福岡第一

文=鈴木健一郎 写真=日本バスケットボール協会、バスケット・カウント編集部

徹底したディフェンスで『逆転の飛龍』を封じる

ウインターカップの男子3回戦、福岡第一と飛龍の一戦は、予想外の一方的な展開となり福岡第一が完勝を収めた。

早い展開で攻める福岡第一は河村勇輝、松崎裕樹と得点を重ね、また守備でもクベマジョセフ・スティーブがゴール下をがっちりと抑えて第1クォーターで23-10とリード。井手口孝監督は「僕たちのマンツーマンディフェンスでは相手の良い所を抑えていこう、相手がやりたいシュートをさせないようにしようというのが基本なのでそれはバッチリ」と堅守を称える。

「スタッフがスカウティングをして、選手がその通りにディフェンスしてくれた。昨日も今日も失点を60以下にするのが目標なので、良い感じで守れていると思います。40分間ディフェンスを集中してやりきる。体力なのか精神面なのかは分かりませんが、両方しっかりできました」

44-25と大差を付けて始まった後半も、福岡第一は攻守に手を緩めない。「飛龍が後半に逆転するチームということもあって、先生から30点差まで気を緩めるなと指示が出ていました」と明かすのは松崎だ。「19点差で折り返したんですが、そこで気を緩めることなく逆に点差をつけられたのはすごく良かったです」

結局、第4クォーター途中で74-44と30点差を付けたところで主力を下げ、ベンチメンバーへと切り替えた。福岡第一が盛り上がったのはここから。普段はなかなかプレータイムをもらえない選手たちが主力メンバー以上にハッスルし、さらに飛龍を突き放す。シュートが決まるたびにスタンドの応援席もベンチも大盛り上がり。最終スコア93-56で福岡第一が勝利した。

福岡第一

30点差を付けて控えをコートに、チームが一丸に

終盤に控え選手が素晴らしい活躍を見せたことで、チームの勢いは最高潮に。準々決勝に向けて非常に良い勝ち方ができた。今のチームで先発に3年生は松崎と古橋正義の2人だけ。松崎には最後の大会に臨む3年生の仲間をプレーさせたいという思いが強かった。

「ベンチの3年生はあまり出る機会がないので、自分たちがしっかり点差を付けていつもサポートに回ってくれている3年生に良い思いをさせてあげたい。そういった中で自分たちがチャンスを作れたのもありますし、3年生が期待に応えてくれてしっかりシュートも決めてくれたので、自分もうれしかったですしチーム自体にもうれしいことだったと思います」

2年前の2冠に松崎は1年生ながら先発スコアラーとして活躍して貢献した。1年から主力として活躍してはいるが、昨年は悔しい思いも味わっており、思い上がるところはない。「去年負けているので、去年の先輩の分まで、という思いがあります。自分が1年の時には先輩に日本一を取らせてもらいました。次は自分が、今の後輩たちや出ていない3年生を日本一に導く、しっかり引っ張って行きたいです」

福岡第一

「集中できることがベースアップに繋がっている」

話題が2年前のチームとの比較に及ぶと「強いかどうかは分からないですが……」と言葉を途切れさせた松崎だが、「全体的に今の方が点数は取れていると思います。バランス良く点数を取れているという意味では今のほうが上かと少しは思います」とチームの出来に手応えを得ている。

井手口監督は「下級生も多いし、どうですかね」とは言うものの「逆に伸びしろはあります」とここに来てのチームの成長に期待する。「高校生って練習できそうでできないんですよ。授業があったり期末テストがあったり。我々も先生だから、プロみたいには練習できない。逆にこういうところに来るとバスケットだけができます。朝から晩まで一緒にいて、その中で気付いたことを話せます。集中できることがベースアップに繋がっていると思います」

2年の河村勇輝が司令塔であり切り込み隊長の役割を担う、下級生が目立つチームではあるが、ここから先を勝ち抜く上で大事なのは3年生の働きだと井手口監督は見ている。「3年生の2人がこのまま最後までしっかりとできるかどうか。古橋はディフェンスで、松崎は点を取ることでリーダーシップを取ってくれれば」

監督もエースも手応えは十分に感じている。ベスト8が出揃った今の時点で優勝に一番近いチームと見ていいいだろう。ただ、「まだまだ3試合ありますから」と井手口監督はこちらの質問を制す。「(東海大学附属)諏訪とは初めてやります。福岡出身の(黒川)虎徹君もいますし、今からしっかり準備して明日頑張ります」

明日からはメインコート。福岡第一と東海大学附属諏訪は15時試合開始となる。