エージェー・エドゥ

ワールドカップではフィリピン代表の主力選手として平均8.2得点、8.6リバウンドを記録

富山グラウジーズは、10月21日にアウェーで行われた川崎ブレイブサンダース戦に58-72と、オフェンスが機能せずに敗れた。昨シーズン、富山は出だしでつまずくと立て直しに悪戦苦闘し、ギリギリでB1残留を果たした。今シーズンはその反省を生かし、開幕から確実に勝ち星を積み重ねていきたいところだったが、開幕6連敗と再び出遅れてしまっている。

さらに昨シーズン途中に加入し、エーススコアラーとしてB1残留の立役者となったマイルズ・ヘソンが3試合目の長崎ヴェルカ戦で負傷。外国籍が1人欠けている中での戦いを余儀なくされる苦しい状況で、奮闘が目立っているのが新戦力であるフィリピン出身のエージェー・エドゥだ。

23歳のエドゥは、今年の春までアメリカNCAA1部のトレド大でプレーしていた。今夏の『FIBAワールドカップ2023』では、フィリピン代表に選出され大会通算5試合で平均29.5分出場、8.2得点、8.6リバウンドを記録。国際舞台での確かな実績があるとはいえ、リーグの発展と共に右肩上がりでレベルが上がっているBリーグの外国籍ビッグマン相手に、プロ1年目のルーキーが渡り合うのは簡単なことではない。しかし彼はここまで6試合で平均12.8得点、9.3リバウンドと上々の数字を残している。208cmのサイズと機動力を生かした鋭いインサイドアタックに加え、22日の試合では3ポイントシュートを2本決めるなど非凡な外角シュート力も備えている。

特にヘソン離脱後はビッグマンの駒不足もあって、エドゥーは3試合連続で32分以上の出場とフル稼働中だ。富山の高岡大輔ヘッドコーチは、次のように即戦力ルーキーについて語る。

「(ワールドカップ出場によって)チームへの合流は最後でしたけど、自分のやろうとしているバスケットにはまってくれています。特にディフェンスリバウンドではかなり助けてもらっていますし、3ポイントシュートも確率よく決めてくれています。大学時代やフィリピン代表でのプレーを見ると、ディフェンスやスクリーンを頑張るタイプでしたが、機転が効く選手でオフェンスのバリエーションも増えてきてすごく頼りになります」

エージェー・エドゥ

「ワールドカップの時より、僕がいろいろなことをできるところを見せられると思います」

高岡ヘッドコーチがこのように語るように、フィリピン代表でのエドゥは、ゴール下の守備と味方の得点チャンスをお膳立てするロールプレイヤーだった。その理由をエドゥは「フィリピン代表にはジョーダン・クラークソンを筆頭にたくさんのタレントがいました。だからリバウンドを取る、スクリーンをかけるといったハードワークの部分により集中していました」と振り返る。

そして富山では、積極的にシュートを打つなどより得点にからんでいきたいと語る。「(富山での)自分の役割はより大きくなっています。これは自分にとって望んでいたものです。そうすることで、自分を成長させることができます。ワールドカップの時より、僕がいろいろなことをできることを見せられると思います」

Bリーグは世界でも極めて稀な、週末の連戦を基本とするなど過酷なスケジュールとなっている。その中で、経験豊富で屈強なビッグマン相手に、慣れない異国でプロ生活のスタートをきったルーキーが2試合続けて30分以上に渡ってコートに立つのは心身ともにタフだ。

だが、エドゥは「多くの時間プレーしていますが、これは自分にとって良いことです」と歓迎している。それは、試合こそが自身を成長できる最高の舞台と考えているからだ。「試合にずっと出ることこそ、僕がBリーグでの1年目で求めているものです。そうすることで、Bリーグにアジャストするためにたくさん学ぶことができます。だから今は完璧な環境であり、この状況を継続していきたいです」

また、Bリーグにはアジア枠で多くのフィリピン出身の選手たちがプレーしている。彼らの助言は、Bリーグ挑戦への不安を大きく取り除いてくれたと明かす。「ワールドカップ前の準備期間中、ドワイト・ラモス、キーファーとサーディのラベナ兄弟、レイ・パークスジュニアにBリーグについていろいろと質問しました。彼らは全員、Bリーグ、日本のことが大好きで、すべてがポシティブだと教えてくれました。僕はまだ数ヵ月しか日本に滞在していないですが、彼らの言う通り、日本での暮らしはポジティブなことばかりで、本当に楽しんでいます」

エージェー・エドゥ

ルーキーながら備わっている強い覚悟「リーダーとなり、自分の全力を尽くしてチームに貢献していきたいです」

今のエドゥは、「僕はルーキーで、先ほども言いましたがいろいろと学ぶことがあります」と語るように、初めてのBリーグ、としてプロ生活でアジャストしなければいけないことがある。だが、同時に多くのプレー機会を与えられていることは、多くの責任を担うことでもあると強い覚悟を持ってコートに立っている。「僕は今、自分が望んだ状況にいます。だからこそ、チームを引っ張らないといけない立場でもあります。リーダーとなり、自分の全力を尽くしてチームに貢献していきたいです」

高岡ヘッドコーチは「これから一番、やっていきたいのはトランジションでの日本人選手のレイアップを増やすことです」と立て直しの鍵について語る。そのためには、エドゥがディフェンスリバウンドをしっかり取り切り、攻守の素早い切り替えを支えることが重要だ。

ワールドカップで結果を残したが、プロ1年目であることもあって開幕前のエドゥには未知数な部分もあった。しかし、シーズン全体の10分の1を終えただけとはいえ、今シーズンの富山において、早くも彼はチームの不沈に大きな影響を与える実力を持っていることを証明している。