クラブ経営体制が変わった東京エクセレンス「地域で最も愛されるクラブ」への挑戦

2018/08/06
Bリーグ&国内
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東京エクセレンス

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

B2ライセンスを取得できない状況での経営改革

8月2日、東京エクセレンスはオーナー会社とクラブ経営体制変更に伴う記者会見を実施した。東京EXは2012年8月に設立、2013-14シーズンからNBLの2部にあたるNBDLに参入し、3年連続で優勝するとともに、天皇杯では2014年にベスト16、2015年にベスト8と結果を出してきた。

2016年秋スタートのBリーグ創設に伴いB2(2部)に振り分けられたが、ここでトラブルに見舞われる。ホームアリーナ要件を満たしていないとしてB2ライセンスが交付されず、2017-18シーズンから戦いの舞台をB3に移すことになった。

ホームアリーナは板橋区の小豆沢体育館だが、ライセンス交付基準となる3000の観客席がない。板橋区は当初掲げていた「将来的に3000人収容のアリーナ建設に向けて調査・調整を開始する」という意思を撤回しており、これが現在も東京EXのネックとなっている。

新たなオーナー企業となるのは株式会社加藤製作所。1895年創業と歴史のある、パワーショベルなどの荷役機械、産業機械メーカーであり、東証一部上場企業だ。創業の地も、現在の本社があるのも品川。会見で真っ先に質問されたのもホームアリーナ、本拠地の問題だった。「これを機に板橋から品川に移転するだろう」と周囲が考えるのは自然な流れである。

しかし、東京EXの向井昇代表は「具体的には言えないが、B1ライセンスに足るアリーナの話もしています。ホームタウン変更もあるかもしれません」と前置きしながらも、こう断言した。「東京EXにとって小豆沢体育館は規模こそ小さいが、選手とファンが一体となれるかけがえのない場所。あの熱気と声援は何物にも代えがたいエクセレンスの財産。今後もホームゲームはできる限り小豆沢体育館で開催していきたい」
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「人材育成、社会貢献に共感するものがあった」

アリーナ問題が解決しない限り昇格できない。それでもホームアリーナは自分たちだけで解決できる問題ではないし、構想があったとしても形になるのは何年も先。そこで東京EXは「急がない」という選択をした。オーナー企業が付いたことで大型補強を望むファンの意見にも向井代表は釘を刺す。「プロクラブである以上、勝利は重要ですが、闇雲に資金を投入するのではなく、現段階ではチーム強化と同等かそれ以上にフロントの強化、業務の効率化に力を入れたい」

トップリーグで戦う資格を持ち合わせていない東京EXは、その準備が整うまでに他の部分に目を向けた。フロントの強化、経営の安定とともに目指すのは地域貢献活動の拡大だ。「B3に在籍しているからこそできることがあるのではないか。しっかりとした経営基盤の構築をしたい。これができないと目指したいことを目指せない。東京のバスケットボールクラブといえば『東京EX』と言ってもらえるような、誇りを持てるクラブになること」と向井代表は東京EXの将来像を語る。

「プロクラブとして地域、ファン、スポンサーを始めクラブを支えてくださる皆さんの役に立ちたい。そういう意味だとアルバルク東京さんやサンロッカーズ渋谷さんは企業母体のチームです。僕らは僕らでこういう形で一部上場企業のオーナーを迎えることができましたが、スモールクラブに変わりはない。僕らにしかできないことをクラブ運営に反映させていきたい。それが結果として『東京といえば東京EXだよね』ということにつながっていけばと思います」

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「人材育成、社会貢献に共感するものがあった」

地域密着、社会貢献はプロスポーツクラブの大事な役割。ただ、如何せん地味でもある。東京EXはそれで良くても、意気込んでバスケットボール界に入って来る加藤製作所からしたら、『トヨタ自動車のチーム』や『日立のチーム』と東京を舞台に優勝争いをする野心が肩透かしを食らう形なのではないか。しかし、加藤製作所の加藤公康社長の考えはそうではなかった。「早期にトップカテゴリーに上がれるように期待するとともに、目一杯バックアップしたい」と約束すると同時に、見据えるのは社会貢献だ。

「2年後の東京オリンピックが創業125年。本業以外で上場企業として社会貢献ができないかと検討していたところでご縁をいただいた。バスケットボールクラブの運営は広義の社会貢献にあたる。クラブの活動を1年間みて、会社運営にとって重要である人材育成、社会貢献に共感するものがあった。それでオーナーになる決断をした」

その地域密着、社会貢献の第一歩が品川の本社敷地内にある工場の一つを東京EXの専用バスケットボール場へと変えることだ。24時間、365日使用できるフルコートの体育館を東京EXは持つことになる。トップチームの選手の人間形成とともに、U-18とU-15のチームを早期に立ち上げるべく東京EXは動き出す。

東京EXの向井代表は言う。「東京にいくつもあるクラブの中でどう差別化を図っていくか。何かを競うのではなく、その地域で最も愛されるクラブになること。板橋区においては今すでに最も必要とされるクラブだと思うし、もっとそうなりたい。そうすることが責務で、子供の笑顔であったり応援する人が楽しめる空間を提供するのが使命。なかなか具体的に差別化は難しいが、言葉にできない東京EXのカラーとか、自分たちのやってきたことを信じて伸ばしていきたい」

新たなホームアリーナを手に入れてのB2復帰、B1昇格、そして優勝争いという夢が実現するのはまだ先のことになるが、東京EXにはまた別の夢がある。『スポーツを文明から文化に!』という活動理念を形にするために、新体制となったチームは第一歩を踏み出す。