ザック・ラビーンの360°ダンクを演出「建物が揺れたね」
ブルズは現地11月10日のマーベリックス戦に117-100と快勝し、8勝3敗でウィザーズとともに東カンファレンス首位に立っている。ルカ・ドンチッチを擁するマブスを振り切る決定打となったのは、残り2分を過ぎたところで生まれたザック・ラビーンの360°ダンクだった。
しかし、このド派手なプレーはブルズがチーム一丸で作り出したものだ。ドリアン・フィニー・スミスがドライブから繰り出すパスを読んでいたアレックス・カルーソが、身体を投げ出してボールを奪取する。キャリアハイに並ぶ6つ目のスティールに成功したカルーソは、フロアに倒れながらもボールを繋ぎ、ニコラ・ブーチェビッチを経由してロンゾ・ボールへ。ロンゾはすぐさまベースボールパスで前線に残るラビーンにピンポイントで合わせた。ラビーンは余裕を持って、ダンクコンテストを地元ファンに披露した。
ラビーンはその直前の攻めでシュートを外している。相手のファウルが見逃されたことで激高しており、守備に戻っていなかった。だからこそ前線に1人残っており、見せ付けるかのように360°ダンクを決め、ファウルをコールしなかった審判に言ってはならない言葉を叫んでテクニカルファウルを受けている。暴言は褒められたものではないが、ファンは感情を爆発させるプレーを好む。
カルーソは自らのハッスルが演出した、この日のアリーナが一番盛り上がったプレーを「建物が揺れたね」と笑顔で振り返る。「ザックのダンクは素晴らしかった。ただの2点だけど、あれはコート上の僕らを刺激し、ファンにも良い影響を与える。エネルギーに満ち溢れた一発だった」
カルーソはここまでの自分の出来をこう語る。「得意のディフェンスはもちろん、オフェンスでもアグレッシブにプレーしようと心掛けている。チャンスが来たら、そこで躊躇しないことだね。ウチはアンセルフィッシュなチームだ。平均20得点を取れる選手が3人いるけど、彼らも空いている選手がいればパスを出す。お互いの信頼が、さらに大きな力を引き出している。僕たちは全員で戦っている。僕も含めてベンチから出る選手もたくさんの仕事ができる。得点してもしなくても試合にインパクトは与えられるしね」
レイカーズからフリーエージェントとなって移籍を選択したカルーソは、ブルズ躍進を支えるキーマンの一人となっている。彼は先日、JJ・レディックのポッドキャスト番組に出演して、今オフの決断について赤裸々に語った。彼は2ウェイ契約から自分を引き上げたレイカーズに恩義を感じており、再契約を結んで残留するつもりだった。しかし、魅力的な契約は提示されなかった。
「レイカーズを含むどのチームからも良い話はなくて、途方に暮れたよ。自分のためにも周囲の人たちのためにも、お金の面での安定は必要だったからね。そこにブルズから電話があり、彼らが僕をどう評価し、どうプレーさせたいと思っているかを聞いた。それは僕の持ち味だし、チームに貢献できる方法だと思ったよ。僕はレイカーズに同じオファーを出せるかと聞いたんだけど、答えはノーだった。それで僕は、ブルズに行くことを決めたんだ」
JJ・レディックは現役時代のシューターとしての抜け目なさと同じぐらいのトーク術で、カルーソからレイカーズのオファーが『2年1500万ドル』より低かったことを聞き出している。ブルズが提示したのは4年3600万ドル。カルーソはこれを受けて『3年3000万ドル』でレイカーズに交渉を持ちかけたが、これも蹴られた。赤いジャージーに着替えた彼が、今まで以上にハッスルするのも当然だ。
カルーソはスター選手ではないが、NBAでも最も優れたロールプレーヤーの一人であり、スーパースターを並べるチームがまさに必要とする人材だ。レブロン・ジェームズも彼を高く評価し、そして一緒にプレーすることを楽しんでいた。ブルズの快進撃を支えるカルーソの働きぶりを、レイカーズ関係者は喜びながらも、どこかほろ苦い思いで眺めているに違いない。