星野曹樹は昨シーズンに特別指定選手として新潟アルビレックスBBに入団し、早速7試合に出場してプロの舞台を経験した。プロの選手として、覚悟を持って新シーズンに向けて準備を進めてきたが、プレシーズンゲームでは思うようにプレータイムを与えられず、悔し涙を流した。新潟を再び強豪へ押し上げ、自身の立ち位置を確立する挑戦が始まる。
栄養学の本に出会い、自己管理を徹底
──しっかり取材をするのは初めてということで、バスケを始めたきっかけからこれまでの経歴を教えてください。
小学校6年間は野球をやっていました。ピッチャー、ライト、ファーストといろんなポジションをやっていました。結構強かったんですけど段々面白くないと思い始めて、あと坊主が嫌だったということもあって辞めました。中学からバスケを始めて、いきなり3、40点くらい取って楽しいと思ってそれから続けています。
高校は帝京長岡で、大学は白鴎大に進みました。U22、U24で日本代表に選ばれ、昨年のジョーンズカップで3位になりました。
──最近ヨガを始めたそうですね。高校時代に2度、前十字靱帯断裂を経験したことで自己管理を徹底するようになったのでしょうか?
高校までは朝練のために毎朝5時半に起きて夜は10時くらいに帰ってと、生活がしんどくてほとんど自己管理はできていませんでした。しっかり始めたのは大学で栄養学の本に出会ってからです。生活を習慣化することによって自分のモチベーションを保つことができたり、バランスの良い食事を取ることで身体のコントロールもできたり、いろいろ書いてあったんです。最初は何を言っているか分からなかったんですけど、自己管理をすることによってパフォーマンスが上がるなら1カ月くらいやってみようと思ったんです。「こんなの毎日は無理だ」と思って最初は1週間で断念したんですけど、それでももう一度頑張って1カ月続けたら本当に調子が上がっていったんです。お風呂に長く入ってケアをしたり、自炊をしたり、ヨガで調子を整えたり。今は噛み合わせが悪いので歯も矯正しています。自分に対してお金もかけて、身体に気を遣っています。
──素晴らしいですね。コロナの影響でオフが長くなりましたがその間で新たに取り組んだことはありますか?
トレーニング施設も体育館も使えなかったので、自宅でできる腕立ての器具や懸垂の器具を買いました。できる限りのことはしてきたので調子は良いです。
──先日、秋田ノーザンハピネッツとプレシーズンゲームを行いました。昨シーズンは観客の前で得点を決めることができなくて残念と言っていましたが、一つ願いが叶いましたね。
お客さんの前で得点が取れたのは素直にうれしかったです。でもまだまだ課題もありますから……。
秋田に敗れるも「危機感は感じつつも修正できる」
──確かに秋田の激しいディフェンスに苦戦し、試合は厳しい結果となりました。
外国籍選手が合流してまだ3日くらいで噛み合わないのは当たり前だし、ただでさえ新潟は8人も入れ替えがあって、詰め切れていない部分はありました。
ヘッドコーチも変わり、これだけ変わったチームなので、集合体になることは簡単ではないと思います。ただ、危機感は感じつつも修正できる部分だとも思っていますし、若手も自主性を持ってバスケットに取り組むことが一つの勝ちに繋がると思っています。
──最も課題に感じた部分はどこになりますか?
1on1のディフェンスだと思います。1人が1人を守るのは当たり前なんですけど、カバーに行きすぎてしまい秋田にシュートを多く決められました。
ターンオーバーも多く、4人が止まってしまい、1人だけしか動いてない時もありました。秋田のディフェンスはすごかったです。あれぐらいやったらどのチームにも効くんだなって見習わせてもらいました。1on1で守りつつ、もっとチームとして連動していきたいです。
──大学までは主に4番をやっていたと思いますが、求められる役割はどこになるのでしょうか?
状況によりますね。高校、大学とずっと4番ポジションでやってきたので4番のほうがやりやすいですけど、今後代表も目指しているので、挑戦という意味で3番に固定してもらいたいです。
──そうなると林翔太郎選手や池田雄一選手がライバルになりますね。練習中から2人を意識しますか?
もちろんします。2人はシュートが上手で、自分はまだシュートに課題があります。僕は走ることやディフェンスなど、2人と違うところで評価されていると思うので、ポジションアップしても問題ないと思っています。
プレータイムをもらえず「がっつり泣きました」
──新チームになって皆がゼロからのスタートとなります。自分の力を証明できるという自信はいかがでしょうか?
そうですね……。秋田戦はプレータイムが少なくて、自分としても何が悪かったの分かりませんでした。練習では声も出してアピールできていると思っていたので、これだけ使われないのは求められていることが違うのかなって。チームがタイムシェアをしている中で自分だけプレータイムが少なかったのは本当に悔しかったです。言葉は悪いかもしれないですけど、こういう経験はしたことがなかったので屈辱を味わったというか。家に帰ってから結構がっつり泣きました。
──エリート街道を歩いてきただけに初めての挫折となったのですね。それでもプレシーズンゲームにそこまで本気になれることは素晴らしいことだと思います。
1分1秒でも多く出たいと思いますし、1試合1試合に懸けていますから。今思えば少し恥ずかしいですが、そういうチャンスが与えられず悔しさが勝ちましたね。自分で答えを見つけるのがプロだと思っているので、練習中からしっかりアピールしていきたいです。
──では最後にそうした反骨精神も含めて、ファンの方へメッセージをお願いします。
この間、中学の時の先生と話して、「お前はがむしゃらにやってこそ評価される選手だよ」と言われました。へこんでいる暇なんかないので、原点に戻ってがむしゃらにやろうと思っています。
自分の強みはディフェンスとアグレッシブに頑張ることです。スターのようなプレーを見せることはできないかもしれないですけど、一つひとつのプレーをがむしゃらにやる姿は見せることができます。それは皆さんに勇気を与えらえるかもしれないですし、チームを鼓舞することもできると思っています。万全な形で開幕を迎え、チャンピオンシップを目指して頑張るので、応援とブーストをよろしくお願いします。