若手とベテランの力が噛み合い、東の6位へと躍進
昨シーズン終了時点で、スパーズはルーキーのビクター・ウェンバニャマに良い経験を積ませて、飛躍の時が近いように見えた。一方でピストンズは再建が思い通りに進んでいなかった。しかし今、スパーズはウェンバニャマが血栓症でシーズン終了となった一方で、ピストンズは若い勢いだけではない安定感まで備えつつ、東カンファレンス6位と躍進している。
現地2月21日、両者の対戦はまさにそんな両チームの勢いが反映された試合となった。開始3分でピストンズが運動量と身体能力で圧倒して13-2とリードを奪う。スパーズもすぐに立て直して前半を1点差で終えたが、ピストンズは後半立ち上がり3分半で13-0のランと再び爆発。今度はそのまま一気に差を広げ、第4クォーターまでセーフティリードを保ったまま125-110で勝利した。
司令塔にしてエースのケイド・カニングハムは25得点12アシストを記録したが、昨シーズンまでは彼がこれだけ活躍しても結果がついてこなかった。その差を生み出しているのは他の選手だ。トバイアス・ハリスは若い選手をサポートしつつミスマッチを確実に突くベテランらしいしたたかなプレーで攻守になくてはならない存在となっているし、アサー・トンプソンは素晴らしいエネルギーを、ティム・ハーダウェイJr.は経験を、マリーク・ビーズリーはベンチから3ポイントシュートをもたらしている。
もう一人、忘れてはならないのがジェイレン・デューレンで、この試合での彼は21得点15リバウンド5アシストと素晴らしいパフォーマンスを見せた。スパーズはウェンバニャマの戦線離脱でセンターの層が手薄になっており、先発のビスマック・ビヨンボ、2番手のチャールズ・バッシーを相手にデューレンがゴール下を支配したことで、ピストンズの優位を作り出した。
スパーズもディアロン・フォックスが27得点、ケルドン・ジョンソンがベンチから28得点と奮闘したが、コートに立っているのがどの顔触れでもプレー強度を高く保っていたのはピストンズであり、クォーターが進むにつれて優位性が際立っていった。
「試合の流れを理解して勝ち方が分かるようになった」
「これは僕らの成長の証だ」とデューレンは言う。「これまでの様々な出来事から学び、試合の流れを理解して勝ち方が分かるようになった。それは勝ち筋を見いだして僕らをその流れに乗せてくれるコーチの功績でもある。彼は僕たち選手と心を通わせ、モチベーションを刺激してくれる精神的なリーダーだからね」
若手のベースにベテランの力が噛み合い、今シーズンからヘッドコーチを務めるJ.B.ビッカースタッフの采配もハマっている。この試合でもハーフタイムの間に前半の改善すべき点をスタッフが短い動画にまとめ、やるべきことを分かりやすく伝えた。それが後半のパフォーマンスに繋がった。
「今日のディフェンスは本当に良かった」とビッカースタッフは言う。「良いディフェンスでボールを奪い、スムーズに攻めに転じることができた。そうなればウチには止められない選手がたくさんいる。これが我々のやりたいバスケなんだ」
デューレンもこう語る。「やるべきことは分かっていても、全員が同じ意識でやることでケミストリーになる。そのために噛み合わない部分があれば率直に意見して、お互いに話し合う。簡単なことだけど、今の僕らが上手くいっている理由の大部分はこれだと思う」
「全員がそれぞれの役割を理解し、それを遂行すればどこが相手だろうと圧倒できると思っている。ガードもウイングもサイズがあってペイントを攻めることができ、ケイドやトバイアスのように厳しいシチュエーションでもボールを渡せば解決してくれる選手もいる。僕が一番好きなのはセットオフェンスじゃない攻めで、そこに勢いがある時がウチのベストだ」
若いピストンズは勝っても負けてもそこから学び、勝つたびに自信を増していく。レギュラーシーズンは残り26試合、ここからの2カ月でも好不調の波はあるだろうが、それを乗り越えるたびにチームは成長していく。