藤永佳昭

約10分のプレータイムながら相手指揮官も敗因に挙げる活躍

千葉ジェッツは川崎ブレイブサンダースとの第2戦に86-78で勝利し、同一カード連敗を阻止した。

クォーターごとのスコアを見れば、20-14で上回った第2クォーターがキーポイントのように映る。だが、川崎の佐藤賢次ヘッドコーチは第3クォーターの終盤を敗因に挙げた。第3クォーター序盤は川崎がペースを握り、開始2分半で12-2と走って逆転したが、結果的にこのクォーターを23-24と上回られた。つまり、逆転した後に11-22と巻き返されたのだ。

この時間帯で大きな仕事をしたのが控えガードの藤永佳昭だった。藤永はわずか3分半の間に3得点2アシスト1スティールを記録。また、オフェンスだけでなく、持ち味であるディフェンスでも存在感を発揮し、チームのディフェンス強度を引き上げた。その結果、前半はゼロだった速攻からの得点がこのクォーターだけで12にまで伸びている。

だからこそ佐藤ヘッドコーチは第3クォーターの攻防を敗因に挙げ、さらに藤永の名前を挙げた。「藤永君が出てきたところでディフェンスの強度が一段上がった。シュートを入れるだけじゃなくバスケットはいろんな要素が絡み、それが勢いに繋がる。彼に仕事をさせたことが大きなポイントだった」

千葉を指揮する大野篤史もディフェンスと速攻の関連性を説明しつつ、藤永のパフォーマンスを称えた。「インテンシティを上げたいところでアキ(藤永)を入れて、しっかり自分の強みを出して自分たちのモメンタムを作り出してくれた。速攻が増えたのは間違いなくリバウンドが取れたから。リバウンドをコントロールできたのはインテンシティが上がって(ゾーンを併用する)チェンジングが効いたから。そこにアキが貢献してくれた」

藤永はこの試合、約10分のプレータイムで3得点4アシスト1スティールを記録している。突出したスタッツを残したわけではないが、数字に表れない貢献度は計り知れない。だからこそ藤永も満足気な表情でこう語る。「僕が出る時間帯はディフェンスの強度を上げないといけなくて、今日はそれが徹底できた。オフェンスも良いボールムーブメントができたので、良い流れを作れたと思います」

西村文男

「スタートで出たい気持ちも多くあります」

この試合は藤永だけでなく、千葉の控えメンバーの活躍が目立った。クリストファー・スミスは速攻のフィニッシャーとなり、勝負どころで3ポイントシュートを沈めて18得点。また西村文男は9分間の出場で8得点を記録するだけでなく、熟練のゲームメークで試合をコントロールした。

これまでは西村が富樫勇樹のセカンドガードという立ち位置だったが、今シーズンは藤永がそのポジションを勝ち取った。しかし、試合を重ねるにつれて出番は減少している。藤永は「調子が良い選手が出るべき。自分が証明していかないといけないんですけど、なかなか良いパフォーマンスができていなかった」と言う。

プレータイムを争う西村は百戦錬磨のベテランだ。「どの時間帯で出ても活躍する自信はある」と自負する西村は起用法に特別なこだわりを見せない。だからこそ、信頼する仲間の活躍を手放しで喜ぶ。「ベンチには信頼できるガードが2人います。フジは誰よりも高いエナジーを持って、プレッシャーをかけて良いディフェンスから流れを作ってくれていた。あれだけ結果を残してくれたのでうれしかったです」

競争相手とはいえ、時にはアドバイスをもらうという西村を藤永はリスペクトしているが、彼とは置かれている立場も、考え方も違う。また、藤永も29歳と若くはなく、同じスタンスでいてはいけないことを分かっている。だからこそチーム内での序列を上げ、先発で起用されたいとの思いを抱いている。

「もちろん、試合に出たい気持ちはありますし、スタートで出たい気持ちも多くあります。それがなくなったらここにいる意味もないし、選手としてバスケットをする意味もないと思うので、その気持ちは絶対に持っています」

日本代表の富樫がいて、経験豊富な西村もいる。彼らの競争に勝つことがどれほど難しいことかを理解して、藤永は4年前に千葉にやって来た。この試合のような分かりやすい活躍をコンスタントに続けることができれば、自ずとプレータイムは増す。飛躍の準備は整った。彼にとっては結果が求められるシーズンとなる。