アイザイア・マーフィー

昨シーズン後半、特別指定で加入した大学生たちの活躍ぶりは大きなインパクトを与えた。その彼らと新人王を争う即戦力ルーキーとして紹介したいのが広島ドラゴンフライズのアイザイア・マーフィーだ。アメリカの短大であるピマコミュニティーカレッジ在学時には八村塁とともに2017年のU19ワールドカップを戦い、その後はイースタンニューメキシコ大に編入し、過去2シーズンは先発としてNCAA2部を戦っていた。将来の代表を担う逸材として楽しみな196cmの大型ガードに、今シーズンへの意気込みを聞いた。

「ここには自分の成長に必要なものが揃っています」

──沖縄出身ですが、その後いつアメリカに渡りましたか。

3歳の時にアラスカ州アンカレッジ移住して、10歳か11歳まで暮らしました。その後、青森の三沢に引っ越しました。沖縄については明確な記憶は残っていないですが、U19代表でチェコ代表と強化試合を行うため沖縄を訪れた時に懐かしい感覚はありました。高校1年生を終えた時に三沢からアリゾナ州のツーソンに移り、これまでアメリカで過ごしてきました。

青森は母の地元で、今でも親族が多く住んでいます。僕が日本に来ることに驚いていたし、「広島は遠すぎて見に行けない」と言われました(笑)。でも、プロバスケ選手のキャリアを重ねていく上で広島が最高の場所になると思っています。

──日本バスケ界と接点が生まれたU19代表入りのきっかけを教えてください。

短大の1年目を終えた夏、母がJBA(日本バスケットボール協会)関係者に僕のハイライト映像を送ったのが代表に入るきっかけになりました。短大を終えた時点で、一度はBリーグ行きを真剣に考えたんですが、両親は大学の学位を取ることも望んでいました。僕もそれは大事なことだと思っていたので、編入することを決めました。イースタンニューメキシコ大学での2年間も楽しんでプレーでき、いろいろと成長することができたので、良い選択だったと思っています。

──複数のチームからオファーがある中、広島を選んだ理由を教えてください。

広島を選んだのは、自分がより良い選手へとなるために最適のチームと思ったからです。まず、日本で最もレベルの高いB1での競争は僕にとって大きな意味を持ちます。広島は、このリーグで強い存在になろうと野心に溢れています。ここには自分の成長に必要なものが揃っています。

──広島ではどんな役割を担うことになると思いますか。

大学ではシューティングガードとしてプレーしていましたが、広島ではそれに加えてコンボガードとしての役割も担うことになると思います。僕の持ち味は、間違いなく多才であることです。身体能力には自信があって、攻守において貢献できると思っています。目標はインサイドに切れ込み、アウトサイドシュートも打てるオールラウンダーになること。もちろん、サイズのアドバンテージは生かしていきたいです。

アイザイア・マーフィー

「新人王になって、チームをプレーオフに導く」

──ちなみに、好きな選手であったり、プレーを参考にするような選手はいますか。

僕にとって一番のアイドルはコービー・ブライアントです。僕が小さい時、彼はアフロヘアーでシャック(シャキール・オニール)と一緒にプレーしていて、その時から大好きです。セルティックスを破ったファイナルは今も思い出に残っています。彼のようなプレーを見せたいです。今の選手だとジェイソン・テイタム、カワイ・レナード、ポール・ジョージといったスキルのあるウイングプレイヤーが好きですね。

──個人として、チームとしてどんな目標を設定していますか。また、Bリーグのレベルに適応するための鍵はどんな部分にあると考えていますか。

個人としてはルーキーなので新人王になって、チームをチャンピオンシップに導く活躍をしたいです。ただ、個人のスタッツを気にすることはないです。自分が気にするのはチームの勝利に貢献すること。最優先事項は勝利で、新人王といった個人の勲章はその次です。

Bリーグにアジャストするため最も必要なことは、正確な判断力だと思います。大学では戦術で、それぞれの役割が明確に決められていました。でも、プロでは次のプレーを自分で予測し、それぞれの状況に応じてどう動くべきか選択しないといけない部分が増えます。

──日本での暮らしという環境への変化は問題ないですか。

日本は僕にとって馴染みのある場所なので、環境の変化に戸惑うことはありません。最初は広島がここまで大きい都市だとは思っていなかったので、ちょっと驚いたところはあります。まだ来たばかりですが、日本での暮らしを楽しんでいます。食べ物はとても美味しいですし、チームメートに連れていってもらったお好み焼きも好きになりました。

──広島は経験豊富なベテランも多いです。彼らとのコミュニケーションはうまく取れていますか。

僕はチーム最年少で、ルーキーとして他の選手からいろいろと学んでいます。例えば同じポジションの朝山(正悟)さんは卓越したリーダーです。彼は豊富な経験の持ち主で、僕はここまで年齢の離れている選手とプレーするのが初めてなんですが、勉強になることばかりで素晴らしい経験になっています。ただ、試合になったら歳の差は気にしないで、自分が言いたいことはどんどん言っていくつもりです。

──Bリーグの印象ですが、大学時代はどのように見ていましたか。

短大を終えた後から、Bリーグの情報は注意深く見ていました。この2年間でもより人気を増していると思いますし、リーグの成長具合に驚いています。良い選手が多くて、B1だけでなく、B2のレベルも大きく上がっていると思います。実際、アメリカの選手たちからも注目されるようになっています。『BASKETBALL ACTION 2020 SHOW CASE』に出場して、能力の高い選手がたくさんいることを肌で感じました。

アイザイア・マーフィー

「日本代表入りは目標の一つ、どんな相手にも打ち勝つ」

──日本代表入りは今から意識していますか。そのためにはBリーグでも代表選手を相手に結果を残す必要があります。

日本代表入りは目標の一つだし、これからもっと成長して達成したいです。『SHOW CASE』でも対戦した代表選手で同じガードの篠山(竜青)さん、富樫(勇樹)さんは確かな実績の持ち主でとても尊敬しています。ただ、僕はハイレベルな戦いをしたいので、彼らとのマッチアップはとても楽しみにしていますし、自分に自信を持っています。ハードにプレーしていて、どんな相手にも打ち勝っていくつもりです。

──あと少しで開幕となりますが、期待のルーキーとして注目を集めることにプレッシャーを感じることはありますか。

僕のプレーを見たいと思う期待に対して、プレッシャーを感じることはないです。それよりも、今は早く試合に出たい気持ちが強いです。実際の試合では、アンダードックのメンタリティで負けん気を持ってプレーすることが重要になると思います。それこそ僕たちがハードにプレーし、試合に勝つための力になる。このメンタリティは持っていないといけないですね。

僕たちは昇格チームであり、僕のようにB1でプレーするのが初めての選手がいます。最初から優勝を狙ってというより、その第一歩としてまずはプレーオフ出場を果たすことに集中したいです。

──最後にファンへのメッセージをお願いします。

Bリーグに来ることができて興奮しています。広島ドラゴンフライズに加入し、日本のトップ選手たちが集う高いレベルでプレーできることが楽しみです。広島のファン、さらにBリーグのファンから応援してもらえるような選手になりたいと思っています。皆さんと会場で会えることが待ち遠しいです。