パティ・ミルズ

デラベドバ、ミルズ、イングルスによるガード陣の展開力が強み

オリンピック開幕前にFIBAが発表したパワーランキングでアメリカを抑えて1位に挙げられたのがオーストラリアでした。セブンティシクサーズのベン・シモンズが辞退し、オールスタークラスの選手こそいないものの、国内組も含めて一貫した戦術で戦えるチームとなっており、高い完成度を誇っています。

オーストラリアの強みはマシュー・デラベドバ、パティ・ミルズ、ジョー・イングルスで構成するガード陣の展開力で、ベンチにもNBAプレイヤーが控えており、試合開始から終了までコートを広く使ったオフェンスを構築します。アメリカに比べると選手のランクは落ちるにしても、むしろスター選手ではないからこそ球離れの良さがあり、チーム全体のパッシングで崩すことができます。

またディフェンス3秒ルールやドライブ時のコンタクトに対するファウルの基準などNBAルールとの違いもあり、国際試合ではディフェンスを引き離して打つ3ポイントシュートの重要性が高まりますが、鮮やかなパッシングから高確率で決めていくだけでなく、プルアップ3ポイントシュートの精度の高さもオーストラリアの強みです。特に今シーズンの3ポイントシュート成功率が45%を超えるイングルスは、身体能力ではなく巧みな駆け引きでシュートチャンスを作ってくるタイプで、各国のディフェンダーを手玉に取ることでしょう。

NBA同様のプレーを見せるイングルスに対して、エース格になるミルズは代表戦では輝きを増し、オールスタークラスのスコアラーへと変貌します。ロンドン五輪では21.2得点で得点王に、リオ五輪でも大会2位の21.3得点を記録している生粋のスコアリングガードです。NBAよりも距離の短い3ポイントラインはミルズにとってはイージーシュートになるだけでなく、シュートフェイクからのスピード突破も効果的に決まります。エキシビションマッチではアメリカ戦でケビン・デュラントを1on1で抜き去るキレを、アルゼンチン戦では劇的なブザービーターを決める勝負強さを見せ、自身4度目のオリンピックを前に好調な仕上がりを感じさせます。

ガード陣だけでなく、どのポジションでもシュート力が高いことはオーストラリアの特徴になっており、各ポジションに実力者を揃えます。その中でマティース・サイブルはディフェンスの切り札として機能し、オフェンス面でもコーナーから3ポイントシュートを決めるだけでなく、的確なカッティングでインサイドでも得点が期待できます。ミルズ同様に代表戦ならではのプレーを披露してくれそうです。

オーストラリアの初戦は25日のナイジェリア戦ですが、エキシビションマッチでは主力抜きでも大勝を収めました。ハードな個人ディフェンスをしてくるナイジェリアのプレッシャーを、オーストラリアの巧みなチームオフェンスがかわしていく素晴らしい内容でしたが、これを本番でも再現し、そのまま優勝へ走り抜けられるのか注目されます。