大ヘッドコーチは、敗因を次のように語る。「16連勝中はしんどい展開でも我慢ができていた。今日は正直、ディフェンスで頑張ってもオフェンスでよくわからないシュートを打ってしまっていました。勝っている間はみんなで我慢強く、ペイントタッチしたり、ボールをインサイドに入れたりできていたのが、今日はミッドレンジジャンパーやプルアップを多投して崩れて印象があります」
ただ、「最後に追い上げてくれて、後半のスコアは勝ちました。ポシティブな終わり方ができました」と、アウェーで大量リードを許した場面でも最後までハードワークで戦い抜いたことを評価した。
特に大きかったのは、岸本の離脱を受けて先発起用が続いている注目ルーキー、崎濱秀斗が積極的にシュートを放ったこと。これまで崎濱はターンオーバーをしないことに神経を使うあまり、持ち味であるオフェンス面での積極性が失われていた。しかし、佐々宜央アソシエイトヘッドコーチから「エナジーが全然足りていない」と叱咤されて奮起。3ポイントシュート6本中2本成功に終わったが、シュートチャンスで打ち切れたことは大きなステップアップだ。
伊藤「隆一さんの分も暴れたい気持ちです」
4年連続のファイナル出場からの王座奪還へ向け、琉球にとってチャンピオンシップ最大のテーマは岸本の穴をいかに埋めるか。ただ、チームの大黒柱でリーグ随一のクラッチシューターである岸本の役割を担える選手はいないし、それを指揮官も求めていない。各選手は、これまで自身が担ってきた仕事の質を少しでも高めることにフォーカスするだけだ。
例えば伊藤は、岸本離脱によってB1で確固たる経験を持つ唯一の司令塔となった。30歳の彼に、ベテランとしてのさらなるリーダーシップを期待する声もあるだろうが、伊藤は「立ち位置の変化などは感じないようにしています。自分にプレッシャーをかけて動きが悪くなるのは嫌なので、自然体でやっていこうと言い聞かせています」と冷静だ。
さらに伊藤は「移籍1年目で、最初のほうは遠慮していた部分が少ながらずあったのが、ここにきてフィットしてきている。自分の良さを出せていて、チームのプラスになってきていると感じます」と手応えを語る。
「楽しみが一番強いです。隆一さんの分もチャンピオンシップで暴れたい気持ちです」と大一番への意気込みを語る伊藤のこのメンタリティーを、チーム全員が持つこと。それが琉球がいつも通りの力を出すために大切だ。
「コーチングをしていて面白いチームになっている」
振り返れば今シーズン開幕前、琉球は今村佳太、アレン・ダーラム、牧隼利、田代直希など3年連続ファイナル出場を支えた複数の主力が移籍。彼らはそろってハンドラー役など複数の役割こなせるユーティリティーさが持ち味で、桶谷ヘッドコーチの選手起用の幅を広げてくれた。
彼らに代わって出番を増やしたのが、脇真大、ケヴェ・アルマ、伊藤たち。どちらかといえばバランス型というより、とがった個性を生かして光るタイプだ。
個性的な選手たちをうまく噛み合わせていくのは簡単な作業ではないが、それでも様々な試行錯誤によって今の琉球はパズルがしっかりとハマっている。だからこそ桶谷ヘッドコーチは「みんながゲームチェンジャーになれるチームと思っています」と総合力に自信を見せる。
「メンバーが揃えば、どのチーム・相手にもしっかりとマッチアップできて、ディフェンスで相手にアドバンテージを作られることはない。逆にオフェンスではとがった持ち味のある選手が多いことで、アドバンテージを作れるのが今シーズンの良いところです。オフェンス、ディフェンスの両方で、いろいろなオプションを持てることで最強のチームになってきている確信があります。今はコーチングをしていて面白いチームになっていると思います」
チャンピオンシップ出場の8チームの中で、オリンピックやワールドカップの国際舞台を経験したり、リーグベスト5に選ばれた実績を持つ日本人選手がいないのは琉球だけだ。岸本不在もあり、日本人エースの部分では他チームに比べ明らかに見劣りする。だが、琉球にはこのマイナスを補ってあまりある、多種多様な個性が融合する強さがある。
シーズン開幕前、安永淳一GMはチーム編成について「今のBリーグは能力の高い選手が自由にプレーして勝てる時代ではなく、本当に組織力が必要です。個の能力に依存するのは、キングスのスタイルではないと思っています」と語っていた。チーム創設から大切にするこの信念がブレなかったからこそ、複数の主力離脱の危機を乗り越え、西地区優勝に返り咲いた。
スターパワーではなく、あくまで個性豊かな選手が噛み合うチームとしての強さを追い求めた琉球がどんな結末を迎えるのか楽しみだ。