今オフ、琉球ゴールデンキングスは大型補強で注目を集めたが、何よりも一番のインパクトは桶谷大ヘッドコーチの就任だ。bjリーグ時代のチーム創世記、2008年から4シーズンに渡って指揮を執り、リーグ優勝2度と申し分のない成績を残しているが、9年ぶりの琉球復帰は多くの人々にとって青天の霹靂だった。西地区の強豪ではあるが3シーズン連続でセミファイナル止まり。ここから脱却してのファイナル進出が至上命題で、就任1年目から大きな大きなプレッシャーがかかる指揮官に、古巣復帰を決めた思いを聞いた。
「なぜ自分にオファーが来たのか自分の中で納得したかった」
──2012年以来のキングス復帰となりますが、琉球からオファーを受けた時の率直な気持ちを教えてください。
ただ驚きでした。まさか自分に9年越しでオファーが来るとは思っていなかったです。正直キングスを離れた後、bjリーグで岩手ビッグブルズ、大阪エヴェッサでヘッドコーチをやり、Bリーグになってからそこまで良い成績を残せていません。昨シーズンはB2の仙台89ERSだったので、B1のチームは自分のことを見ていないと思っていました。それが、トップチームの一つであるキングスから声がかかったので、本当に驚きでしかなかったですね。
オファーを受けて、気持ち的には即決でした。ただ、なぜ自分にオファーが来たのか自分の中で納得したかったので、その話し合いはかなりありました。ここ4年連続でキングスは西地区1位と実績を残していながらコーチを代えます。何を必要としてコーチを代えるのか、自分を選んでくれたのか、そこが自分の中で腑に落ちたのでオファーを受けました。
──その腑に落ちた部分、自分が求められているところはどこでしょうか?
一言で言うのはなかなか難しいですが、キングスにはウイニングカルチャーがしっかり根付いています。それを続けていくには、組織の人たちが同じ方向を向き続ける、同じ価値観を持ち続けるのが一番重要です。チームのスタッフが増え、どんどん能力の高い選手が揃ってきた中でもそれを維持していく上で、統率していくだけではない自分の経験値を評価してもらいました。
──伊佐勉さん、佐々宜央さん、藤田弘輝さんと、これまで琉球を率いたヘッドコーチは桶谷コーチにとってよく知っている間柄だと思います。前任者からの継承は意識しますか。
その意識はありますね、ムーさん(伊佐勉)、佐々(宜央)コーチ、藤田(弘輝)コーチとみんなキングスの良いところを残してくれてきたと思っています。そこを自分もしっかり残していきたいです。そして、『現状維持では退化』とよく木村(達郎、代表取締役社長)さんも言うように、現在進行形で今のキングスのバスケットにプラスアルファをもたらしていかないといけないと思っています。
アルバルク東京との開幕戦は「ただの開幕戦ではない価値がある」
──アシスタントコーチ陣も変わりましたが、それぞれどんな役割を期待していますか。
栗野譲に関しては、信州ブレイブウォリアーズで(勝久)マイケルヘッドコーチの下でディフェンスを中心に組織的なバスケットをすごく勉強してきたと思います。彼のすごく人懐っこくて、どんな人に対してもフレンドリーに接してコミュニケーションを良く取れるところはコーチ陣だけでなく選手たちにとってもプラスになります。選手個々のワークアウトの指導にも期待しています。
東山真は、20年近くアメリカにいた知識の宝箱です。それこそ僕がアメリカの大学でマネージャーをしている時、彼も同じタイミングでマネージャーをしていて、彼から電話がかかってきてアメリカのバスケット、日本のバスケットの将来について話をしました。このタイミングで彼が日本に帰ってきて、縁があってキングスで一緒に仕事ができることになりました。彼のネットワークと知識はバスケットボールに限らず球団にいろいろなプラスを持ち込んでくれると思います。
森重貴裕が残ってくれているのも大きいです。前回、僕がキングスで最後に指揮を執ったシーズンで、彼はインターンのような形でチームを手伝ってくれていました。そこからチーム離れてからも交流はずっとありました。今までのキングスの歴史、伝統を教えてくれる彼がいるのは頼もしいです。
──今シーズン初戦は先出し開幕となり、沖縄アリーナで優勝候補筆頭のアルバルク東京と対戦します。
Bリーグ初年度の開幕ゲームで対戦した時、アルバルクはエリート、キングスは雑草というサブタイトルをつけられていました。そこからの5年間、キングスがどう成長したのかを見せないといけない試合になります。当時の恵まれていない環境から今は沖縄アリーナができて、代表選手がいるチームになりました。ただの開幕戦ではない価値があると思っています。
──先出し開幕戦に続くホームゲームは川崎ブレイブサンダース戦で、序盤から強豪とのタフな試合が続きます。
最初に強いチームと対戦した方が絶対に良いです。プレシーズンも含めて強い相手とやることで課題がより出てくる。それをどんどん改善して、どんな相手にも通用するものを残していければチームは強くなります。その過程でいろいろな衝突も起こるでしょうが、それを乗り越えていくことで信頼関係が築けていく。だから、強いチームとは早い段階で対戦することを望んでいます。
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