男子日本代表

文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

バスケ日本代表は21日にイラン、24日にカタールと対戦

2月21日にワールドカップ予選で対戦するイランはここまで7勝3敗、オーストラリアに次ぐグループ2位につけている。この予選が始まる前の2017年夏に行われたアジアカップではファイナルに進出。オセアニアから編入されたオーストラリアに敗れて準優勝に終わったが、今でもアジア屈指の強豪であることに変わりはない。イランはFIBAランキング26位、対する日本は47位であり、アジアカップではベスト8進出を逃している。

それでも、この予選を通じて日本代表はメキメキと成長した。4連敗スタートからの6連勝で、ラスト2試合に連勝すれば自力でワールドカップ出場権をつかみ取ることができる。オーストラリア相手に挙げた予選初勝利が変化のきっかけとなったが、渡邊雄太と八村塁の揃い踏みとなった昨年9月のホームゲームでイラン相手に70-56と快勝したことも大きい。

イランは十分すぎるほど強大な相手であり、今回は渡邊も八村も不在、さらにはアウェーの戦いとなるが、日本代表は自信を持って敵地に乗り込んでいる。ワールドカップ出場を決めるための大一番であるとともに、アジアから世界へ打って出るためにも、ここでアジアの強豪イランを撃破することには大きな意味がある。

FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 2次予選 Window6応援ページ

そのためのキーマンを7名ピックアップ。日本代表のバスケットの根幹を担う選手たちを紹介する。

富樫勇樹

富樫勇樹 試合を支配するAKATSUKI FIVEの司令塔

富樫勇樹は167cmと一際小柄だが、そのスピードとスキルはアジアのトップレベル。かつてアメリカ挑戦で話題となったスピードスターはBリーグの戦いの中で成熟し、日本を代表するポイントガードとなった。

自身のスピードを生かした守備から攻めへの切り替えの早さ、大きな選手の身体をスクリーンに使ってフリーになる一瞬を逃さずに決める外からのシュートが持ち味。Bリーグでは1試合平均14.2得点とスコアラーとして非凡な能力を見せているが、代表での役割は少し異なる。ディフェンスがより厳しい国際大会では簡単に打たせてもらえない事情もあるが、得点能力の高い選手が揃う代表では、シュートよりもゲームコントロールを重視しているのだ。

強烈なプレスを掛けられてもボールを失うことなく、クロックを使わずにアタッキングエリアまでボールを運ぶ能力は日本代表でよりクローズアップされている。クレバーなプレーで試合を支配し、日本のタレントの特長を引き出す富樫の司令塔ぶりに注目したい。

馬場雄大

馬場雄大 アグレッシブに駆ける日本のエンジン

馬場雄大は2017年2月、今回の対戦相手であるイランとの国際親善試合で代表デビューを飾った後にプロ転向を決意。アルバルク東京の一員となり、リーグ優勝に貢献するとともにBリーグ新人王に輝いた。

日本人離れした身体能力を持ち、力強いボールプッシュで自ら速い展開を作り出し、海外の屈強なビッグマンが相手でも臆することなくアタックする。さらにはチャンスがあれば代名詞となっているダンクを見舞う。「NBAでプレーするという目標にいかに近づくか、東京オリンピックまでには仕上げたい」。大学3年次にそう語った時にはビッグマウスにも聞こえたが、馬場は自分の夢を現実のものとすべく、一歩ずつ、そして急ピッチで成長の階段を上っている。

23歳の馬場のプレーはまさにアグレッシブ。経験豊富な選手たちが慎重になりすぎる時、重い展開をワンプレーで打開する力強さが魅力だ。先輩たちと自分を比較し「まだまだ足りないところばかりです」と謙遜するが、その差はものすごい勢いで詰まっている。渡邊や八村とともに新世代の日本代表を担う中核として、馬場にかかる期待は大きい。

田中大貴

田中大貴 攻守を支える日本最高のオールラウンダー

馬場の持ち味が勢いであるならば、4つ年上の田中大貴は冷静さとバスケIQを武器にするオールラウンダーだ。192cmの大型ガードで、フィジカルが強くフットワークも良い。特にディフェンスではチームNo.1のパフォーマンスを安定して発揮することができる。A東京ではピック&ロールの使い手として、外国籍選手とのコンビネーションで相手の守備を切り崩す。そこまでできる選手は他にもいるが、ここから自分でシュートにも行けるしパスも出せる万能性を誰よりも高いレベルで発揮できるのが彼の持ち味だ。

フリオ・ラマスのバスケットは、どの選手も機を見てドライブで仕掛け、ペイントエリアにアタックする力強さが求められる。それでも、ただ突っ込むだけで通用するほどアジアは甘くない。相手ディフェンスを揺さぶる『起点作り』とフィニッシュ、そしてデイフェンス。試合展開とチームのバランスを考えて多彩なプレーで日本代表に貢献できるプレーヤーだ。

竹内譲次

竹内譲次 戦いの中で刺激を得て若返ったベテラン

竹内譲次は東海大時代から15年近く代表の主力を担う大ベテランだ。『ゴールデンエイジ』世代の彼は先月に34歳となったが、10歳若返ったかのようなプレーを代表で披露している。きっかけは八村塁だ。アメリカ大学バスケのスター選手へと成長する八村と一緒にプレーしたことが大きな刺激となった。「彼の伸び幅を見てバスケットがうまくなりたいとあらためて感じました。彼の練習相手で終わるのではなく、日本のために一緒に戦いたい」と竹内は話す。

屈強なビッグマンとインサイドで渡り合い、リバウンドを押さえる。今の竹内はそれ以上の仕事として、果敢なアタックも見せる。ニック・ファジーカスや八村に相手ディフェンスの意識が集中した隙を見逃さずにゴール下に飛び込み、巧みにパスを引き出してイージーシュートへと繋げる。苦しい時間帯の一本、チームに勢いを与える一本と、ここぞの場面での貢献が光る。

双子の兄弟である竹内公輔も遠征メンバーに加わっている。竹内兄弟は常に日本代表を支える存在であり、それはまだしばらく続きそうだ。

ニック・ファジーカス

ニック・ファジーカス アジア最強のスコアラー

かつてアメリカ大学バスケのスター選手だったニック・ファジーカスが日本にやって来たのは2012年のこと。それからリーグ随一のスコアラーとして活躍し続ける彼は、昨年に日本国籍を取得。すぐさまフリオ・ラマスの招集を受け、AKATSUKI FIVEに加わった。デビュー戦となったオーストラリア戦でチームに歴史的勝利をもたらしたところから、日本代表の快進撃が始まっている。

ファジーカスのプレーは、本人曰く「相手ディフェンスのバランスを崩し、 自分の仕掛けたいマッチアップの時に打ちたいシュートを打っていくだけ」という基本に忠実なもの。だが、それを高いレベルで遂行し続けられるところに強みがある。性格も真面目で、川崎ブレイブサンダースの練習場ではいつもチーム練習後に黙々とシュート練習を続ける姿が見られる。210cmというサイズ以上に、たゆまぬ努力で作り上げたシュートの精度こそが、ファジーカス最大の武器。だからこそ、ペイントエリアのやや外、ただ大きいだけのビッグマンが止められないエリアでのジャンプシュートが絶大な効果を発揮する。スピードがあるタイプではないが、ディフェンスでも手を抜かない犠牲的精神も光る。まさに大黒柱、攻守に計算できる選手の存在は日本代表の大きな強みだ。

辻直人

辻直人 当たり出したら止まらない『日本の切り札』

そのファジーカスと川崎で長らくコンビを組んでいるのが辻直人だ。ドライブにアシストとプレーの幅を広げ、多彩なオフェンス能力を持つ辻だが、代表では3ポイントシュートに特化した役割を担う。ただ、このところ日本代表では不完全燃焼が続いている。2017年夏の東アジア選手権とアジアカップ、ワールドカップ予選最初のWindow1をケガで欠場。2018年2月、ホームのチャイニーズ・タイペイ戦では8本の3ポイントシュートを決める爆発を見せるも、1点差で敗れた。

そこからフリオ・ラマスは、どこからでもドライブで切り崩せるスタイルを追求し、シューターの存在価値は相対的に下がった。日本代表がオーストラリア戦の勝利を機に上向いた後も、辻のプレータイムは伸びていない。ただ、唯一のピュアシューターとしてラマスが辻を評価していることは、ケガをしていても合宿には帯同させ、常にチームの一員として扱っていることからも明らかだ。

「3ポイントシュートでチームに勢いをつけたい。それにこれだけインサイドを攻められるメンバーが揃っているので、アウトサイドが生きてくる」。今のバスケで3ポイントシュートは無視できない要素であり、当たり始めたら止まらない辻の存在は相手にとっては常に脅威だ。チームがピンチに陥った時、展開をガラリと変える働きに期待したい。

比江島慎

比江島慎 高みを目指し突き進む『日本のエース』

最後に挙げるのが比江島慎。長らく『日本のエース』を担ってきた彼は、日本代表が飛躍の時を迎えたのと時を同じくして、オーストラリアリーグに挑戦。結果を出すことができずにシーズン半ばで帰国することになったが、日本では味わうことのできないレベルの高いバスケに日々接した経験がこれから生きてくるはずだ。

もともと攻撃センスは抜群。Bリーグでも独特のリズムでアタックを仕掛け、外国籍選手相手でも決めきるフィニッシュ力を持つ。接戦で勝負を決めるオフェンスを託される『ゴー・トゥ・ガイ』を担うことのできる日本人選手はそう多くないが、比江島はずっとこの役割を任されてきた。ファジーカスが加わり、渡邊と八村が突出した存在感を放ってはいても、比江島はこのチームの勝敗に責任を負う覚悟を持つ『日本のエース』であり続けている。

「自分が活躍しても、最後にチームが勝たなければ何の意味もない」と語る比江島には、今回のイラン戦とカタール戦でもゴー・トゥ・ガイとして、日本に勝利にもたらす働きを期待したい。

フリオ・ラマス

フリオ・ラマス率いる代表が掲げる『日本一丸』

ここまで注目選手を挙げてきたが、フリオ・ラマスはあくまで特定の個人に頼らず、チーム全員で攻守にバランスの取れたバスケットを志向している。アルゼンチン代表でワールドカップもオリンピックも経験したラマスは、Bリーグが始まり全体のレベルが上がってきた流れを巧みにとらえ、代表チームのレベルアップへと繋げた。日本代表のヘッドコーチに就任する前には、サン・ロレンソを率いて母国アルゼンチンリーグで優勝している。『育てる』と『勝つ』を両立させられる指揮官は、相手をリスペクトし「勝つには完璧な試合をしないといけない」と気を引き締める。

AKATSUKI FIVEは2月15日の深夜に日本を発ち、トルコで最終調整を行ってイランに入った。キャプテンの篠山竜青が掲げた『日本一丸』をすべての選手が胸に抱き、日本バスケットボールの未来を切り開く2試合に挑む。