スコッティ・バーンズ

ドラフト1巡目4位指名のスコッティ・バーンズなど、各ポジションを補強

新型コロナウィルスの感染拡大により最も大きなダメージを受けたのがラプターズでした。ホームをトロントからタンパに移すことを余儀なくされ、さらにシーズン中には大量の離脱者が出るなど振り回され続けたことで、成績も東カンファレンス2位から12位まで急降下し、一転して再建モードへと突入することになってしまったのです。

長きに渡り『チームの顔』だったカイル・ラウリーが移籍を選んだのは大きな痛手でした。それでもその見返りとしてゴラン・ドラギッチとプレシャス・アチウワを獲得したことで、ポイントガードの穴を埋めただけでなく、懸念だったセンターにも有望株を加えています。4位と高順位だったドラフトでは、身長201cmで脅威の218cmのウイングスパンを持つ万能タイプのスコッティ・バーンズを指名し、各ポジションの補強に成功しています。

ロスターに7フッターは誰もいないものの、アチウワとバーンズに代表されるように、どんなポジションでも守れるウイングとビッグマンを揃えました。ベンチメンバーを見ても機動力を重視しているのは明らかで、渡邊雄太もその中の一人としてローテーションの一角を担ってきそうです。

昨シーズンはチームの持ち味だった強烈なディフェンス力が失われてしまったことが低迷の要因だっただけに、オフの補強は徹底してディフェンス力アップに動いたと言えます。ボールへの激しいアプローチとカバー&ローテを繰り返すディフェンスが復活すれば、成績は上がってくるはずです。

しかし、高度な連携を必要とするラプターズのディフェンスシステムは運動量だけで成立するものではなく、プレシーズンでは新加入選手のほとんどがポジションミスやローテミスを繰り返しており、かつての練度を取り戻すのは簡単ではありません。優れた読みでピンチの芽を摘みまくっていたラウリーがいなくなったこともあり、ラプターズらしい組織ディフェンスの再構築には時間がかかります。

ラプターズ

オフェンスはパスカル・シアカムが中心になるものの、フィニッシャータイプのウイングだけに、個人に任せるのではなくチームオフェンスを構築してシアカムへ効果的なパスを届けたいところです。しかし、センターとしてプレーメークに絡むマルク・ガソルが移籍してから、オフェンスの起点作りに苦労しており、両サイドへと展開されるパスが少ないことから窮屈なオフェンスになりがちな弱点を抱えています。

プレシーズンでは、これまでコーナー担当として3ポイントシュートとドライブやカットプレーを担当していたOG・アヌノビーが、トップ付近でボールに絡む回数を増やしており、逆サイドへ展開するパスも出していました。精度が低く、ミスに繋がってもいますが、アヌノビーやバーンズがパスの中継役として機能するかどうかはキーポイントになりそうです。

昨シーズンに急降下した原因はコロナ関連で大量の離脱者が出たことでしたが、その選手たちが復帰した後に盛り返せなかったのも印象的でした。選手個々に高度な判断を求める戦術を採用しているため、歯車が一つ狂うとチームとしての強みが消えてしまいます。そのリスクは、絶対的なリーダーであり戦術の調整役だったラウリーがいなくなった新シーズンの方が高くなります。シーズン前半は一つひとつの歯車を調整していく作業を繰り返し、その後であらためて評価したいチームとなっています。