デイミアン・リラード

「成功を収めた選手の経験には一定の法則がある」

デイミアン・リラードはコーチ業に熱を上げている。とはいえ、まだまだ先の現役引退後を意識しているわけではない。『フォーミュラ・ゼロ』と名付けたバスケットボールキャンプを立ち上げ、10代の選手たちに自分の経験や学びを伝えることに、熱意をもって取り組んでいるのだ。

今年の『フォーミュラ・ゼロ』の開始にあたってリラードは会見を開き、こう語っている。「僕が人生を通して多くの人から教えてもらってきたことには、一定の法則がある。だから『フォーミュラ』(数学の公式)という名をキャンプに付けたんだ。それを若い世代に伝えたい」

『ゼロ』は? それはゼロからのスタートという意味もあるし、リラードの背番号でもある。

リラードはNBAのトップスター選手であり、ポートランドでは『超』が付く知名度を持つ。その人気を使ってキャンプを立ち上げてはいるが、それでいて彼は『すべてを備えた存在』と見られるのを嫌う。生まれ持った才能のおかげではなく、これまでの人生で良い学びを得られたからこそ今の立場にあり、それは誰にでも真似できる、というのがリラードの主張だ。

「何年か前のワークアウトで、集まった選手たちが自分のこれまでの経験を話す機会があった。その時に、成功を収めた選手の経験には一定の法則があって、それを若い世代に伝えたら有意義だと思った。自分は何かを教えられるほど偉くはないとも思ったけど、時間をかけて考えるうちに、僕がいろんな人たちから教わったことを伝えたいと思うようになったんだ」

「これまで教わったコーチ、人生に影響を与えてくれた人たち、何かを共有してくれた人たち、あるべき姿や新しいアイデアを与えてくれた人たち。僕はその人たちによって作り上げられた。僕が成功できたのは才能があるからじゃない。誰にでも才能はあるんだ。良い人格、しっかりとした向上心を持ち、私欲に走らず謙虚で、規律正しくいること。僕は人生の中で、いろんな人からそうなるように背中を押してもらった」

だからこそ『フォーミュラ・ゼロ』で指導を担当するのは、リラードをこれまで教えてきたコーチだ。

才能なくしてNBAでの成功はない。しかし、才能だけでは十分でないことをリラードは若い世代に伝えようとしている。「才能がある選手であっても、自分がこの先どうなっていくのか悩むだろう。成功を収めても、批判されることもある。10代だから混乱するのも当たり前だよ。その手のプレッシャーが彼らを追い込んでいく。だから才能だけじゃダメなんだ。僕はそういう子たちを助けたい」

彼がこのキャンプでやりたいのは、かつての自分がやってもらったように『背中を押す』ことだ。

「このキャンプが若い人たちの人生に良い影響を与えることを願っている。願わくば彼らが向上し、その両親の生活が楽になるような影響を与えられたら良いと思う」