比江島慎

「我慢して、自分たちのリズムに持ってこれたところは良かった」

バスケットボール男子日本代表はベルギーとの国際強化試合に70-73で敗れた。終盤にリードした場面もあり、スコアが示すように互いの力は拮抗していた。それだけに、9-25と先行された第1クォーターの立ち上がりの悪さが悔やまれる。

比江島慎も「何より出だしのところで相手のペースに持っていかれた」と試合の入り方が悪かった点に目を向ける。「自分もスタメンで出ている中でターンオーバーで入ってしまった責任もあるし、反省しなきゃいけないところは多いと思う。本番でこういった展開になってしまうと追いつけないと思うので、今日の試合を糧に修正していきたい」

特にペイントタッチが求められる比江島は相手の長い手足やフィジカルの強さに苦戦した。緩急を使ってもフィジカルで抑えられ、ディフェンスを引きつけた際には2、3人の包囲網をかいくぐれずにパスに手をかけられた。比江島は言う。「相手の手がすごく長かったのと、アクティブに手を動かしていたところで、最初はつかまってしまった。慌ててしまった意識はないけど、今まで通っていたようなパスが通らなかったので、プレッシャーが来てもキープしてパスコースを見つけることが必要です」

以前の日本であれば、こうした序盤の大量ビハインドを覆せずにそのまま敗れる展開も少なくなかった。しかし、第2クォーター以降に立ち直った日本は第3クォーターを終えた時点で52-52の同点に追いついた。「チームでしっかり我慢して、自分たちのリズムに持ってこれたところは良かった」と、比江島もチームのカムバックした底力に手応えを得ている。

比江島慎

個で打開できる力を持つことをあらためて証明

比江島はシェーファー・アヴィ幸樹、田中大貴に次いで長い27分34秒の間コートに立ち続け、11得点2アシスト2スティールを記録した。ベルギーについて「フィジカルは本当にすごくて、技術も個人の能力も高くワールドクラスだった」と称賛した中で、果敢にアタックし続けた比江島の推進力は評価に値する。実際、相手のファウルがこんだこともあり、6本のフリースローを誘発し、そのすべてを成功させた。

大黒柱の渡邊雄太が足をつり、張本天傑が相手の肘を側頭部に食らってロッカールームに下がらざるを得ない状況に陥った最終クォーターは、特に比江島の果敢なアタックが光った。「雄太もいなかったですし、あの時間帯は相手のファウルもこんでいたので、力強くドライブして、フィニッシュまで持って行かないといけなかった」

チームのリーディングスコアラーがいなくなれば、「自分がやらねば」の意識が芽生えるのは当然だ。比江島は「雄太がいなくなったからとかではなく、最初からそういう意識はあった」と、渡邊の離脱がスイッチになったことを否定した。それでも「ファウルをもらえてしっかりフリースローでも得点できたので、ああいうプレーを最初からしなければいけなかった」と、試合を通じてアタックし続けることの大切さを訴えた。

ただ、渡邊がファーストオプションである以上、ボールを持つ時間が長くなるのは必然だ。クリエイトするタイプの選手が合わせに回ることは容易ではない。それでも比江島は自身の良さを生かしつつ、ケミストリーを構築できると力強く答えた。

「雄太がボールを持つ時間が長い時には、しっかり合わせることを意識します。マークが厳しくなった時に僕がもっとアグレッシブにドライブすることが必要で、共存は必ずできると思う」

オリンピック本番ではサイズやフィジカルなど、すべてにおいて世界トップクラスの相手とマッチアップすることになる。世界で戦う八村塁や馬場雄大、そして渡邊だけでなく、個で打開できる存在が出てこなければ悲願の1勝は難しい。比江島にはその役割が求められる。