多彩なシュートを高確率で決め、得点ランキング首位を快走
Bリーグのシーズン前半戦、最もインパクトを残した選手を一人挙げるとしたら、満場一致で川崎ブレイブサンダースのニック・ファジーカスではないだろうか。2012-13シーズンの加入から川崎一筋のファジーカスは、加入1年目からリーグ随一のスコアラーとして大暴れし、チームに数々の栄光をもたらしている。
その中でも、在籍5年目となる今シーズンのパフォーマンスは突出している。29試合終了時点で1試合平均28.4得点は得点ランキングでダントツのトップ、2位に約7点の差をつけている。特筆すべきはシュート成功率が約60%もあること。それもゴール下だけに限らず、3ポイントシュートなどアウトサイドからもシュートを打ちながら高確率をマークしているのだ。
例年以上に高いクオリティをキープしているファジーカスだが、その要因としてオフシーズンに精力的にトレーニングを行った成果を挙げる。「長いシーズンへの備えとして、フィジカルの強化に取り組んだ。身体を絞り、脚力など下半身をしっかり鍛えたんだ。今はこの調子を維持していきたい」
「プレースタイルはこれまでと特に変わっていない。相手ディフェンスのバランスを崩し、 自分の仕掛けたいマッチアップの時に打ちたいシュートを打っていくだけ」と語りながらも、新戦力であるライアン・スパングラーを始めとするチームメートの助けを強調する。「ライアンがいることで、ディフェンスのヘルプが自分に来るのが難しくなる。自分にディフェンスを寄せてしまうと、ライアンがダンクを決めたりするからね」
大学1年の時、全米大学選手権でスイート16に進出
これまでのキャリアを振り返ってもらうと、「バスケットボールは5歳から始めた」と言うが、バスケに専念したのは高校生になってからだと言う。「他にも野球、アメリカンフットボール、テニス、ゴルフ、サッカーといろいろやっていて、どの競技でもベストプレーヤーになりたいと思っていた」
今でもゴルフは現役だ。「オフシーズンになるとやっているよ。ゴルフをやらない人にはあまり分かってもらえないんだけど、18ホールを回るとなると4時間から5時間かかるので、かなり疲れるんだ。レギュラーシーズン中は時間がなくてラウンドできないので、ベストスコアは77。ドライバーはよく飛ばすと思う。おかげでその後は楽になるよ(笑)」
その後、彼はネバダ大リノ校に進学し、1年生の時から主力として活躍。「大学での印象に残っている思い出は1年の時、全米大学選手権でスイート16(ベスト16)に進出したこと。そして、カンザス大を相手の本拠地で撃破した試合だ。これは9チームしか達成していない記録なんだ」と、ファジーカスは誇らしげに振り返る。
それもそのはず、カンザス大は全米屈指の名門チーム。現在が就任13シーズン目となるビル・セルフの下でホームゲームでは9敗を喫したのみ(2016年終了時点)。その一つが2005年12月1日のネバダ大リノ校との試合で、ファジーカスは35得点の大暴れで72-70の勝利の立役者となった。また、ネバダ大リノ校がここ30年間でNCAAにトーナメントに出場したのは4度のみ。それはファジーカスが在学していた4年間と重なっている。
このように大学で成功を収めた後のファジーカスは、欧州やNBAの下部組織であるデベロップメントリーグ、フィリピンなどでのプレーを経て、東芝ブレイブサンダース(現・川崎)に加入。そして前述のように1年目から圧倒的なパフォーマンスを見せて現在に至るのだが、本人は「もっと前からプレーしたかった」と言うぐらい日本をとても気に入っている。
日本でプレーするようになったきっかけは、友人のチャールズ・オバノン(2000年代に長らくトヨタ自動車で活躍した選手)のアドバイスだった。「日本については何も知らなかったけど、2012年の夏に一緒にゴルフをやっていた時、日本がいかに素晴らしいかを彼が教えてくれたんだ。実際、彼の言うとおりだった。もしもやり直せるなら、ヨーロッパに行かずもっと早い段階から日本でプレーしたかったね。リーグが好きだし、日本そのものをとても気に入っているよ」
「ヨーロッパはとてもディフェンスマインドが強くて、1試合50点から60点のロースコアを志向するチームが多い。アジアは日本を始め、中国、フィリピンなど自分の知っているところではよりオフェンス能力の高いスキルプレーヤーを評価してくれる。ヨーロッパは戦術、セットオフェンスが重視でテンポが遅く、多くのシュートを打たない試合が多かったんだ」