昨シーズン、栃木ブレックスは序盤に大きく出遅れたものの、そこから見事に立て直しチャンピオンシップ出場を果たした。この復活劇の原動力となったのは、苦しい時期に指揮を託された安齋竜三の存在だ。初めてのヘッドコーチ経験でありながら、40分を通して緩みのないタフなプレーを続ける栃木のアイデンティティを再構築した。今シーズンは開幕から指揮官としてシーズンを迎える安斎に、オフのチーム作りと今シーズンへの意気込みを聞いた。
「どう変えるか」に神経を使ったプレシーズン
──昨シーズンは途中から慌ただしくヘッドコーチに就任しました。それだけに今オフはじっくりとチーム作りに取り組めましたか?
昨シーズンは急な就任だったので、準備する期間がなかった分、やれることをやるしかありませんでした。今シーズンはチーム始動から準備期間が1カ月半くらいありました。また、その前段階でどういうことをやったらチームが良くなるか。システムをどう変えていくかなどチーム作りをずっと考えていました。
そういう意味ではいろいろなストレスもあって、今までと違った部分もありました。ただ、もう試合が始まってしまったら、ある程度準備してきたことを、どう使っていくかになります。そういう意味では、ここからは昨シーズンとあまり変わらないかなと思います。
──オフのチーム作りで、一番ストレスを感じたところはどこですか?
選手のローテーションの仕方と、今までずっとやっていたシステムを少し変えないと戦えないチームが明確にあるので「どう変えるか」というところですごく神経を使いました。これは実際に対戦してみないと分からないところもあります。
──栃木はヘッドコーチも含めて主力メンバーが、この3年、4年のスパンでほとんど変わっていません。それだけに変化には勇気が必要であったり、プレッシャーはなかったですか。
プレッシャーというよりは、システムを変えたことでウチの選手たちの特長を潰していく可能性があったので、そういうところで選手たちに『こっちのほうが良いのに、なんで変えるんだ』と捉えられたくはないと思っていました。だからこそ、新しいものを取り入れるにあたっては、しっかりと理由を説明しました。
また、変えた理由には外国籍選手が2人しかベンチ登録できないというところで、プレータイムに気を配らないといけない。そして、長い時間を使うためには、激しさをどこかで削らないといけなかったりする部分もあります。ただ、変化していくことで、昨シーズンは打開されたチームに対しても逆に戦えることになると思っており、そこはチャレンジです。
「若い選手が成長して良いケミストリーができている」
──この外国籍のレギュレーションの変更については、どのように感じていましたか。結果的に栃木は、ライアン・ロシター、ジェフ・ギブスが登録メンバー、ケガなどで2人が出場できない場合のバックアップ要員でアンドリュー・ネイミックという布陣だと思います。
この点については、オフシーズンにどうしていくべきか神経を使いました。3人で回すのか、2人をメインにするのか。でも今はドリュー(ネイミック)がバックアップの役割を理解してくれているので、すごく助かっています。もちろんプレーすることもあると思いますし、そういう時のためにしっかり準備してくれているのでありがたいです。
──ロシター選手、ギブス選手の2人がメインと、明確な序列をつける方式のほうがチームとしてはやりやすいですか?
そうですね。ケガやプレータイムを考えるとローテーションのほうが良いという考えもあると思います。でも2人は今までやってきた自信があり、「俺たちは連続して試合に出られる」というメッセージがオフシーズンからずっとあって、彼らのモチベーションをなくすわけにもいかない。そういう意味で、この体制はベストです。
──日本人ビッグマンの橋本(晃佑)選手の重要度も高まりますし、喜多川(修平)選手の故障離脱で同じシューターの山崎(稜)選手など、昨シーズンにはあまり出番がなかった選手のステップアップに期待したいところです。
プレシーズンからある程度プレータイムを与えていますし、自分がこのチームでどういう部分を出していかないといけないか、本人たちも考えてプレーしています。それが良い方向に出ているし、自信もついてきているのは良い点です。彼らのステップアップなくしてウチのチームが良くなることはありません。若い選手たちがどんどん成長して、良いケミストリーができていることで、トップにいけるような雰囲気を作れてきてはいるかなと思います。そこは僕もすごい楽しみにしています。
「どういう状況になっても明確な指示を出す」
──最後に長いシーズン中、チームとしてヘッドコーチとして、最後までブレずに貫きたいところを教えてください。
理想のコーチ像はあまりないですけど、準備だけは怠らない、準備をしっかりして、これをやれば戦えるところまでしっかり前段階としてやって試合に臨み続けたいです。試合になってしまうと、どういう展開になるかというのはその試合によっても違いますし、その都度アジャストしていくしかないのかと思います。ただ、準備ができていれば、どんな展開になっても、ある程度は安心感を持ってそれなりのゲームができます。そして、どういう状況になってもしっかりと自分を保ちながら明確な指示を出すことは続けないといけないです。
チームとしては毎日の練習を常に100%の集中力で取り組み、試合への準備をする。常にそういう気持ちをみんなが持ってコートに入ってほしいです。それを続けなければ強いチームにはなれないです。それを続けられた時に、良い成績が見えてくると思っています。