ラストプレーでの接触、試合後に審判団が誤審を認める
ニックスとピストンズの対戦はフィジカル重視のバスケになる。ピストンズはそのスタイルでプレーオフ進出を果たしたし、ニックスはそれに対して真っ向勝負を挑む。その第4戦は最終スコア94-93と超ロースコアながら、両チームが見応え十分のバスケを見せた。
32得点11アシストのジェイレン・ブランソンはクラッチプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに相応しいパフォーマンスを見せた。敗れたピストンズもケイド・カニングハムが25得点10リバウンド10アシストのトリプル・ダブルを記録。しかし、主な話題は両チームのエースではなく勝敗に影響を与えたラストプレーの誤審だ。
1点ビハインドのピストンズは、第4クォーター残り11秒からの攻めをカニングハムに託す。このシュートはリングに嫌われたが、ゴール下で奪い合いとなったルーズボールは左コーナーに転がり、そこにはティム・ハーダウェイJr.が待ち構えていた。キャリア12年目のベテランはこの絶好機でも落ち着いており、シュートを打つタイミングを遅らせ、慌てて飛び込むジョシュ・ハートのファウルを誘い、なおかつシュートも放った。決まれば逆転、決まらなくてもフリースロー3本が得られる。
ところがファウルはコールされず、試合終了のブザーが鳴った。映像をチェックしてフリースローが与えられるのが当然だと考える多くのファンはすぐには席を立たず、アリーナが騒然とする中、ピストンズの指揮官J.B.ビッカースタッフが激高して審判へと詰め寄る。一方でブランソンは静かに仲間と握手を交わし、残り47秒の逆転3ポイントシュートを含む27得点を挙げたカール・アンソニー・タウンズはデトロイトまで駆け付けたニックスファンと大喜びで抱き合った。
「見ての通り、明らかにファウルだった」
その後、審判団はハーダウェイJr.に対するハートのファウルがあったと認めたが、勝敗はもう変えられない。ハーダウェイJr.は「見ての通り、明らかにファウルだった」と語り、ハートも「接触はあった。ファウルかどうかは審判の判断だ」と認めた。
ブランソンは第3クォーター残り3分、バックコートからボールを運ぶ際にデニス・シュルーダーのディフェンスを受けてファンブルし、このルーズボール争いでシュルーダーとともに転倒して足を痛めた。すぐには起き上がれず、助け起こされても自分の体重を支えられない状態でロッカールームに下がっている。それでも第4クォーター残り10分に治療を終えて戻って来た。この時は10点ビハインドだったが、そこからブランソンは11本中7本のシュートを決めて15得点、さらに2アシストでチームを逆転へと導いている。
ブランソンはロッカールームに戻ったことを「深呼吸をして気持ちを落ち着けた」と語る。「大変な試合だったけど、チームメートとコーチングスタッフが僕を支えてくれた。僕にとってはそれがすべてだ」
ブランソンはラストプレーの判定をどう思うかと質問されると、「何と言ったらいいのか分からない」と戸惑いの表情を浮かべたが、会見に同席していたタウンズは晴れやかな笑みとともに「何を言わせたいのかな?」と語った。「勝ってマディソン・スクエア・ガーデンに戻れる。うれしいよ」