「試合を重ねていくことでより良いケミストリーを築いていける」
群馬クレインサンダーズは週末に千葉ジェッツとのアウェーゲームに臨み、痛い連敗を喫してしまった。ただ、ゲーム1は最後まで一進一退の攻防を繰り広げ、ゲーム2も第2クォーター残り5分半で19点ビハインドを負ったところから5分間で3点差にまで詰める爆発力を見せるなど、内容面ではポシティブな要素も見えている。
群馬は昨シーズン、チーム初のチャンピオンシップ出場を果たした。そしてオフにはさらなる飛躍を目指し、アジア枠のエージェー・エドゥに加え、カイル・ミリングヘッドコーチと共に広島ドラゴンフライズでリーグ制覇を達成した中村拓人、ケリー・ブラックシアー・ジュニアを獲得。指揮官のスタイルを熟知している2人は、開幕から先発を担うなど即戦力として活躍している。
特に中村の加入は、群馬のバックコート陣にリーグ屈指の厚みをもたらした。2021-22シーズンMVPの藤井祐眞は攻守に渡りエナジー全開のプレーでチームに活力を与える。細川一輝はキャッチ&シュートに磨きをかけ、ピュアシューターとしてすごみを増している。辻直人は36歳と大ベテランの域に入ったが、代名詞の3ポイントシュートの破壊力は健在。そしてコー・フリッピンは抜群の身体能力を生かしたドライブとタフな守備が魅力など、それぞれが違った強みを持っていることは群馬の大きな持ち味だ。
それだけに生粋のポイントガードである中村が、いかにチームにフィットしそれぞれの持ち味を引き出していけるかは群馬の大きな伸びしろだ。千葉Jとのゲーム1終了後、中村はこのように自身の現状について語った。「チームのシステムについては、ミリングヘッドコーチと一緒にやっていたのでやりやすさはあります。ただ、新しくプレーするメンバーもいますし、試合を重ねていくことでより良いケミストリーを築いていけると思います。今は僕自身もっとポイントガードとしてやるべきことがたくさんあるので、まだまだです」
「チームを勝たせることができれば、より成長を実感できる」
やるべきことの中でも、中村が重視する一つが、「接戦になった時、『ここで一本取らないといけない』というタイミングでいかに得点が取れるか」と、要所での的確な判断だ。「重要な場面をポイントカードとしていかに察知して、チームとして何をやりたいのかをもっと浸透させないといけない。自分がボールを持ってコントロールするだけでなく、どこにアドバンテージがあるのか素早く判断してオフェンスを組み立てないといけないです」
群馬には大エースのトレイ・ジョーンズを筆頭に、藤井、辻、細川など、これまで勝負どころでビッグショットを決めてきた実績のある選手が複数いる。オプションが豊富だからこそ、オフェンスの舵取り役の中村には状況に応じて最適解を選ぶ難しさがあるが、何よりも自身がチームメートの特徴を把握することが大切だと語る。
「例えば、トレイに1対1で攻めやすいスペースを与えるべき時はいつなのか。そこは試合を重ねていくことで、彼がどういうタイミングでボールが欲しいのかがより早く気づけるようになると思います。他の選手も含め、自分がもっとみんなの特徴、役割を理解していきたいと思います」
中村にはすでに先発ポイントガードとしてチームを優勝に導いた実績があり、群馬をさらなる高みへと引き上げる即戦力として大きな期待を寄せられている。もちろんチームの成長に貢献したいという強い思いを持って群馬に加入した中村だが、群馬でプレーすることが自身のステップアップに繋がると強い確信を持っている。
「群馬は昨シーズン、チャンピオンシップに出て今シーズンは優勝を目指して戦っています。自分のレベルアップをチームに還元することで優勝へと繋げていきたい。今、ものすごく充実していますし、ここは誰もがいられる環境ではないと思っています。いろいろなところから吸収していくことで、バスケットボール選手として成長できています」
そして中村は「チームを勝たせることができれば、より成長を実感できます」と、チームの勝利によって自身の存在意義を示したいと語る。
現在、3勝4敗の群馬は、今週末にアウェーで琉球ゴールデンキングスと対戦。10月は10試合の内、ホームが水曜ゲームの2試合のみに大きく偏っている上に、千葉Jに琉球というリーグ屈指の難敵相手にアウェーで連戦という過酷な日程だ。だからこそ、ミリングヘッドコーチは「レギュラーシーズンの中でも最もタフな期間ですが、シーズン序盤にこれを経験できることで、チームの現状を見られる良い機会だと思います」ととらえている。
まだシーズンは始まったばかりで、目先の結果に一喜一憂する段階ではないが、群馬がこれ以上の連敗を避けたいのは間違いない。この悪い流れを食い止めるには、非凡なゲームメークで琉球のタフなディフェンスを崩す中村の活躍が必要だ。