組み合わせ結果に「私は山場を動かしたい(笑)」
宮城県予選決勝で東北学院を109-70で下した明成高校は、9年連続14回目のウインターカップ出場を決めた。
ウィザーズの八村塁を輩出し、その八村が在籍した2013年から2015年には史上3校目となる3連覇を達成するなど、明成は全国でも有数の強豪校として知られている。そんな明成だが、新型コロナウイルスの影響を受け、佐藤久夫コーチも「思うように仕上がっていかない」と現在のチーム状況を語った。
「ものすごく楽しみなチームなんですけど、まだ私と彼らの考え方が一緒になれないというか。私が考えるバスケットボールのゲームの運び方が彼らにまだ伝わっていないので、もう少しというところだと思います」
コロナの影響で大きかったことは対外試合を十分にこなせなかったことだ。「我々のチームだけではない」と、佐藤コーチは前置きするも「いろいろな制約があって思い切った練習試合ができなかった。だから人から見られることにも違和感があるというか」と、試合勘を養えなかったことを懸念している。
選手にとって一つの試合、一つの大会は結果を残すという意味で目標に設定しやすい。特にウインターカップは3年生にとって集大成となる大会であり、インターハイが中止となったことでさらにその価値が高まったと言える。だが、佐藤コーチは大会の結果ではなく「これまでの積み重ね」が最も大事と力説した。「彼らは大会だからヒーローになろうという強い願望もあると思います。ただ、私はその大会だけが自分たちのバスケットじゃないと思っています。毎日毎日のこの練習の積み重ねで大会があるということで、大会だからどうだということではなく、積み重ねたものを大会の中で出していきたいと考えています」
明成は昨年の覇者である福岡第一と同じ山に入り、お互い順当に勝ち進めばベスト8で激突することになる。佐藤コーチは組み合わせの山と山場を掛け、冗談交じりに「私は山場を動かしたい(笑)」と語った。「正直なところ、お互いにこんなところでやりたくない。どっちみちどのチームも優勝を狙って頂点を目指すのであれば、自分たちより力があるチームと当たる山場を迎えます。その山場を動かして、自分たちのほうに引きつけたいです」
山崎への大きな期待「結果を出してほしいプレイヤー」
佐藤コーチは冒頭で今年のチームを「楽しみなチーム」と評したが、それは身長190cmを超える長身の選手が多く集まったことが大きい。「私のところに集まってくる選手たちはサイズのない選手が多かったです。本当に大きい選手が欲しい欲しいと思っていたところ、3年生はある程度サイズが大きい選手が集まってきて、今までに私が取り組んできたことがないバスケットボールをやってきました。彼らに期待するとともに、私の指導力を見る大きな機会でもあるのかなと思っています」
中でも大きな期待が懸かるのが、199cmの長身ながらアウトサイド中心にプレーする山崎一渉だ。ギニア人の父と日本人の母を持つ山崎は八村にあこがれて明成の門を叩き、日々成長を実感している。佐藤コーチの「結果を出してほしいプレイヤー。彼の結果次第」という言葉からもその期待の高さがうかがえる。
実際、練習中には何度も時間を止め、「頭が固い」、「打ち気が足りない」、「良い子のバスケをやめろ」など、メンタル面でまだ弱さの残る山崎に対して厳しい言葉を浴びせていた。
山崎だけでなく、菅野ブルース、山崎紀人といった主力は2年生で、明成は下級生が主体となるチームだ。それでもキャプテンの浅原紳介など、チームを支えているのは3年生であり、佐藤コーチも「3年生のまとまりに2年生がまだ融合できていない」と苦言を呈した。
「技術的にはよくやれますが、粘りとかスポーツの一番根底にある部分、それが2年生はまだ甘いです。このコロナ禍で3年生が自分たちで計画して、下級生をリードしてきました。2年生は3年生が頑張って僕らを引っ張ってくれたと受動的になっています。その辺がガッと噛み合ってくれば、もっと面白くなってくるんじゃないでしょうか」
3年生が支え、2年生がついていく。これは普通のことかもしれない。だが、絶対的エースの山崎ら2年生にはチームを背負う覚悟が求められる。彼らが受け身ではなく、能動的に行動できるようになれば、明成はさらにワンステップ高いステージへと上ることになる。