ジョン・ウォール

アリーナで飲料水を配給、オーナー一家も積み込みを手伝う

全米を襲った記録的な寒波で大きな被害を受けたのは、寒さに不慣れな南部だ。中でもテキサス州ヒューストンは被害が大きい。ヒューストンに本拠を置くロケッツはホームゲーム2試合が延期となった。2月22日のブルズ戦は行われ、電力需要の急増による停電もほぼ改善されたようだが、水道管が凍結により破裂することでの断水は今後もしばらく続きそうだ。

ロケッツで長くプレーしたジェームズ・ハーデンが危機に陥ったヒューストンの援助に奔走したことは大きな話題となった。ただ、ハーデンだけが活動したわけではない。

試合が行われない間、ホームアリーナのトヨタ・センターではロケッツによる飲料水の配給が行われた。新型コロナウイルスの感染防止のためにドライブスルー方式となり、人々は自動車でアリーナに来れば、トランクにミネラルウォーターが詰み込まれた。準備された水は3000家族分。ヘッドコーチのスティーブン・サイラス、オーナーを務めるティルマン・フェルティッタの妻や息子たちも水の積み込みを手伝った。

サイラスの自宅も電気と水道が止まり、不自由を余儀なくされた。『Houston Chronicle』の取材に対してサイラスは、「電気と水が3日間使えなかった。実際にそうなると気が狂いそうだったよ。そして今もまだ困っている人たちがどんな思いをしているかを考えた」と話す。「私はまだヒューストンに来て数カ月だが、ここには人々の連帯がある。何かのトラブルが起こればすぐに人々が集まり、団結して逆境に対抗するんだと言う。私はその一員になれたことを誇りに思う」

ヒューストンのシルヴェスター・ターナー市長も飲料水の配給を手伝い、「ロケッツは困っている街の人々を助けようと行動を起こしてくれた。コート上だけでなく、もっと多くの場所でチャンピオンになれる」と感謝を語っている。

ウィザーズ在籍時にはワシントンDCのコミュニティと強固な結び付きを築いたジョン・ウォールの姿勢は、ロケッツに来ても変わらない。彼はヒューストンの飲食店に食事の支給を呼びかけ、寒波の被害者へ500食を提供する『ハブ』の役割を果たした。

ただ興行としてバスケの試合を行うだけでなく、街がピンチの時はもちろん、平時でも地域との結び付きを作り、様々な活動を行う中でそれを深めていく。こうした取り組みが「ヒューストンにロケッツは必要不可欠なもの」というカルチャーを熟成していくことになる。