
5針を縫ってプレーを継続「盛り上がるだろうなと」
セルティックスvsマジックの第3クォーター終盤、予期せぬ方向にリバウンドが落ちる。これを拾おうとゴガ・ビタゼが腕を振り回し、その肘が背後にいたクリスタプス・ポルジンギスの額を打ち抜いた。
仰向けにコートに倒れたポルジンギスの額から鮮血が流れ出す。肘打ちを見舞ったビタゼは自分の行為が引き起こした事態に当惑しており、故意にポルジンギスを傷付けたわけではないだろう。それでもマジックは強度の高い守備でプレーオフへと勝ち進んできたチームで、その向こう見ずなプレーは時に荒っぽい雰囲気を作り出す。ジェイソン・テイタムは第1戦でダンクに行った際、ブロックに来たケンテイビアス・コルドウェル・ポープと空中で衝突し、フロアに落下した際に右手首を痛めて第2戦を欠場した。
最初は自分に降りかかった出来事にショックを受けていたが、応急処置のためコート外に出る際には楽しそうに笑っており、その様子にボストンのファンは大いに盛り上がった。
「WWEみたいで楽しかった。やられても立ち上がれば観客が盛り上がってくれる。最高の気分だった」とポルジンギスは振り返る。
彼は額に大きな絆創膏を貼ってコートに戻った。ビタゼにはフレグラントファウル1が宣告され、ポルジンギスは何事もなかったようにこのフリースローを放った。第4クォーター序盤に額を5針縫って、ラスト7分はプレーした。
イライラを誘うプレーに「その手には乗らないよ」
あれだけの出血をして、5針も縫うことになっても、彼はコートに戻って来た。「当たり前だよ」とポルジンギスは言う。「僕が『5針縫ったんだからもう無理だ』なんて言うわけがない。足は普通に動くんだしね。『戻ったら盛り上がるだろうな』と思ってワクワクしていた。僕はこういう瞬間が大好きなんだ。僕のキャリアではケガで離脱することも少なくなかったから、プレーできる時には全力を尽くす。笑顔でプレーを楽しみ、観客と一緒に盛り上がりたいんだ」
このポルジンギスの態度のおかげで試合は荒れた展開には至らなかった。コート上に混沌を持ち込ませなければ、実力上位のセルティックスが優位となる。プレーオフが始まってどの試合でもフィジカルの要素が増し、激しい接触が衝突や小競り合い、乱闘を生んでいるが、セルティックスはそこから距離を置こうとしている。
「すごくフィジカルな試合だけど、プレーオフでは当たり前で、特にマジックとのシリーズはずっとこんな感じだろう」。試合後の会見でそう語るポルジンギスの額には、縫合された生々しい傷が走っているが、彼は笑顔でこう話す。
「向こうはフィジカルにプレーして、僕らの集中を妨げようとしてくる。挑発してイライラさせて、テクニカルファウルを引き出す狙いも当然あるだろう。でも、それが分かっていれば対応するだけのこと。その手には乗らないよ」