次の対戦相手はレイカーズ、自信と勢いを持って臨む
プレーオフをナゲッツが席巻している。ジャズとのファーストラウンドを1勝3敗からの3連勝で制すると、クリッパーズとのセミファイナルでも同じく1勝3敗から逆転での勝ち上がりを決めた。盤石の安定感を誇るはずのクリッパーズ守備陣を打ち破る原動力となったのは、ニコラ・ヨキッチとジャマール・マレーのデュオだ。
運命のGAME7、第1クォーターはヨキッチが、第2クォーターはマレーがオフェンスを牽引する。ここまではクリッパーズも互角の勝負を演じていたが、第3クォーターに入ってこの2人のチャンスメークから他の選手まで得点を重ねるようになるとついていけなくなった。28-18と圧倒した第3クォーター、ナゲッツは6本の3ポイントシュートを成功させているが、その内訳はマレーが1本、ジェレミー・グラントとポール・ミルサップがそれぞれ2本、ギャリー・ハリスが1本。マレーの1本はハリスのアシストによるものだが、他はヨキッチとマレーがお膳立てしたものだ。
2人の連係を断ち切りに行ったクリッパーズの策を上回り、長距離砲で一気に点差を広げた。そしてこれは、堅守に対するクリッパーズの自信を打ち崩すものとなり、終盤を待たずして決着がつくナゲッツの完勝という試合展開を作り出した。
ヨキッチは16得点22リバウンド13アシスト、さらには2スティールに3ブロックとオールラウンダーぶりを遺憾なく発揮。またマレーはフィールドゴール26本中15本成功の40得点と5アシストを記録した。
「ここまでの戦いをすごく楽しむことができた」と試合後にヨキッチは満面の笑みで語る。「僕たちは決してあきらめない。対戦相手が自分たちより優れているとは認めないんだ。クリッパーズは素晴らしいチームだけど、89点に抑えた。僕たちは素晴らしい戦いをして、お互いに支え合ってプレーしている」
そんなヨキッチについてマレーは「楽しんでプレーしているのがすごいよ。試合を軽く考えるんじゃなく、勝負どころを理解した上で自分らしいやり方でプレーしている。ポストで相手を圧倒して、1対1で勝てる。ダブルチームを仕掛けられたらパスを選択できる。本当にすごい選手だ」と称賛を惜しまない。
ヨキッチも『頼れる相棒』マレーを「競争心が強くて、とことん努力する選手だ」と評価する。ただ、2人ともチームで戦い、チームで勝ったことを強調する。ヨキッチはこう続ける。「勝因はジャマールと僕だけじゃない。シーズンで一番大事な時期に全員がそれぞれの役割を受け入れて、全員で勝利を勝ち取ったんだ」
2人がプレーオフで戦っている相手は、ジャズでありクリッパーズであると同時に、自分たちへの過小評価だ。今回のシリーズが始まる前も、「ジャズとのGAME7で疲れ果てている」、「選手層が薄い」、「プレーオフでの経験が足りない」という評価を受け、評論家やOBたちの大半がクリッパーズ優位を予想した。1勝3敗となった時点であきらめてもおかしくなかったが、ナゲッツはそこで結束を強め、それぞれがステップアップして勝利をもぎ取った。
マレーは言う。「僕たちはこれまでも力を見せてきたけど、いつも証明しないといけない立場だ。でも、今回クリッパーズを相手に逆転できたのは大きいと思う。厳しい状況に追い込まれても逆転できると思っていた。1勝3敗になっても次の試合で勝つことだけを考え、その意識でずっとプレーしてきた。周りは僕らについてネガティブな意見ばかり言うけど、聞いていて面白かったよ。これで評価が変えられたかな」
次のカンファレンスファイナルではレブロン・ジェームズを擁するレイカーズと対戦する。優勝候補筆頭とも呼ぶべきチームで、またも厳しい戦いが予想されるが、不安はないかと尋ねられたマレーは「レイカーズも同じように不安を感じているだろうね」と答えている。
若いチームに勢いがある、という表現では今のナゲッツの躍進は説明できない。ビッグマンだがハンドリングに優れ、ポストアップから自由自在にチャンスメークができるヨキッチ、圧倒的なシュート力を持つマレーの連係が中心ではあるが、ここにきて他の選手も軒並み調子を上げている。休養は少ないかもしれないが、それだけ試合のリズムはつかんでいる。少なくともナゲッツの選手たちは自分たちがアンダードッグだとは思っていない。ここまで勝ち抜いた自信と勢いを、レイカーズにぶつけるつもりだ。