バックスのオファーに対抗するチャンスは与えられず
ペイサーズにとって今オフのFA戦線における最優先事項と言われていたのが、マイルズ・ターナーとの再契約だった。29歳のターナーは昨シーズン、72試合出場で平均15.6得点、6.5リバウンド、2.0ブロック、3ポイントシュート成功率39.6%を記録。ゴール下での堅実なディフェンスに加え、外角のシュート力を備えたリーグ屈指のビッグマンとしてファイナル進出に大きく貢献した。
ペイサーズはターナー引き留めのため、これまで回避していたサラリーキャップ超過によるラグジュアリータックスの支払いも辞さない考えだった。しかし、ターナーはバックスと4年総額1億700万ドル(約156億円)で契約した。ペイサーズにとって、この契約は青天の霹靂だった。バスケットボール部門代表のケビン・プリチャードは、「シャムス(ジャーナリストのシャムス・カラニア)のSNSの投稿で、マイルズがバックスのオファーを受けたことを知った」と明かす。
ターナー移籍にショックを受けているのはフロント陣だけではない。ペイサーズのリック・カーライルヘッドコーチはポッドキャス番組『Green Light with Chris Long』に出演し、「マイルズ・ターナーの移籍はチームにとって大きな喪失だ。彼は素晴らしい選手で、見事なシーズンを送っていたからね」と語る。
「私たちは彼の代理人と契約延長について話していたが、突然バックスが残りの金額を複数年に分けて支払うことでデイミアン・リラードを放出した。これでバックスはマイルズと契約するための余裕を作り出した」
バックスとの契約が明らかになる前、ペイサーズのターナーへの提示額は3年総額6000万ドル(約87億円)規模だったと報じられており、両者の提示額には大きな開きがある。ペイサーズはバックスのオファーに対抗する意思はあったが、ターナーの代理人はそのチャンスを与えなかったとプリチャードは語る。
ただ、カーライルは冷静だ。「あらゆるスポーツにおいては、おそらく交渉の一部だと思う。あるチームは『この契約をオファーするから、他のチームとの交渉を止めて受け入れてほしい』と言うこともあるだろう。これが彼とバックスとの間にあったことだと信じている」
ペイサーズは、ファイナルでアキレス腱を断裂した大黒柱タイリース・ハリバートンが新シーズン全休の見込み。さらにビッグマンの要であるターナーも流出し、新シーズンは苦しい布陣での戦いとなる。名将カーライルはこのような苦境の中でどんなチーム作りを行っていくのだろうか。