カイリー・アービング

トラブルメーカーの面は影を潜め、オフェンスを引っ張る大活躍

カイリー・アービングの扱いは非常に難しい。NBAを自分の信念を発信できるプラットフォームとして活用するのは良いが、その信念が時にエキセントリックな方向に向かい、しばしば彼をバスケから遠ざけた。例えば彼は「バスケの試合に科学を持ち込まない」と言って新型コロナウイルスのワクチン接種を拒み、2021-22シーズンはホームでの試合の多くに出場できなかった。

そんなカイリーに対し、ネッツは今シーズン開幕前の時点で契約延長をオファーしなかった。プレーヤーオプションである契約最終年を破棄して移籍してもいい、トラブルばかり起こす問題児が出ていっても構わない、という意思決定だ。

普通の選手にとってはショックな出来事だろうが、カイリーは飄々とこれを受け入れ、フリーエージェントになり移籍するのではなく、契約最終年を破棄せずにネッツに留まった。

彼の扱いが難しいのは、トラブルばかり起こす問題児でありながらも、ひとたびバスケに意識を集中させれば他の誰にもできないパフォーマンスを見せることだ。

状況が好転したきっかけは、彼が起こしたトラブルの中でも最も深刻と言うべき、反ユダヤ主義への傾倒を疑われたことだった。釈明のために設けられた会見で、反ユダヤ主義の考えを持っているかと質問されても答えをはぐらかすカイリーの態度にネッツのオーナー、ジョー・ツァイは激怒したと言われている。カイリーには出場停止処分が科され、当初は5試合の予定だった出場停止が8試合にまで伸びたところでカイリーは「ヘイトスピーチや反ユダヤ主義、人類に対して反感をもたらすすべてのものを僕は支持していない」との声明を発表するとともに一連の言動を謝罪し、ようやく出場停止が解けた。

ここから現在に至るまで、カイリーはバスケに集中して高いパフォーマンスを継続している。ここまで27.2得点、5.1リバウンド、5.2アシストを記録。今は5試合連続で30得点超えで、ケビン・デュラント欠場の穴を埋める活躍ぶり。今のネッツはディフェンスを軸としたチームプレーが噛み合っているが、こと得点面ではカイリーに引っ張られる部分が非常に大きい。

問題児の部分が影を潜め、とびきり優れたバスケットボール選手の面を発揮している今、カイリーへの評価も変わりつつある。カイリーの代理人は『Bleacher Report』に対し、カイリーはネッツでのプレーを続けることを望んでおり、ネッツと契約延長についての協議を行っていると明かした。

カイリーは最大で4年1億9000万ドル(約250億円)の契約を結ぶことができる。これは東京オリンピック開催中の2021年夏にデュラントが結んだ契約延長と同じ規模だが、カイリーの場合はこれまでのトラブルの歴史があるため、金額はマックスかそれに近い額でも期間は2年ないしは3年に落ち着きそうだ。

ネッツとしては、カイリーのトラブル再発リスクを抑えるとともに、貴重な戦力である彼を残留させることができる。カイリーと強い絆で結ばれているデュラントが昨夏に続きトレードを要求するリスクも避けられる。今のカイリーの絶好調のパフォーマンスを見る限り、ネッツとしては早々に『有利な条件で』契約延長をまとめたいところだろう。