放出したマレーの対価で得た指名権で、期待の若手3名を獲得
多くの指名権と引き換えにデジャンテ・マレーのトレードに踏み切ったスパーズは、完全に再建へと踏み込むことになりました。ドラフト9位でジェレミー・ソーハンを指名しましたが、即戦力というよりは素材型の選手のため、時間をかけてチームを作っていくことを前提にしており、かつての常勝チームを知るファンにとってはフラストレーションが溜まるシーズンになるかもしれません。
あふれんばかりのポテンシャルを持つソーハンは、ハーフコートオフェンスでも絶えず動き回る運動量に、ガードからセンターまで守れるディフェンス力があります。そしてウイングながら、広い視野でパスを出すこともできるオールラウンドな能力が魅力ですが、フィニッシュの精度に難があり、(頻繁に変わる髪の色と同様に)素晴らしいプレーが長続きするわけではありません。身体能力もスキルもある期待の若手を、戦術理解力を重視しているスパーズがどのような育て方をするのか楽しみです。
近年のスパーズはシュート能力を重視して選手を集めてきたためソーハンの指名は意外なものでしたが、3つあった1巡目指名権のうち、ソーハン以外の2つには得点力の評価が高かったマラカイ・ブランナムとブレイク・ウェスリーに使ってきました。スピードとシュートを中心とした考え方は継続していますが、得点とアシストでチームトップ、リバウンドで2位だったマレーがいなくなっても機能するのかどうかが試されます。
73歳のグレッグ・ポポビッチが、50も年の離れた若者たちをどのように導いていくのかは興味深いものがあります。ヘッドコーチとして引退することも噂されていましたが、ゼロベースに近いチーム作りの中で、新たなアイデアをどのように取り込むのか、またどんな選手を中核に据えるのか、NBAの歴史を作り上げてきた名将のチャレンジにも注目したいところです。
新シーズンは脆く、不安定で、勝てない時を過ごすことになりますが、全てがリセットされたような状態だからこそ、新しい戦術やスターが生まれるドキドキ感もあります。まずは誰がエースとして中心選手の座に収まるのか、若手が多いからこそチーム内での激しい競争から開幕します。