「瞬間、瞬間にプレーを積み重ねていくところを見ていただきたい」
バスケットボール女子日本代表は9月27日からヨルダンで開催されるアジアカップ2021に向け、第9次強化合宿を実施している。開幕まで2週間となった昨日、トム・ホーバスに代わってチームの指揮を執る恩塚亨が取材に応じた。
恩塚ヘッドコーチは「自分たちがやるべきこと、自分たちの強みをポイントにして戦い抜くというビジョンの共有と落とし込みができていて、その強化を始めている段階」という理由で、現在のチームの仕上がり具合を『70%』と語った。
東京オリンピックでの日本代表はトランジションバスケットから3ポイントシュートを多投するスタイルで銀メダルを獲得した。今回の代表でも3ポイントシュートは一つの武器となるが、大会が迫っている今は効率を優先すると恩塚は言う。「全員が3ポイントシュートを打つのはこれからも日本が目指していくべきスタイルだと思っています。一方で私たちは期待値の高いシュートを打つということを優先しているので、期待値の高い選手が積極的に3ポイントシュートを打ち、そこまで期待値を上げられない選手は他の形でサポートしようと考えています」
さらに恩塚ヘッドコーチは「世界一のアジリティを追求したい」と力強く語った。アジリティは機敏さや俊敏性などスピードを指す言葉だが、ここでの意味は肉体的な部分に留まらない。「原則を生かして、瞬時にシンクロして協力してプレーできるバスケットを目指します。そのアジリティはただの速さだけでなく、いろいろな状況により早く、的確に適応していくこと。瞬間、瞬間にプレーを積み重ねていくところを見ていただきたい」
恩塚ヘッドコーチはこのように明確な目的とビジョンを持ってチーム強化を進めている。そして、これらすべてに共通することだが、最も大事にしていることは選手の的確な判断力と主体性だ。
「チャンスを生かして攻めずにコーチに言われたプレーを選択してしまうとか、考えずにプレーするとチャンスの機会損失をしてしまう。フリーランスにしすぎてカオスになってしまったり、ナンバープレーをやり過ぎてロボットになってしまう。そのどちらとも言えない状況で選手自身が考えてプレーできるという仕組みを私たちがモデルとなって作りたい」
メダリストとなった今、日本は世界から追われる立場となった。キャプテンの林咲希や赤穂ひまわりなど東京オリンピックで活躍したメンバーも今回の代表チームに参加しているが、その林が最年長と今回は若手選手が多く選出され、決してベストメンバーとは言えない。それでも恩塚ヘッドコーチは「優勝です。それ以外は考えていない」と、アジアカップ5連覇だけを見据えている。