今大会で勝者のメンタリティを身に着ければ『カナダの時代』に?
NBAのスーパースターを擁するカナダは、ジャマール・マレーの欠場が決まってもなお優勝を現実的な目標とする戦力を誇りますが、その一方で多くのNBAプレーヤーを擁することは、大会1カ月前に始動した『寄せ集めのチーム』であることも意味し、実際に東京オリンピックでは世界最終予選で敗れて出場権を得られませんでした。そんな負の歴史を豪華メンバーで塗り替えることができるのか、今回はその真価が問われます。
オールNBAファーストチームに選ばれたシェイ・ギルシャス・アレクサンダーは、緩急織り交ぜたドライブと高確率のジャンプシュートを武器にした今大会No.1のスコアラーで、ルーゲンツ・ドートはスピードとフィジカルの強さを持ち合わせ、相手に何もさせない圧力を持つ今大会No.1のディフェンダーです。サンダーのチームメートである2人はカナダ代表でも攻守に強力なコンビとしてチームを牽引します。
ウイングには攻守両面で1on1の強さを持つRJ・バレット、粘りつくような嫌がらせのディフェンスが持ち味のディロン・ブルックスがいて、インサイドには3ポイントシュートの上手いケリー・オリニクや、スクリーナーとしてチームメートを助けるハードワーカーのドワイト・パルエルといったベテラン陣が揃います。
層の厚さではアメリカに劣るものの、それぞれが得意分野で抜群の能力を発揮するのがカナダの特徴で、このチームが噛み合えば恐ろしい力を発揮しそうですが、選手同士が互いのプレーを理解しきれておらず、ボールウォッチャーになる傾向があります。
ドライブとジャンプシュートが上手いアレクサンダーにはペイント内にスペースを必要とし、相手のエースにまとわりつくブルックスのマンマークには周囲のカバーリングが欠かせなかったりと、個人能力を生かすために必要なチームとしての戦い方を整備することが重要です。
短い準備期間で仕上げるのは難しいだけに、大会が進む中で連携を構築していけるかどうかが、カナダが勝ち進むための条件になってきます。1次リーグではフランス、ラトビア、レバノンと気の抜けないグループになりましたが、特に初戦のフランス戦は得意のドライブアタックが使いにくく、3ポイントシュートがキーになるだけに、チーム力が問われます。この難敵を倒せるところまで戦術が噛み合わせておきたいところです。
高い個人能力がチームとして表現できるかどうか、特殊な武器を持つ選手たちが噛み合うのかどうか、消化不良になる可能性もあれば、魅力的な連動性を発揮するかもしれないカナダは注目しがいのあるチームです。若い選手も多く、今大会で勝者のメンタリティを身に着ければ、カナダの時代がやって来るかもしれません。それくらい大きなポテンシャルを秘めたチームです。