PJ・タッカー&ジミー・バトラー

ウイング寄りの選手を揃えるロスターのメリットを最大限に生かす

フィジカルトレーニングで鍛え抜くことのできる選手を優先する特有のカルチャーも含めて、近年のヒートは従来のポジション概念からは遠いロスター構成が目立つようになりました。ポイントガードとセンターという専門性の高いポジションの選手を重視せず、ウイング寄りの選手ばかりのチームは、ポイントガードながらシューター的にも振舞うカイル・ラウリーとサイズの小さいビッグマンであるPJ・タッカーを加えて、完成の域に入ろうとしています。

ウイング寄りの選手を揃えるメリットはスイッチしても関係なくマッチアップできることにあり、サイズに関係なくハードなフィジカルコンタクトを要求するヒートのディフェンスシステムでは重要な要素になっています。小さくてもカバー能力が高く、身体の巧みな使い方で守れる新加入の2人は、この特徴に合った選手であると同時に、ポイントガードとしてゲームメークの上手さをもたらすラウリーと、バム・アデバヨの負担が大きかったビッグマン寄りでプレーできるタッカーは、ヒートに足りなかった要素を補います。

またポジションを問わない対応ができることは、ローテーションを柔軟にします。タイラー・ヒーローやマーキーフ・モリス、そしてビクター・オラディポをポジション概念を考えすぎることなくベンチから起用できるため、チームとしての戦い方に幅が出ます。自分たちからアクションを起こして試合に変化を起こすのは指揮官エリック・スポールストラの得意技でもあり、柔軟かつ武器の多いロスター構成を使って、調子の良い選手を長く起用したり、シュート力の高い選手を並べたりという采配を可能にします。

ヒート

理想に近い選手を揃えたヒートですが、優勝を目指すにあたって気になるのはヤニス・アデトクンポやケビン・デュラントへの対応であり、直接対決をする際はアデバヨやジミー・バトラーがディフェンスに注力する必要も出てきます。昨シーズンは攻守にスター2人への負担が大きくなったことで、機能不全を起こしてしまったこともあり、チーム全体で戦う姿勢をもう一度思い出さなければいけません。

難しいのは通常の戦い方ではアデバヨとバトラー中心にオフェンスを組み立てれば効率的なのに対し、東カンファレンスのライバルとなるバックスとネッツ相手だと、他の選手を中心に組み立てる方がベターになることです。対戦相手に応じて主役となる選手を変更するのは一朝一夕でできることではなく、様々なケースを想定してシーズンを戦っていく必要があります。

個人の輝きで見ればアデトクンポやデュラントほどのスーパースターとは言えない一方で、アデバヨ、バトラー、ラウリー、オラディポとオールスタークラスを揃えた選手層があるだけに、対戦相手に応じて主役を入れ替える柔軟な対応が好ましいのが新シーズンのヒートです。ヒートらしさに溢れた理想的なロスターを作れただけに、大きな期待を持ってシーズン開幕を迎えます。