カワイ・レナード

延長にもつれる激闘に終止符を打つゲームウィナー

現地3月9日のクリッパーズvsキングスは両チームとも2桁のリードを築くことがない接戦のままオーバータイムにもつれた。キングスではデマー・デローザンとザック・ラビーンが揃って好調だった。クリッパーズはジェームズ・ハーデンが29得点9リバウンド11アシストとトリプル・ダブルに近い活躍で攻守を引っ張っていたが、ともに決め手を欠いていた。

97-97で迎えたオーバータイムでも、接戦は変わらず。ハーデンとデリック・ジョーンズJr.の連続得点でクリッパーズが一度は2ポゼッション差としたが、すぐにラビーンの3ポイントシュートとデローザンのプルアップジャンパーで追い付かれる。残り1分を切ってからはデローザンとハーデンが得点を取り合い、リードチェンジを繰り返した。

それでも1点ビハインドの残り20秒、クリッパーズは最後の攻めをカワイ・レナードに託した。カワイはオフに右膝を手術した後にコンディションが戻らず、今年に入ってようやく復帰を果たしたが、2カ月が経過して22試合に出場した今もプレータイムの制限があり、膝の状態を常にチェックしながらの戦いを強いられている。

この試合はオーバータイムにもつれたこともあってプレータイムが長くなっており、腰を痛めてベンチ入りしなかったタロン・ルーに代わって指揮を執ったブライアン・ショーは、延長に入ってカワイを一度ベンチに下げた。第4クォーターも12分フル出場しており、プレータイムの制限を超えていたからだ。

「プレーしたかった。出場時間の制限があっても、とにかく試合を決めたかった」。そう振り返るカワイの熱意に負けて、ショーは「1分間だけ休め。そうしたら戻す」と告げた。

カワイの出来は決して良くなかった。延長残り2分でコートに戻るまで、フィールドゴール18本中6本成功、3ポイントシュートは7本打って1本しか決まっていなかった。今のクリッパーズはハーデンが主役となっており、シュートタッチが悪くてプレータイムの制限を超過してるカワイを戻す必要はなかったのかもしれない。だが、ショーは「決まっていなくても良いシュートは打てていた」という理由でカワイを信じた。そして最後のチャンスをカワイに託した。

「ただ目の前の試合に勝ちたかっただけだ」

ショーの指示は「最後まで時間を使ってシュートを打て」で、カワイはそれを忠実に遂行した。マークにつくキーガン・マレーに飛び込む隙を与えず、残り6秒でドライブを始めたが、慌てて無理に突っ込むのではなく、ドリブルをつきながら相手と味方の位置関係を確認して、スピンムーブからシュートを狙う。ターンでマレーをかわし、ヨナス・バランチュナスがヘルプに飛び込むのより早く放ったシュートは、リムを2度叩いて、試合終了のブザーとともにネットを通り過ぎた。

「ディフェンスの動きをよく見て、自分の行きたい場所にボールを運んでシュートを打つことができた」とカワイはこの劇的なゲームウィナーを振り返った。

ハーデンはカワイで勝負するというショーの指示を受け入れて囮となり、カワイの活躍を自分のことのように喜んだ。「一流の選手はいつだって一流のプレーをするものさ。苦しんでいても、求められれば力を発揮して大切なシュートを決める。彼は努力を怠らない。だから自信を失わずにいられるんだ」

これでカワイは『クリッパーズのエース』としての力強さを取り戻すのだろうか。「そんなことは考えていない。ただ目の前の試合に勝ちたかっただけだ」とカワイは語り、こう続けた。

「僕の目標はシーズン最後まで健康で戦い続けること。またイチからリハビリを始めるとか、トレーニングキャンプに参加できないとか、そんな心配なしに良い夏を過ごしたい。もっとも今日で言えば、僕たちはこういう勝利を必要としていた。この勝ちがチームを成長させてくれるだろう」