「2年間ずっと試合よりもリハビリのほうが多い感じ」
バックスのクリス・ミドルトンは長いスランプの中にいる。2020-21シーズンにヤニス・アデトクンボとともにNBA優勝を勝ち取った後、翌シーズンもクレバーで勝負強いオフェンスの2番手として存在感を発揮するも、プレーオフでは左膝と手首のケガで2試合にしか出場できず。オフに手術をしたことで2022-23シーズンは33試合の出場に留まった。
その後もケガの連鎖は続く。昨シーズンは膝こそ回復したものの足首の捻挫で1カ月半の離脱を強いられ、その後はハムストリングのケガを繰り返して本来のプレーを取り戻せないまま。もともとケガの少ない選手だけに、ここ2年の苦境は彼にとって本当に苦しいものだ。「ケガもバスケの一部だと理解しているけど、もう2年間ずっと試合よりもリハビリのほうが多い感じだからフラストレーションが溜まるよ」とミドルトンは言う。
今シーズンは開幕から足首のケガで欠場が続いた。この1カ月は試合には出場できているが、足首の状態は一進一退でコントロールできず、その日その日の足首の痛みを確認しながら時間制限を設けてプレーしている。
そのためしばらくはベンチスタートが続いた。出場時間の制限がある中で、アデトクンボやデイミアン・リラードと連携を取ってプレーするよりも、ベンチから出てセカンドユニットの得点源として自分のプレーに集中したほうがリズムをつかみやすい、というのが当初の指揮官ドック・リバースの判断であり、コンディションを整えながら試合勘を養ってほしいという配慮でもある。
その時期を経て直近の7試合では先発に復帰していたが、現地1月10日のマジック戦でミドルトンは再びベンチスタートに回った。今回のベンチ落ちは再びの『一歩後退』の感がある。そのマジック戦では第3クォーターまでに17分の出場で11得点3リバウンド4アシストと上々のプレーを見せたが、やはり本来の存在感は出せていない。
一昨シーズン中盤にもミドルトンはケガからコンディションを戻していた時期に14試合をベンチスタートで戦っており、この時のバックスは13勝1敗だった。アデトクンボとリラードを休ませる時間帯の得点をミドルトンが担うことでバックスは安定する。今のベンチスタートはあくまでミドルトンの復調を待つためのものだが、思わぬ副次的効果があるかもしれない。
しかし、外部の人間は33歳になってケガの増えたミドルトンをもう終わった選手かのように見たがるが、バックスの選手たち、特に一緒に優勝を勝ち取ったメンバーからの信頼は揺らがない。アデトクンボは盟友ミドルトンについてこう語る。「僕とデイム(デイミアン・リラード)とクリスの3人を同時に起用することでボールが思うように動かないことがあるかもしれない。クリスがベンチスタートに回ればチームの厚みは増すかもしれない。でも、僕としては3人同時起用に何の問題もないと思っている。一緒にプレーすることで僕のリズムが狂うことはない。起用法を決めるのはドックの仕事だけど、僕が望むのは、クリスが自分らしく自由にプレーすることだ」
「結局のところ、大事なのは試合終盤にプレーすることだ。クリスが先発でもそうでなくても、クロージングラインナップに入るのは間違いない。バスケIQが高く、点が取れて守れる選手であることに何の変わりもないんだ。僕はいつだって彼がチームの一員であることに感謝しているよ」