WCプレビューvol.02福岡第一(福岡)井手口孝「選手は変われどスタイルは不変」

2018/11/29
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福岡第一

取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

12月23日に開幕するウインターカップ。高校の日本一を決めるこの大会で優勝候補の一角と見なされるのが福岡第一だ。2年前にインターハイとウインターカップの2冠を達成した福岡第一は、その後も留学生選手の強烈なインサイド、電光石火のトランジションというスタイルを崩すことなく力を保っている。今年のインターハイでは初戦敗退を喫したが、それは主力選手が日本代表で不在だった影響が大きい。同じ境遇にあったライバル福岡大学附属大濠を県予選決勝で撃破して自信を付けるとともに、「彼らのためにも負けられない」という気持ちも背負う。「優勝できそうな力がある」と自信を語る井手口孝監督に、大会への意気込みを聞いた。

WCプレビューvol.01福岡第一(福岡)井手口孝「優勝できそうな力はある」

「全国の舞台で戦うだけで十分強化ができる」

──大きく注目された福岡大学附属大濠との『福岡決戦』に勝ち、ウインターカップ出場を決めました。今年度はインターハイで両チームとも主力をU18日本代表に取られて早期敗退し、ウインターカップに福岡県から1校しか出れなくなりました。チーム作りも難しかったと思います。

代表の活動がなかったらインターハイでも上位に行けたのかな、とは思います。代表に招集された選手がインターハイに出場できない。そうなるとチーム作りはうまく行かないです。日本を強くするという大前提があるし、私自身もやっていたのもありますが、将来日の丸をつける選手は1年間に1人いるかいないか。今回のような場合は、インターハイに出る選手はインターハイで強化すればよかろうが、という思いはあります。

先日の福岡県の決勝が全国大会の決勝だとしたら、そこに日の丸をつける選手が5人、候補も含めるともっといるわけです。その選手たちは全国の舞台で戦うだけで十分強化ができると思います。早生まれの大学生の選手、インターハイに出れなかった学校から良い選手を集めてアジアに行くことができるだけの選手が日本にはいます。そういう考え方ができなかったのかな、とは思います。

選手は日本代表に招集されたら行きたがりますよ。それを私が断るわけにはいきません。日の丸をつけたい、でも自分のチームもある。そこで子供たちが悩み苦しまなくていい道筋は大人が決めてあげないと。これが大学生やプロになれば自分の判断で代表を辞退できるのかもしれません。でも高校生は、代表合宿が入ったら公式戦には出場できない。それが正しいのかどうか。

──大濠に勝った直後、「こんなに辛い試合はない」という言葉がありました。ただ、今回のような問題が早期解決するようには思えません。

一番は、国際大会をより多く日本で開催するように努力することです。そうなれば日本が日程を決められます。海外は「日本国内の大会の日程を変えればいいじゃないか」と言いますよ。ウインターカップは変えられます。だけど、残念ながらインターハイは変えられない。行政が入って何年も前からその県がそのスケジュールで準備しているから変えられません。そこに本当の意味でのガバナンスの問題、システムのもどかしさがあります。

福岡第一

「私は大学からプロはあまり勧めないんです」

──バスケットボール界を取り巻く環境の変化についても教えてください。Bリーグができて3年目、福岡第一でバスケをやる生徒のほぼ全員がプロ志望だと思います。卒業後の進路も見据えて、高校生のうちにこんな指導をしておこう、と考えることはありますか?

今は大学も全入の時代ですから、「すぐに社会人だ」という意識はあまりありません。でも、できる限り大学に行きなさい、とは言っています。

どの高校でも先生はバスケだけでなく学校生活の面も厳しく指導して送り出します。大学の先生もほとんどそうです。もちろん、大学生になれば子供じゃないので、選手へのアプローチも違ってくるので、大学では教育者が指導をするところもあればバスケットだけのコーチがいるところもあります。どちらにしても、その人が教育的な見地を持っていれば大丈夫です。

ただ、プロは違うんじゃないかと思っています。以前はみんな会社の社員で、新入社員教育がありました。午前中は会社の仕事があって、掃除をして挨拶をして電話の取り次ぎをして外部の人と会話して。そういうのがあってバスケットの練習がありました。ですが今はプロになって、20歳そこそこの若者に「あなた方はプロだからプロとして振る舞いなさい」と言っても、いろんなことは起こります。社会人としてはまだ丁稚奉公で雑巾がけをしているヨチヨチ歩きの1年生なのに、世に出てチヤホヤされる。本来、そこでしっかり教育のできる人がBリーグのチームでもコーチをしないといけないし、フロントもそこに目を向けてほしいです。

プロ野球は長い歴史があり、そういうものがちゃんと整備されています。私はプライベートでソフトバンクホークスの方々と食事をさせてもらう機会があるのですが、皆さん立派ですよ。我々教員はTシャツや短パン、草履といった格好で食事に来る者もいます。「学校の先生ってあんな格好で来るの?」と言われて恥ずかしい思いをしたことがあります。ちゃんとした球団の人たちにはそういう教育がなされている。Bリーグはそこから選手を指導してもらうしかないです。

──進路について相談されることも多いと思います。

プロ野球のようにプロとして成り立っているのであれば、経済力とか選手の躾も含む社会性も含めてプロに行けばいいと思います。しかし、失礼ながら今のBリーグにそういうチームがいくつあるのか。むしろ実業団チームのほうがそういう面ではしっかりしています。生涯賃金も上でしょう。だから、私は大学からプロはあまり勧めないんです。実業団が少なくなってきたことは少し残念です。だからこそ本当にプロがプロとして成り立ってほしいんだけど、安い賃金でプレーしてプロだという人もいれば、この選手がこんなにお金をもらえるのか、という逆のケースもあって、そこはまだ成熟していないのかなと思っています。

福岡第一

「福岡第一のスタイルにどれだけ熟練できるか」

──Bリーグができて日本のバスケットボールのレベルの変化は感じますか? それなりには向上していると思いますが、さらに上げていくには何が必要でしょうか。

例えば我が福岡のチームでもいまだに体育館一つも持っていない現状は変わっていません。それじゃあ女子のWリーグと比べて勝負にはならないですよ。良い選手を組み合わせて工夫すると言っても限界があります。お金があればできることですが、ソフトバンクは3軍も練習場を持ってやっています。

日本協会もそういうところに投資して、いくつかのチームの環境を整えても良いんじゃないかな。福岡県に協会管理の体育館が一つ、観客席がなくてもいいし、コートは1面でもいい。ライジングが使わない時はスクールで使うとか、場合によっては地域にも還元します、とか。練習会場を持っていないチームには作ってあげる、みたいなことが必要だと思います。

──最後にウインターカップへと話題を戻します。今大会の福岡第一はどんなチームですか?

ディフェンスに磨きをかけたチームです。今はオールコートのディフェンスにも取り組んでいるので、オールコートもハーフコートも、ディフェンスからやります。2年前に優勝したチームから選手は変わりましたが、やっているバスケットはあまり変わっていません。少し3ポイントシュートが増えるぐらいかな。福岡第一のスタイルを変えるのではなく、それにどれだけ熟練して精度を上げられるかを考えてあと1カ月やっていきます。

──チームの目標と、それを達成するためのポイントを教えてください。

目指すは優勝です。それができる力はあると思っています。こういう大会では、ゾーンが来たからこう攻めるとか、こういうシューターがいるからこう守る、という相手チームのそれぞれの特徴に対応することが求められますが、それよりも自分たちの土俵で試合をするところに持っていきたいです。