「良いチームはベンチメンバーの活躍が大きな力になっているものだ」
ジャ・モラントは2019年のNBAドラフトで1巡目2位指名を受けてグリズリーズに加入した。この年は全体1位にペリカンズのザイオン・ウイリアムソンがいた『当たり年』だったが、ケガでプレーできないザイオンをモラントは評価で追い抜き、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。グリズリーズは極めて自然に、マーク・ガソルやマイク・コンリーのチームから世代交代を果たした。
そのモラントは年々パフォーマンスを上げ、グリズリーズをプレーオフに導いている。今シーズンここまで36試合に出場して27.5得点、7.9アシストはチームトップの数字。スタッツだけでなく、NBAでもトップクラスの運動能力の高さをフル活用してハイライトプレーを連発。4年目にして『チームの顔』となっている。
それでも、グリズリーズはモラントだけのチームではない。他ならぬ彼自身に若手をサポートしたいという思いが強く、『USA TODAY』の取材に対して「僕はこのチームのリーダーだから、どの選手にも自信を持たせたい」と語る。
NBAキャリア4年目の23歳だが、平均年齢24.3歳のグリズリーズで彼はリーダーとしてチームを勝たせる責任を負い、自分で良いプレーをするだけでなく、チーム自体の成長にも責任を持とうとしている。
「若い選手は調子の波が大きく、何をやっても上手くいく時もあれば、その逆の時もある。でも、大事なのはそれでバスケへの取り組み方やプレーを変えないことなんだ。僕はそれをこのチームの若手に伝えたい」
35歳のダニー・グリーン、29歳のスティーブン・アダムズとベテランはいるが、あとは26歳のディロン・ブルックスとブランドン・クラーク以下、モラントの世代が中心となるグリズリーズでは、1巡目19位指名のジェイク・ララビアからドラフト外で2ウェイ契約のケネス・ロフトンJr.まで5人のルーキーがいる。
昨シーズンに56勝を挙げてカンファレンスセミファイナルまで行き、今シーズンはさらに上を目指すチームは、普通なら若手を育てる余裕がないはずだが、グリズリーズは多くのルーキーをベンチに入れ、実際にチャンスを与えて経験を積ませている。その中で最も長い平均18.6分のプレータイムを得ているのが1巡目23位指名のルーキー、デイビット・ロディーだ。同じシューティングガードのデズモンド・ベインがつま先のケガで1カ月以上休んでいたこともあったが、ロディーはチャンスを与えられると臆することなく自分の能力を発揮して良いインパクトを残した。
ロディ―は「ウチのバスケはとても自由だ。オフェンスでは自分の力を発揮する機会を見つけたら思い切って行け、とアドバイスされる。経験豊富な選手たちが自信を与えてくれるんだ」と言い、そしてモラントについて「一緒にいて楽しい人だ。いつも僕たちを受け入れて、成長を助けてくれる。僕もできる限り彼の助けになりたいと思うよ」と語る。
そのモラントは現地1月17日、グリズリーズ傘下のGリーグチーム、メンフィス・ハッスルの試合会場を訪れた。グリズリーズの若手の中でもプレータイムの短いララビアやロフトンJr.はハッスルでもプレーしている。シーズン中の貴重な休養日を、彼はデズモンド・ベインとともに若手の応援に費やしたのだ。
モラントはもはやNBAのトップスターの一人だ。それでもスター選手にありがちなエゴは皆無で、チームを最優先に考え、若手の成長を熱心に手助けして、その試みが上手くいっていることに大きな満足を得ている。彼は言う。「良いチームはベンチメンバーの活躍が大きな力になっているものだ。僕が来た時からそうだけど、今は若い選手がより大きな役割を担うようになっていて素晴らしいよ」