ジョー・マズーラ

「私たちは、ただのコーチングをしているだけなんだ」

ナゲッツのマイケル・マローンヘッドコーチの電撃解任は大きな衝撃を与えた。プレーオフ直前というタイミングに加え、2シーズン前にはフランチャイズ史上初のNBA制覇をもたらした指揮官を、約2シーズン後にあっさりと解雇。この思い切った決断に関して、誤ったものと感じている人が大半だ。

コーチ業は「就任した時に解任のカウントダウンが始まる」と言われるほどに、一寸先は闇という世界。近年のNBAではヘッドコーチの立場や残した実績はより軽んじられる傾向があり、NBAタイトルですらもその座を確約するものではなくなっている。2020年レイカーズ優勝のフランク・ヴォーゲル、2021年バックス優勝のマイク・ブーデンフォルツァーも、今回のマローンと同じく優勝から2年以内に指揮官の座を追われている。

このような状況について、セルティックスの指揮官ジョー・マズーラは「私たちは、ただのコーチングをしているだけなんだ。そのことを承知して契約をするんだ。終わりの時が来れば、そうなるだけだよ」と自身のスタンスについて語る。そして「10年間も指揮をとっていたという事実により注目すべきだ」と、マローンが長期政権を築いたことを賞賛すべきと続けた。

10年も同じチームにいられるコーチは多くない。今のNBAではポップ(グレッグ・ポポビッチ)、スポ(エリック・スポールストラ)、(スティーブ)カーだけだ。みな長期に渡ってチームを率いることを望んでいるけど、誰もがその機会を得られるわけではないことはわかっている」

マズーラはセルティックスを十分に連覇を狙えるチームに仕上げてポストシーズンを迎える。36歳の彼は周囲から最も将来が安泰なリーグ屈指の若手ヘッドコーチと見られているが、彼は「自分のモチベーションの1つになっているのは毎日、『これが僕にとって最後の日かもしれない』と思って目覚めることだ」と、自分のことをまったく特別視していない。

「感謝、ハングリーな気持ちを保つためにもそういった視点を持たないといけない。コーチをできるだけ長く続けたいのなら、そうやって健全な精神のバランスを保たないといけない。自分はいつでも代替可能な存在だ」