開始3分半で10得点、第4クォーターに11得点
宇都宮ブレックスvs川崎ブレイブサンダースのセミファイナル第2戦は比江島慎に始まり比江島慎で終わった。
序盤からシュートタッチが好調だった比江島は自らクリエイトしつつタフな3ポイントシュートを次々と沈めた。3本の3ポイントシュートをすべて沈め、4点プレーを含む10得点を開始3分半で稼ぎ、チームが先行する立役者となった。
その後はフリーで決め切れない場面もあり、相手のマークが強まったことでパフォーマンスが落ちたが、最終クォーターの大事な場面で再び輝いた。同点で迎えた残り55秒、ボールを託された比江島は果敢にアタックし、ニック・ファジーカスからシュートファウルを誘発した。これで得た2本のフリースローを確実に沈めると、直後のポゼッションを守り切ったことで宇都宮が優勢に立った。川崎はファウルゲームに持ち込み勝機をうかがったが、比江島が立ちはだかった。このプレッシャーがかかる状況で、比江島は8本連続でフリースローを成功させて宇都宮が最終スコア77-73で勝利し、2年連続でファイナル進出を果たした。
比江島は「苦しい時間帯が続きましたが我慢をして、第4クォーターが勝負になると思っていました。そこでチームとして勝ち切れたので、価値のある勝利になったと思う」と試合を振り返る。自身が勝負になると語った第4クォーターで、比江島は11得点2アシスト1スティールを記録した。
安齋竜三ヘッドコーチが「自分が指揮を執っていますが、ウチの選手のやるべきことをやろうとする遂行力は本当にすごい」と称えたように、チームバスケットで手にした勝利であったことは間違いない。さらに言えば、会場に駆け付けたファンの力も影響していた。大事なフリースローをすべて成功させた比江島は言う。「周りを見渡せば宇都宮ブレックスのファンが見守ってくれていました。そこで安心して力まず、正直あの時は落ちる気がしなかったです」
「去年の経験があったからこそ、この1年間を頑張ってこれた」
安齋ヘッドコーチはクォーターファイナルの千葉ジェッツ戦で、活躍した比江島に対し「いつの間にか比江島慎が帰って来た」という表現をした。得点力が高く、ハンドラーとしてクリエイトできる比江島には常に高い期待が寄せられてきたが、その期待に毎回応えられてきたわけではない。千葉戦では最初から最後までアタックする姿勢を崩さなかったからこそ、安齋ヘッドコーチはそのように表現したのだろう。そして、今回のセミファイナルでも初戦で12得点7アシスト、第2戦で24得点6アシストを記録して、健在ぶりをアピールした。
安齋ヘッドコーチは2ウェイプレーヤーとしての信頼が高まっていると言う。「ウチに来てディフェンスをやらなきゃいけないところから始まり、昨シーズンまでの固まったところに入ってきた時の難しさも感じていたと思う。そういう経験を乗り越えて、オフェンスではゲームをコントロールしていると思うし、マコらしいプレーができるようになった。ディフェンスでもそれができるようになって、チームとして両方欠かせない選手になってきてくれた感じがします」
比江島は昨シーズンのファイナル3試合で平均6.7得点、2.6アシスト、3ポイントシュート成功率16.7%と低調に終わり、悔しさを滲ませていた。比江島は「去年の経験があったからこそ、この一年間を頑張ってこれた」と語り、ファイナルに向けてこのように意気込んだ。
「メンタル面だったり成長が感じられて、教訓を得てここまで来れました。去年は全体1位というのもありましたし、勝って当たり前というようなプレッシャーを感じてしまって、思うようなプレーができませんでした。気負い過ぎずリラックスして、いかにファイナルの舞台を楽しめるかどうかがカギになると思うので、精一杯楽しみたいと思います」