プレーオフで結果を出し、『トレードの駒』返上
『バブル』での8戦無敗という成績でシーズンを終えたサンズは、オフにも存在感を発揮している。トレード解禁日にクリス・ポールの獲得を決めると、フリーエージェント市場ではジェイ・クラウダーをチームに迎え入れ、ジェボン・カーターとの契約延長に成功した。
バックコートにデビン・ブッカーとクリス・ポール、ウイングにミケル・ブリッジズとクラウダー、センターにはディアンドレ・エイトン。セカンドユニットにはキャメロン・ジョンソンにカーターと『バブル』で自信を付けた若手がいる。優勝を争うには選手層が少々物足りないが、『バブル』のチームの勢いに成熟さを加えた新生サンズになることが期待できそうだ。
クラウダーにとって、今回の契約は大きな勝利だ。フィジカルが強く3ポイントシュートも打てるロールプレーヤーとして評価はされたものの、頻繁な移籍を余儀なくされてきた。彼が求められての移籍というよりは、別にメインとなる選手がいるトレードの交換要員にされ続けてきたのである。本当に価値ある選手であれば、簡単には放出されない。『ロールプレーヤーとして有用ではあるが、他の選手で代えが効く』というのがクラウダーの評価だった。
だが、今回は違う。昨シーズン途中に加入したヒートにフィットし、フィジカルなディフェンダーとしての能力を発揮。特にプレーオフのカンファレンスセミファイナルでバックスを撃破できたのは、ヤニス・アデトクンボを相手にクラウダーがタフな戦いを演じて、封じ込めたことが大きい。NBAファイナルのレイカーズ戦ではレブロン・ジェームズやアンソニー・デイビスともマッチアップし、敗れはしたが今のリーグを象徴する選手と渡り合う能力を示した。
相手のエースを封じるウイングのタフなディフェンスは、安定して勝つチームには欠かせない。それができる選手だと評価されたことで、彼は3年3000万ドル(約32億円)という契約を手にした。プレーオフで見せたようなパフォーマンスを続ける限り、そう簡単にトレードに出されることもないはずだ。評価を得るまでに紆余曲折、様々な苦労を積んだクラウダーだが、まだ30歳。自分を高く評価してくれたサンズで、今まで以上にオールラウンドな持ち味を発揮するはずだ。