
2024-25シーズンの長崎ヴェルカは充実した戦力を擁しながらもチームとして噛み合わず、26勝34敗とチャンピオンシップ進出争いを演じることさえできなかった。それでもチームは苦しい状況でも一体感を崩さず、5月上旬と早々にシーズンを終えたことで、6月にはすでに来シーズンに向けて始動している。狩俣昌也も早々にチームに戻り、来シーズンに向けたトレーニングを行っている。その狩俣に、今の心境を語ってもらった。
「B1で戦うことの難しさをあらためて実感した」
──まずはシーズンを振り返っていただきたいと思います。
長崎が立ち上がってから一番良いメンバーが揃ったと思いますが、勝てないシーズンになりました。シーズン当初から自分たちの力には自信があり、練習からハードにやっていたのですが、結果がついてきませんでした。その要因としてケガ人が多く出たことが挙げられます。ベストメンバーで戦うことができず、シーズンの半数以上の試合で普段とは違うポジションでプレーをしなくてはいけない状況でした。
モーディ・マオールヘッドコーチも日本でのコーチングは初めてで、シーズン序盤はカルチャーにアジャストしていくのが難しいように見受けられました。そのため、自分たちのスタイルを確立するのにシーズンの半分以上を費やしてしまったという印象です。
──そんな厳しいシーズンでもチームの結束は揺らぐことなく、下を向かず最後までプレーをしている姿が見られました。
長崎は毎年、メンタル的に頑張れる選手が入ってきているのが好循環となってカルチャーを築いています。コーチはもとより、選手やスタッフに至るまでチーム内の誰かを批判するようなことはないのが、そのような印象を与えることになったと思います。
──長崎はクラブ創設から急成長を続けていますが、変化し続ける難しさもあると思います。
新しいコーチになり、バスケットの色も変わりました。選手も半数以上が入れ替わって、本拠地の移転もあり、私生活でも変化がありました。そういった中でやはり、コーチの求めるバスケットへの理解とチームのケミストリーの再構築は難しかったです。自分はコーチや環境が変わってもアジャストできるのがストロングポイントで、チームの本質やコーチの狙いを練習の時から考えて、常に練習から意図を汲み取るようにしています。コーチの理解を深めるために、シーズン中にもコーチと対面でコミュニケーションをとってチームのパイプとなれるように努力をしました。
チームケミストリーの部分ではチームとしても個人としても各々が持てる力を発揮できずにフラストレーションを溜めていた時期があり、まずは『バスケットを楽しむ』という原点に立ち返るように選手間で声を掛け合っていました。その結果、シーズンの終盤にはチームの方向性、マオールヘッドコーチが求めるバスケットが浸透して形になったと思います。

「選手もチームも来シーズンに向けて動き始めています」
──37歳の大ベテランとなりましたが、今後のキャリアをどう考えていますか。
僕個人としてはベテランという感覚はなくて、チームで活動している時も他の選手とトレーニングをしている時もその感覚はないです。ただ、こうやってインタビューを受けた時に「ベテランとして」、「最年長として」と質問された時に「ベテランなんだな」と思うくらいです(笑)。
長崎は本当に良い選手が揃っていて、これから長崎が成長していくには若い選手の力も必ず必要になっていきいます。老婆心として若手には試合に出てほしいと思っていますが、それを僕たちが譲っていくのは違っていて、勝ち取ってほしいです。ベテランだから世代交代をするのではなく、いつもハードにプレーをしていく気持ちです。
──来シーズンの目標をどこに置きますか。
やはりチャンピオンシップに出場して優勝を狙えるチームになりたいです。今シーズンは自分たちのチームに希望を抱いていました。「このメンバーならチャンピオンシップに行けるんじゃないか」という淡い期待を持っていたのですが、現実はそんな甘いものではなく、B1で戦う厳しさをあらためて実感しました。
自分たちに期待をすることはやめて、来シーズンは「絶対につかみにいく!」という強い気持ちで臨みます。シーズンが早く終わってしまったこともあり、選手もチームも来シーズンに向けてもう動き始めています。マオールヘッドコーチもすでに戻ってきており、週4くらいでワークアウトを実施しています。
僕自身もこれまでは身体をしっかりと休めて、合流の2週間前くらいから動き出していたのですが、今回はもう身体作りをスタートさせています。また、今シーズンは自分がシュートを決めていてれば流れが変わって勝てていた試合が多かったので、疲労が溜まった状態でのシュート精度やメンタル面の向上を試みており、今は遊び感覚でキャッチの仕方やボールの持ち方など試行錯誤をしています。シュート精度の向上を目標に日々取り組んでいます。
──最後にブースターに向けてコメントをお願いします。
ホームでなかなか勝てない苦しいシーズンだったにもかかわらず、ホームのみならずアウェーにも多くの方が駆けつけてくれて、どんな時でも背中を押してくれたことに感謝しています。今シーズンは悔しい思いをみんながしていて、他のチームが勝っていく姿を見て長崎がこの舞台に立ってほしい、チャンピオンシップで戦ってほしいという声を聞いています。その声に応えることが至上命題ですし、長崎全体で応援してくれているのはいつも実感しているので、そのサポートに恩返しができるように戦います。