スタメン落ちにも屈せず「チームに激しさを注入する」
バム・アデバヨは「ウチらしい勝ち方だっただろう!」とご満悦だった。ヒートは3連敗中で、前の試合で足首を捻挫したジミー・バトラーが欠場し、敵地で難敵のティンバーウルブズと対戦する。マイナス要素ばかりで勝機は薄いかに見えたが、こういうピンチでこそ奮い立つのがヒートというチームだ。
ロースコアの展開に持ち込んだヒートは12点リードで前半を折り返すも、第3クォーター途中に6分半無得点が続いて一気に逆転される。我慢勝負の展開で、この大きな流れがウルブズに行ってしまったのは致命的かと思われたが、ヒートはここからさらに粘りを見せた。
得点源のバトラー抜きで頼りにしたいアデバヨはフィールドゴール11本中3本成功の9得点と不発。彼は開幕からここまでフィールドゴール成功率が40%を切っているが、「シュートがいつも決まるとは思っちゃいない」と気にしていない。「シュートスランプは誰にでも起こるけど、僕は得点するだけの選手じゃない。オールラウンドにいろんな仕事でチームに貢献できる」との言葉通り、ペイントエリアを守って7リバウンド7アシスト3ブロックを記録し、ヒートの粘り強さを支えた。
その代わりにオフェンスを牽引したのはタイラー・ヒーローで、26得点を記録。それでも第4クォーター残り9秒、2点ビハインドという場面でタイムアウトを使った指揮官エリック・スポールストラが指示したプレーは、ヒーローを囮に使うものだった。テリー・ロジアーのバックスクリーンから飛び出したのはニコラ・ヨビッチ。バトラー欠場によるスタメン変更に伴い、今シーズン初めて先発から外れていた選手だ。
デザインされた通りに抜け出してゴールへと走るヨビッチに、ダンカン・ロビンソンがタイミング良くパスを合わせる。ニキール・アレクサンダー・ウォーカーが追いかけるも間に合わず、伸ばした腕がファウルとなって、バスケット・カウントに。ヨビッチはこのボーナススローも沈めて、ヒートが土壇場で95-94と逆転し、このスコアで勝利した。
タイラー・ヒーローはこの場面を「僕で勝負してくると思ったんだろうね」と笑顔で振り返った。殊勲のヨビッチは「スポールストラが素晴らしいプレーを考え、僕には『チャンスだぞ』と言ってくれた。ダンカンはパスを出すと言ってくれたし、タイラーからは迷うなとアドバイスをもらった。こうしてフリーでシュートを決めることができた」と話す。
ヨビッチはスタメン落ちを伝えられても「準備しておけと言われたから、その通り準備していた」と自分の仕事を忘れなかった。「僕はこのチームで一番の年下だから、チームに激しさを注入できる選手でなければいけない。そうやってチームに貢献できることを示したかった」
ゲームウィナーを決めたことについては「良いパスが来ただけさ」と素気なく語るも、最後のプレーを託されたことに対しては素直に喜んでいる。「自分の努力が理解されたと感じている。チームメートからの信頼は他の何よりも重要なことだ」
21歳のヨビッチが勝負を決める活躍を見せたことを、アデバヨはチームリーダーとして大いに喜んだ。「開幕から浮き沈みの激しい数試合を経験しながら、あいつは自分らしくあろうとしてきた。『準備さえちゃんとできていれば、慌てる必要はない』というのが僕から彼へのメッセージだった。ようやく成功を収めてくれてうれしいし、こういう勝ち方こそヒートらしい。彼を誇りに思うよ」