伊藤大司

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「ポイントガードとして、責任は僕にある」

滋賀レイクスターズは10月21日に行われた横浜ビー・コルセアーズとの第2戦で、最大24点のリードを奪うも終盤に失速し、劇的な逆転負けを喫した。

第3クォーターを終えた時点でリードは16点。ガニ・ラワルの3点プレーとなるバスケット・カウントで最終クォーターも始まり、滋賀の勝利は揺るぎないものと思われた。だがその後、川村卓也を中心とした横浜の猛攻を浴びるうちに積極性を失っていき、最終的に2点差で敗れた。

「川村選手が乗って、そこから後手後手になってディフェンスのアグレッシブさ、第3クォーターまでできていたディフェンスが第4クォーターにできなくなってしまいました。逆に向こうがアクティブになって、僕たちはうまく攻められなかったです。向こうが乗ってきた時にディフェンスもオフェンスも消極的になったのが逆転された原因」と伊藤大司は試合を振り返る。

第4クォーター残り8分25秒の場面で伊藤のバックアップを務める二ノ宮康平が4ファウルに達した。終盤の戦いに備え、伊藤に交代することも考えられたが、滋賀のベンチに動きはなかった。

慢心ではないものの、伊藤もこの時点では後の逆転劇を想像できていなかった。「このレベルで15点、20点あるから勝ったと思う選手は誰もいないと思いますし、逆にいたら困ります。安心とかではないですが、二ノ宮を信頼しているので、あのままゲームを締める感じに持って行けるんじゃないかなとは思っていました」

伊藤大司

「ミスできないとビビっちゃっている部分があった」

だがその約3分後、二ノ宮はファウルアウトとなり、伊藤に出番が回ってきた。その時点で10点差まで迫られており、川村に3ポイントシュートを許し7点差となったところでオフィシャルタイムアウトを迎えた。得点が止まっていたため、より確率の良いシュートを選択しようとインサイドを使うが、3秒バイオレーションを連続で取られ失点するなど負の連鎖に陥った。

「ミスできないとビビっちゃっている部分があったと思います。安全にやろうとすると、ファウルももらえないですし、ショットクロックギリギリのシュートになって結局難しいシュートになってしまう。ガードとして誰にボールを集めるのか、どういうオフェンスをコールするのかができなかった結果、グッドシュートも打てなかったので、ポイントガードとして責任は僕にあると思っています」と伊藤はこの展開を反省した。

指揮官のショーン・デニスも「精神的にソフトになり、守りに入るような戦い方になった」と消極的になったメンタルを敗因に挙げた。

悪い流れを最後まで変えられず、最終的に2点差での惜敗となり、初めて同一カードの連敗を喫した。滋賀はここまで川崎ブレイブサンダース第2戦(12点差)を除き、負け試合すべてが5点差以内という結果になっている。地力が高いことを証明している一方で、接戦に弱いという見方もある。伊藤も後者の考え方のようだ。

「接戦で勝ち切れない弱さが僕たちのウィークポイントだと思います。今日に限らず新潟戦もそうでしたけど、点差を離して追い上げられた時の消極さが課題です」

伊藤大司

「成長できるチームに来させてもらった」

打開策はなんなのかを問うと、伊藤は熟考した後にこう答えた。「相手が乗ってきた時に、それぞれが『俺がその流れを止めてやる』という気持ちでプレーしないとダメですね。それは別にシュートを決めることに限らず、ストッパーになるメンタリティでも、リバウンドやルーズボールを絶対取るメンタリティでもいいと思うんです。『俺がこのチームを勝たせる』っていう勝者のメンタリティ、それはやっぱり強いチームには全員あると思います。それは田中大貴や富樫勇樹みたいにオフェンスで表す選手もいれば、菊地祥平さんみたいにディフェンスでワンストップするとか、もっと挙げろと言われればいろんな選手が出てくると思うんですけど、ベンチも合わせた全員がそれを思わないとダメかなと思います」

試合をコントロールできなかったことで「ポイントガードの責任」と自分を責める伊藤だが、それも正ポイントガードを任されている現在の充実感につながっている。

「一番メンタル的にも成長できる時期だと思っていますし、本当に充実してます。アルバルクだったらこの時間は田中のプレーだとか、レバンガ(北海道)だったらこのプレーでかき乱してマーク・トラソリーニだったりとか、多嶋(朝飛)の外だとか。じゃあ今回はその時間帯にどうするんだっていうので今まで以上に考えなきゃダメなので。どれが正解なのかわからないし、どれが不正解かも分からないという状態なので、ガードとして本当に成長できるチームに来させてもらったと思います」

接戦を勝ち切れない弱さがあるということは、その課題をクリアすればより強くなれる伸びしろを残しているということ。その課題に正面から向き合う伊藤の成長は、発展途上の滋賀をより高みへ連れていくはずだ。