
最初からパワー全開「トーンを設定する意図があった」
ペイサーズを相手に1勝3敗と追い込まれたニックスだが、本拠地のマディソン・スクエア・ガーデンに戻った第5戦で今回のプレーオフで最高のパフォーマンスを見せ、111-94で勝利した。
ペイサーズにとって得点が94を下回った試合はプレーオフでは存在せず、レギュラーシーズンでは4回だけ、そのすべてで敗れている。失点してもすぐさまリスタートして走り合いに持ち込み、縦へスピードに乗った攻めからリズムを作るのがペイサーズの戦い方であり、猛スピードでプレーしながらもターンオーバーを最小限に抑え、個々が持ち味を発揮する。しかし、ハーフコートオフェンスでフィジカルが前面に押し出される展開に持ち込まれると苦しい。
その展開はニックスの得意とするところ。この日のニックスは気合いが入っていた。ティップオフからクラッチタイムのように鬼気迫るプレーを見せるジェイレン・ブランソンが、いきなり3本連続でタフショットをねじ込み、続いてはミッチェル・ロビンソンへのアリウープをアシスト。マディソン・スクエア・ガーデンのボルテージはいきなり最高潮に達した。
「トーンを設定する意図があった」と、試合後にブランソンはこのシーンを振り返る。「でも、それは必ずしもボールをバスケットに入れることではない。実際はそうなったけど、僕がやりたかったのはチーム全員が同じ方向を向いていることの確認だった。全員が準備万端で、お互いにエネルギーを与えられるかどうか。僕たちはもう後がない。すべてを出し切る必要があった」
徹底したディフェンスでハリバートンを抑え込む
そのブランソンに牽引され、ニックスはオフェンスだけでなくディフェンスでも集中力を見せる。ハイテンポのバスケを作り出すタイリース・ハリバートンに執拗に張り付いたのはミケル・ブリッジズだ。
これまでは速い流れの中でハリバートンをマークしきれず、プレー判断の余裕を与えていたが、この試合ではブリッジズはもちろん、スイッチして他の誰かがマークを引き継いでも、ハリバートンに時間もスペースも与えなかった。ハリバートンは第4戦では32得点12リバウンド15アシストを記録するなど絶好調だが、この試合ではタイトなマークを受けながらもターンオーバーをしなかったが、6得点6アシストに終わっている。
「プレーオフのこの段階に来たら、何が起きてもおかしくはない。ニックスがエネルギー全開で来るのは予想していた。準備はできていたはずだけど、対応できなかった。次はもっと良いプレーをする」とハリバートンは言う。
ブランソンはオフェンスを引っ張って32得点を挙げ、カール・アンソニー・タウンズも24得点13リバウンドと気を吐いた。他にもロビンソンはスタッツに表れないゴール下の奮闘を続け、ここに来てローテ入りしたベンチメンバーもランドリー・シャメットが守備のハッスルで観客席を沸かせるなど、試合を通してエネルギー不足に陥ることがなかった。
「最大限のエネルギーを持って試合に臨み、誇りを持ってプレーした」とブランソンは言う。その意識は、この日の全力プレーを次の第6戦でも変えずに貫くことに向かっていた。
「目の前の試合だけに集中する。もっと良いプレーができるように映像を確認して、準備を整える。インディアナに移動して、ボールが投げられた瞬間に最大限のパフォーマンスができるようにする。それがマインドセットだ」