
オンコート、オフコートともに充実した1年
ボストンカレッジのテーブス流河は現地12月28日、ホームでのルモインカレッジ戦で2025年を戦い終えた。この日、ボストンカレッジは72-64で接戦を制し、今季の成績を7勝6敗と勝ち越して終えたのは良かった。ただ、テーブス個人としてはファウルトラブルに苦しみ、約18分をプレーして得点とアシストはともにゼロ。もちろんポイントガードの価値は数字よりも勝敗で測られるものだが、前戦のフェアリー・ディキンソン大戦では21得点0ターンオーバーの活躍で牽引車になったあとで、1年の最後を良い形で締めくくれなかったという思いは強かったに違いない。
「まず勝ちを取れたのが一番良かったです。でも個人的にはもうちょっとできたのではないか、と悔しい気持ちがあります。別に悪いプレーはしていないのですが、もうちょっとアタックが狙えたところはあるのかなという印象ですね」
たとえ思い通りに有終の美を飾れなかったとしても、テーブスにとっての2025年が実り多き1年だったことに疑問の余地はない。夏には日本代表のディベロップメントキャンプでポテンシャルを見せ、アジアカップ前の親善試合では初のA代表デビュー。その後、ボストンカレッジでの2年生のシーズンでもプレーメーカーとして開眼し、12月6日以降の4試合はすべてスタメンで起用されてきた。日本代表のテーブス海を兄に、指導者のBTテーブスを父に持つ21歳の俊才は、このまま大きく飛躍しそうな予感を感じさせている。
このようにコート上でのプレーだけが充実しているだけではない。ニューマンスクール時代からボストンに馴染んだテーブスは、地元での日々をより快適に過ごせるようになったことも収穫の一つなのだろう。バスケットボールと学業で日々忙しく、12月のファイナルイグザム(期末試験)を終えたばかり。強豪カンファレンスに属するチームの冷静な司令塔も、コートを離れたらテストのスコアを心配しなければいけない一人の若者だ。ファイナルイグザムの結果を問われると「ボストンカレッジは結構難しい学校なので、ちゃんと勉強しないと単位も取れません。頑張ったので乗り越えられました」と安堵したように笑った。
普段、時間があるときはオンラインで日本のテレビ番組を見ることもある。完璧なバイリンガルのテーブスはもちろんアメリカのショウも好きで、お気に入りはNetflixで配信されている『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。バスケの練習、試合以外では身体を休めることの方を優先し、なかなか遠出する時間はないが、たまにボストンのダウンタウンに買い物にいくこともあるという。
「ニューベリー・ストリートというとても綺麗な通りがあるんです。高校の時のニューマンスクールがそこから5分ぐらいのところだったので、よく行っていました。服を買える店がざっとあるので、たまに友達とショッピングをしています。ニューベリー・ストリートがボストンで一番、お気に入りの場所ですね」
何よりも大きいのは、カレッジでも気遣いの必要がない友人たちが見つかったことに違いない。大学生活の経験がある人ならご存知の通り、そこでの思い出は結局のところどんな仲間に出会えるか次第。日米両方の多くのファンからの期待を集めるアスリートであっても、その点はもちろん変わらない。「日々の生活もだいぶ落ち着いて、スモールサークル(少数の仲がいい)の友達と過ごすようになってきています。去年と比べても、だいぶ良い感じで暮らせていますね」。そう話す21歳の横顔からは、もちろんアップダウンがありながらも、好きな場所での生活を楽しむ若者の充実感が滲んだ。
このように良好な日々を過ごせているのであれば、シーズン中盤以降もその活躍に期待が持てる。ボストンカレッジはノンカンファレンスゲームを勝ち越して終えたが、年明けからはいよいよACCのカンファレンスゲームがスタートする。デューク大、ルイビル大、バージニア大らの強豪校と対戦する中で、好調時には『ルカ・マジック』と称されるほどの爆発力をみせるテーブスの働きはますます重要になるはずだ。

「やっぱりお母さんのトンカツが一番ですね」
このように公私ともに順調に見えるテーブスだが、ボストンでの暮らしの中で一つだけなかなか解消できない課題がある。アメリカ生活が長くなっても、依然として日本食が大好きなテーブスだが、安心して足を運べる美味しいジャパニーズレストランがなかなか発見できないままなのだ。
「(好きな店が)まだ見つからないんですよ。だから最近、炊飯器を買いました。近くのスーパーで普通に日本のお米が売っています。お母さんがふりかけをたくさん送ってくれたので、ご飯を炊いて、ふりかけをかけてずっと食べていました(笑)」
テーブスが何よりも好むのはトンカツ。食事に関してこれまでに最も目を輝かせたのは、どのレストランの話をする時でもなかった。11月上旬に母親がボストンを訪れた時の、手料理の味が忘れられないのだという。
「お母さんが日本からパン粉だったり、素材を持ってきてくれて、トンカツを作ってくれたのが一番うれしかったですね。トンカツが一番好きなんです。ボストンでもトンカツを探しているんですけど、どこもちょっと日本のトンカツとは違くて、がっかりしちゃうんです。やっぱりお母さんのトンカツが一番ですね」
アメリカにおける『日本食問題』は引き続き残るが、テーブスには家族の熱いサポートがある。父からは継続的にプレーのアドバイスを受け、『一緒にオリンピック出場』を大目標としている兄の存在は常に刺激になる。そして、母親は食事面で気配りしてくれているのだから、何があろうと、この俊才の将来はやはり明るいに違いあるまい。