「シーズンを通して言っているのに成長できていない」
3月23日、川崎ブレイブサンダースはホームで大阪エヴェッサと対戦。99-92というハイスコアリングゲームを制した前日のゲーム1に続く勝利を狙ったが、プレー強度と集中力を高めた大阪の勢いにのまれ、78-85で敗れた。
現在14勝30敗と厳しい戦いが続く川崎は、今シーズン、突き放されるとそのままズルズルと崩れる試合が目立っている。しかし、負けはしたもののこの日は違っていた。劣勢の第3クォーターから第4クォーターにやり返し、僅差で粘り強くくらいついた。
この反撃をけん引した1人が、野﨑零也だ。ファウルトラブルもあってプレータイムは16分48秒と伸びなかったが、力強いドライブによる9得点、タフなディフェンスと攻守で存在感を発揮していた。
「大阪さんの勝ちたい気持ちに負けてしまったところがある印象です。イージーシュートやフリースローをたくさん与えてしまったのが敗因の1つだと思います」と試合を総括した野﨑は、自身のプレーを次のように語る。
「日本人選手がペイントアタックできていない状況が多かった中、今日はできた部分はあります。ただ、決めないといけない3ポイントシュート、不必要なターンオーバーにディフェンスでイージーにやられたところもありました。1試合を通して高い強度でやり続けないといけないと感じています」
第4クォーターの粘りについて尋ねると「踏みとどまるのはすごく良いことですが、結局は負けてしまっています」と言った。
「後半の出だしで、相手の勢いに負けているのはすごく感じました。自分たちからアクションを起こさないといけないのに、受け身になってしまう。シーズンを通して言っていることなのに成長できていない。そこを改善しない限りは今回のようなゲームになってしまって、なかなか勝てないと思います」
「『見に来たくない』と思われたら僕らの価値は下がる」
敗戦が続くことによる負の連鎖もあるが、今の川崎は、相手に流れを渡すとチームのムードが一気に沈むことが少なくない。流れが悪い時こそ闘志を全面に押し出し、強気のプレーでやり返すことが求められるものだが、そういった部分は欠けている。チームを鼓舞することも自分の役割ととらえる野﨑にとっては忸怩たる状況だ。
「闘志が出ている時もあれば、(66-83と大敗した)サンロッカーズ渋谷戦の時のように、前半で点差を離されてヘッドダウンをしてしまう時もある。浮き沈みが激しいのが現状です。20点離された状況で鼓舞するのは自分自身もきついところはあります。でもそういう時、コーチ陣に言われたことをやるだけでなく、コートに出ている選手だけでもなく、チーム一丸となって自分たちを鼓舞しないといけないです」
野﨑はさらに言葉を続ける。「1人ひとりがもっとリーダーシップを取っていかないといけない。思っていることをみんなで言い合える関係性があった時は、すごく良いバスケができます。負けが続いて、なかなか思うことを言えないのはわかりますが、負けているからこそやらなければいけないことがたくさんあります。もっとそういう時間を増やしていければと思います」
今の川崎は、チャンピオンシップ出場が絶望的な状況だ。ただ、それでもホームゲームには多くのファンが詰めかけ、アウェーにも駆けつけるファンも少なくない。これはクラブのこれまでのファンベース拡大の賜物だが、野﨑はこの盛況が当たり前のものではないと肝に銘じている。
一方的に大敗する試合が続くことで、ファンの信頼、熱量が一気に崩れてしまう可能性がある。そのような危機感を感じているからこそ、野﨑からは次のような言葉が出てくる。
「ファンの方たちに無様な姿を見せて『もう見に来たくない』と思われたら、そこで僕たちの価値は下がってしまう。そういうことも含めて、誰のためにバスケットをやっているのか、ファンの皆さんのためだろうという話はしています」
「『昔の川崎は……』と思われるのは嫌です」
そして野﨑は、どんな厳しいチーム状況でも譲れない覚悟を持っている。
「自分たちはプロバスケットボール選手なんだというプライドを持ってプレーしないといけない。これは常に心の中に入れておかないといけないです。アマチュアではないので、お金をもらってバスケをしています。それでヘッドダウンするようなプレーを続けるようなら、プロを名乗る資格はないです」
26日の水曜ゲームは琉球ゴールデンキングス、週末の連戦は千葉ジェッツとリーグ上位の強豪との対戦が続く。だからといって、負けても仕方ないとはならない。野﨑は終盤戦に向けての決意を語る。
「タフな相手が続きますが、ニック(ファジーカス)と(藤井)祐眞さんが抜けてチャレンジャーであることはわかりきったことです。これまでと状況は完璧に変わりましたが、『昔の川崎は……』と思われるのは嫌です。だからこそ僕たちができることを120%出す。失うものはないので、受け身にならず、自分たちから先制パンチをくらわせていかないといけないと思います」
チーム全員が「過去は良かったと言われたくない」という強い反骨心と、「ファンの期待を裏切りたくない」という思いを持ち、どれだけ戦い続けられるか。これまで築いていたカルチャーを維持するため、川崎の正念場は続く。