安藤誓哉、テーブス流河らとワークアウト「刺激になった」
内藤英俊。その名前を知る国内バスケットボールファンはあまり多くないかもしれないが、瀬川琉久、渡邉伶音ら『2006年世代』のプロスペクトの一人である身長187cmのポイントガードだ。
福岡市立西福岡中時代にエースとしてチームを全国優勝に導き、卒業後は兄の英真(福井ブローウィンズ)の後を追ってアメリカ・フロリダ州のIMGアカデミーに進学。今年度は同じフロリダのDMEアカデミーに転校し、2026年のNBAドラフト上位指名候補に挙げられるミケル・ブラウンJr.と切磋琢磨した。
内藤は4月初旬に行われた『ADIDAS NATIONS TOKYO U19 SPECIAL CAMP』にあわせて帰国し、久しぶりに国内でプレーを披露した。キャンプのラストに行われたオールスターゲームは不完全燃焼で終わったが、ワークアウトでは卓越したパフォーマンスを発揮し、国内外の選手・コーチと積極的に言葉をかわしリーダーシップをとっていた。全国選りすぐりの有望選手の中でも群を抜いた存在感を放った内藤は、イタリアで開催される『ADIDAS EUROCAMP 2025』の切符を見事勝ち取った。
DMEでの全課程を修了し5月19日に帰国した内藤は、地元福岡でワークアウトに励んだ後、出国前日に都内で行われたスペシャルワークアウトに参加。安藤誓哉、ハーパージュニアらBリーガー、直近の目標とするNCAA1部でプレーするテーブス流河らと肌を合わせた感想について、「自分の目指している場所との位置関係がだんだんわかってきて、刺激になった」と語っていた。
世界最高峰に苦戦するも果敢にチャレンジ
ADIDAS EUROCAMPは、アメリカ国外で唯一、公式に認可されたNBAドラフト前のショーケースキャンプ。今回のキャンプにもNBA全30チームのスカウト、アメリカ・ヨーロッパ各国のチーム関係者やエージェントなどが100名以上来場し、デリック・ローズ、ガーション・ヤブセレ、ゴラン・ドラギッチ、セルヒオ・ロドリゲスといった世界的スターも将来有望な若手たちを見守った。
内藤は滋賀レイクスの長谷川比源とともに、中国、カメルーン、ブラジルなど多彩なバックグラウンドを持つ『TEAM WORLD』の一員として、NBAドラフト指名候補選抜、オーストラリア選抜、ユーロリーグU18選抜と対戦。しかし一勝もすることができず、プレータイムも3試合平均11分30秒と限られた。「チームが勝てなかったことももちろんですが、あまり試合に出られなかったことがとにかく悔しいという一言に尽きます」とキャンプを振り返った。
キャンプに帯同したBANG LEE(SpaceBall Mag)は言う。
「ミニッツがもらえなくてとにかく悔しがってました。『チームが勝ってもちろんうれしいけど、楽しくない』って。彼は日本でゴー・トゥ・ガイ(チームの中心選手)として育ってきたこともあって、ピックアンドロールからの選択肢の大半が自分の1対1。ただ今回のキャンプのレベルで同じことができるかと言ったらできないわけです」
ショーケース特有のタイムシェアをネガティブにとらえ、集中力を切らした時間帯もあった。ただ、うまくいかない状況を変えるために、考え、チャレンジし続けられていた点をBANG LEEは評価した。
「『ペイントアタックしたら、その場にできるだけ長くとどまって判断しなさい』とアドバイスをしたら、ディフェンスが収縮したところでワイドオープンなチームメートにアシストを3回連続で成功させた。ダンクも演出しました」
内藤自身も「最初はベンチで何をやったらいいかがわからなかったですが、仲間とコミュニケーションをとったり、まわりを見ることはできました」と話している。
チームを指揮したマット・ブレイス(セブンティシクサーズアシスタントコーチ)は「彼のオンボールディフェンスはいい。マークマンをつかまえるのも早いし、相手を効果的にスローダウンさせて、味方に役立つことをしている」と内藤のディフェンスを評価。中国代表としてU19ワールドカップを戦い、NBAグローバルアカデミーも所属したシエ・リーヨンウェイ(上海シャークス)も「彼のプレースタイルがとても好きだ。ピックアンドロールが特にいい。アシストもうまいしビッグマンをよく使えていた」と話していた。
今秋よりD2の大学へ「自分のゲームメークでチームを良くしたい」
「自分がこのレベルで通用しなかったとは感じていません。この経験を必ず生かして、これからもっともっと上を目指していきたいです」と意気込む内藤の次のステップは、アメリカのカレッジ界。NCAA2部のオクラホマ・バプティスト大に進学し、結果を残し、上位チームへのトランスファーを目指す。
「日本では大きいほうかもしれませんが、アメリカでは自分が一番小さいことがほとんど。ポイントガードとして自分が良いゲームメークをして、どんどんチームをよくしていきたいです」
今回のキャンプで得た貴重な経験を生かし、内藤はさらなるステップアップを続けていく。