文・写真=鈴木栄一

優勝の要因は「ネクストレベルのディフェンスができた」

今年のオールジャパンを圧倒的な強さで制した千葉ジェッツ。創設6年目にしてチーム初のタイトルは、プロクラブとして初のオールジャパン制覇という偉業となった。

川崎ブレイブサンダースとの決勝戦、千葉の勝利に大きく貢献したのがマイケル・パーカーだ。守備の要であるヒルトン・アームストロングがファウルトラブルによって出場機会が制限された穴を見事に埋め、19得点7リバウンド5スティールと攻守に大きなインパクトを与えた。

今季から千葉に加入したパーカーだが、これまでbjリーグのライジング福岡(現・ライジングゼファーフクオカ)、島根スサノオマジック、NBLの和歌山トライアンズ、トヨタ自動車アルバルク(現・アルバルク東京)でプレー。常にプレーオフに出場する成績上位チームに在籍してきた彼だが、いつも頂点には届かず。彼にとっては、千葉の歴史より長い、日本でのプレー10シーズン目にして悲願の初タイトルとなった。

「気分は最高だ。多くのハードワークがあり、いろいろな困難を乗り越えて勝ち取ったもので、言葉では表現できないくらいうれしいよ」とパーカーは優勝の喜びを語る。

「いつも王座を狙えるチームにはいたけど、アンラッキーなこともあった。すべてがうまくいかないとチャンピオンにはなれない。10シーズン目での初のタイトルは、自分にとって大きいものだ。僕たちのメンバーを見れば多くのタレントがおり、どんな相手にも勝つことができると思った。チームとしてまとめるのに最初は時間がかかったけど、途中から連勝街道が始まった。連勝が止まった後も立て直す方法は分かっていた。今はみんな互いの動きを理解してチームとしてプレーできている」と続ける。

今大会の千葉は、すべての試合で第3クォーターまでに大差をつける盤石の内容。特に守備の出来が大きかったとパーカーは振り返る。「チームは勢いに乗っていた。それもディフェンスがよかったからだ。日本で長い間プレーしているけど、勝つには何よりも守備が重要だ。シーズン序盤に比べるとチームディフェンスが強力になったね。特にヘルプディフェンスで、互いにどう動くべきなのかを理解できるようになった。ネクストレベルのディフェンスができたよ」

「この10年、より賢くなりハードにプレーするようになった」

パーカーが最初に日本に来たのは2008年1月のこと。当時は20代中盤の若手だったが、今は35歳のベテランとなった。bjリーグ時代のパーカーは、1試合40分近く出場し、2008-09シーズンから4年連続で得点王に輝くなどチームの絶対的なエースだった。

「エーススコアラーの時は多くのシュートを放ち、大事な場面でシュートを打つのが役割だった。今はそういうわけでもないけど、今回は最も大事な決勝で多くの得点を挙げられた。ただ、もう自分のスタッツについて気にすることはないよ」

「この10年、チームプレーヤーとして成長し、チームを勝利に導くためにどうするべきかを学んでいった。より賢くなり、ハードにプレーするようになった。個人ではなく、チームのために何をするべきか集中しているんだ」

パーカーにとってこの10年間は、個人スタッツを残すだけでなく、チームを勝利に導ける選手として成長を続けてきた道のりでもあった。

千葉はシーズン再開後、今回のオールジャパンで撃破した栃木、三河との対戦がいきなり続く。相手は雪辱を果たそうと、闘志満々で臨んでくることは間違いない。ただ、パーカーは「多くのゲームがあり、最初は予想していなかったようなことがいろいろと起こるもの」と、これも長いシーズンにおける醍醐味と考えている。

また、Bリーグになった今、bjリーグやNBL時代と比較して、リーグ上位と下位チームが実力差は縮まっていると強調。「これまでとの大きな違いはリーグ下位のチームも全く油断できないこと。簡単なゲームは一つもないんだ」と、後半戦に向けて気を引き締める。

パーカーの自信「僕のキャリアは『完璧な状況』にある」

祝勝会の時のスピーチで、「(常勝チームの)トヨタから千葉に移籍することをクレイジーと言われた。だけどその選択は正しかった!」と語ったパーカー。実際、その選択が正しかったことは、すでにシーズン半ばにして証明された。

「千葉のファンは最高だ。本当に情熱的にサポートしてくれる。タイトルを取ったことで、これからさらに熱くサポートしてくれるだろう。それに地元コミュニティー、スポンサーもチームをとても愛してくれる。そして今回タイトルを取った。今、僕のキャリアは『完璧な状況』にあると言っていい」

日本、10シーズン目で今もっとも充実の時を迎えているパーカー。「初タイトルを取ったけど、もっと取っていきたい」とBリーグ王者との『二冠』を目指し、後半戦もチームを勝利に導くプレーを続けていく。