文=丸山素行 写真=野口岳彦、丸山素行

ディフェンスからリズムを作る栃木のキーマン

昨年9月に開幕したBリーグも残り13試合となり、シーズンの大詰めを迎えている。

栃木は東地区の『3強』と呼ばれる構図の中で首位をキープし、今週末にアルバルク東京との対戦を控えている。日本代表強化合宿に参加した遠藤祐亮に、首位攻防戦を迎えるチームの状況を尋ねると「自分もコンディションは良いですし、チームも全体的に良い雰囲気です」と充実した表情を見せた。

だが、栃木はA東京と2勝2敗、川崎ブレイブサンダースとは1勝1敗、シーホース三河とは1勝1敗と、実力が拮抗する上位陣との対戦で2連勝をしたことがない。プレーオフの戦いを見据える遠藤は、「土曜も日曜も良いようなチームにしないとプレーオフでは勝てないと思います。2試合を通してスタイルを崩すことなく戦わなければいけません」と気を引き締める。

長いシーズンを戦う上で、日々の練習で慣れや中だるみが生まれてしまうことはよくあることだが、栃木に慢心は見られないと言う。「同じプレーの練習でも『なあなあ』にならず修正しています。スクリーン一つにしても、しっかりやろうというのは練習からやってます」

栃木はBリーグの中で唯一平均失点が60点代という守備に優れたチームだ。その中でも遠藤は『エースキラー』と呼ぶに相応しいパフォーマンスで特に輝きを放っている。ディフェンスに関しては「そこは自信を持ってこれからもやっていきたい」と自分のストロングポイントを理解し、チームを引っ張りたいと意欲を燃やしている。

「自分に付かれると嫌だなと相手に思われるようなプレーヤーでいたいと思います。ディフェンスを大事にし、ディフェンスからリズムをつかむのがブレックスなので、それを自分が作れるようにしていきたい」

年々レベルアップを続け、栃木と代表で評価を高める

栃木ではキャリア初となる全試合先発出場を続けている遠藤。シーズンを重ねるごとに成長し、信頼を勝ち取ることでプレータイムを増やしてきた。そのたゆまぬ努力は日本代表でも形になりつつある。昨年7月のウィリアム・ジョーンズカップで日本代表に初選出され、現在は代表強化合宿に3回とも招集される『常連』となった。

現状は人数の多い代表候補の一人でしかない。だが、Bリーグの厳しいシーズンと並行して定期的に代表合宿に参加して、栃木とはまた違ったバスケットに触れることは、遠藤にとっては最高の刺激、さらには成長の糧となっている。

3月27日と28日に行われた第3回重点強化合宿では「回数を重ねるごとにやりたいこと、やらなければいけないことが理解できて、アジャストできてきた」と、ルカ・パヴィチェヴィッチが推し進める日本代表のバスケットの理解を深めている。

今回の合宿では人数の関係上、遠藤は本職ではないポイントガードのポジションでプレーしたが、何でも吸収する遠藤にとってはそれもレベルアップの材料だ。

「栃木ではポイントガードがマークされた時、2番がボール運びをするオプションが今のところないんです。だから自分がポイントガードのポジションもできるようにしてレベルアップしていきたい」

当面の課題はピック&ロールの使い方、その習得に取り組む

日本代表の座を勝ち取るには得点力アップが必須と以前話していた。着実に平均得点は上がってきているが、前節の仙台との第2戦では今シーズン3度目となる無得点に終わり、波が激しい。

現状の課題を遠藤はこう語る。「ピック&ロールの上手さが全然ないです。もうちょっとハンドリングだったり、味方の使い方やディフェンスを見る目を余裕を持ってできるようになればレベルアップできると思います。栃木でも代表でもピック&ロールを使う機会が多いので、シュートではなく得点のバリエーションを増やしたいです」

栃木では「渡邉(裕規)さんがピックを使うのが上手いのでアドバイスをもらってます」と明かしてくれた。

日本代表の課題でもあるピック&ロールの習得がチームの底上げとなり、彼自身にとっても代表定着への道だと遠藤は確信している。「もっと上手くならなきゃいけないことはピック&ロールだなと思っています。それができている試合は自分もチームもいいリズムになるんです。もっと上手くなれば、代表でも試合に絡めるような選手になれるんじゃないかと思うのでレベルアップしたいです」

話を聞いた短い時間の中で『レベルアップ』という言葉を何度も口にした遠藤。その果てしない向上心が毎年の成長を促している。ピック&ロールという課題と向き合うことが、栃木の初代Bリーグチャンピオン、そして日本代表への定着という『成功』を後押しすることになるだろう。