マイケル・マローン

若手を起用しない指揮官と対立したGMもチームを去る

レギュラーシーズン残り3試合というタイミングでナゲッツがヘッドコーチ解任を決断した。2023年にナゲッツにNBA優勝をもたらしたマイケル・マローンは解雇され、今後はアシスタントコーチのデビッド・アデルマンが暫定で指揮を執る。

ジョシュ・クロンケ球団社長はこの決断をこう説明する。「簡単に下した決断ではないし、何か一つの問題で決めたことでもない。長くチームを見る中で懸念される傾向があり、それが勝利で覆い隠されていた。スポーツの世界では勝ち負けがすべてで、多くのことをあやふやにしてしまう。このままでは今シーズンはすぐ終わるだろう。これらの要素を総合的に考え、今シーズンの残りにできる限りの成果を出すという意味で決断を下した」

「タイミングが不自然なのは理解しているが、これが最善の決断だと思っている。私は選手を信頼しているし、アデルマンを信頼している。これまでに達成してきたこと以上のことを成し遂げる可能性がある。今回の変更により、その可能性を活用できると考えている」

ナゲッツはオールスター直前に7連勝したが、その後は11勝13敗。直近では4連敗を喫して西カンファレンスの4位から8位までが0.5ゲーム差にひしめく中位グループに飲み込まれていた。残り3試合、1つでも落とせばプレーオフのファーストラウンドをホームで開催できなくなり、2つ落とせばプレーインに回る可能性もある。

ナゲッツは同時に、カルビン・ブースGMの今シーズンで満了となる契約を更新せず、事実上このタイミングでGMから外すことも発表している。マローンは2015年からヘッドコーチを務め、ブースは2017年からナゲッツに加わり、2020年にGMとなった。2人のコンビで2023年のNBA優勝を勝ち取ったのだが、今シーズンに関係悪化が報じられていた。若手に切り替えて常にチームをフレッシュに保ちたいGMと、実績ある選手を重用して勝ちたい指揮官。立場の違いによる意見の対立よくあるが、今回は2人揃ってナゲッツを去ることになった。

ヨキッチが奮闘してもNBAファイナルまで戦い抜けない

今シーズンのナゲッツは様々な問題を抱えていた。開幕前にケンテイビアス・コールドウェル・ポープがフリーエージェントとなって退団し、若手のクリスチャン・ブラウンが信頼できる先発へと成長してその穴を埋めたものの、セカンドユニットは大きな弱点となった。ここでラッセル・ウェストブルックを重用したのがマローンであり、ブースGMは若手を無視する起用法に怒っていたという。それでもウェストブルックが復活のパフォーマンスを見せてチームは形になっていったが、プレーオフを前に主力のコンディションが整わない。ジャマール・マレーはハムストリング痛を抱えて欠場が増え、攻守の強度が上がるプレーオフでどれだけ戦えるかが懸念されていた。さらにはマレーがサポートすべきオフェンスだけでなく、ディフェンスとリバウンドでもヨキッチに頼りきりの状況だった。

問題を抱えるナゲッツをシーズンを通して支えたのがニコラ・ヨキッチで、今シーズン67試合に出場して32回のトリプル・ダブルを記録し、勝つことでチームの課題を覆い隠していた。フロントはこの状況を見過ごさず、プレーオフ直前のタイミングでも手を打った。

ヨキッチという究極兵器を擁するナゲッツは、プレーオフ進出やファーストラウンド突破で満足していいチームではない。だが、現状から考えるに、プレーオフを勝ち進むにつれてヨキッチの負担は増す。それはどのチームでも同じだが、どれだけヨキッチが奮闘しても今のナゲッツにNBAファイナルまでを戦い抜くスタミナはないだろう。それがクロンケの言う「このままでは今シーズンはすぐ終わるだろう」だ。

現地4月6日のペイサーズに敗れた試合後、マローンは「ディフェンスがひどすぎて代償を支払わされた」と語ったが、それは彼の解任という大きな代償に繋がった。