デイミアン・リラード

『特別な存在』リラードを輝かせる仕組み

ユスフ・ヌルキッチの復帰で再開前から注目されていたブレイザーズはバブルでの成績を6勝2敗とし、3.5ゲーム差あったグリズリーズを逆転し8位でプレーインに臨むこととなりました。弱点になっていたビッグマンの機動力やプレーメーク能力を補ったヌルキッチの献身的な活躍と、デイミアン・リラードの勝負強さで、やっと本来のブレイザーズが戻って来たと感じさせます。

ディフェンスの中心だったモーリス・ハークレスとアル・ファルーク・アミヌが移籍し、ヌルキッチがシーズンの大部分を欠場することが分かっていた中で迎えた今シーズン、ブレイザーズはよりオフェンシブな戦い方を目指しました。昨シーズンに西カンファレンスファイナルまで進んだ得点力を維持する狙いは、カーメロ・アンソニーのシーズン途中の獲得が当たったこともあり成功しました。しかしその一方で、ザック・コリンズは開幕5試合でケガのため離脱したことで運動量もスピードも欠き、ディフェンス力の低下は深刻なものとなりました。

結局、このディフェンス力の低下に足を引っ張られ、今シーズンは常に勝率5割を下回る戦いに終始してきました。

この苦しい状況においても、強い闘争心で勝利を目指すリラードは、得点、フィールドゴール成功率、3ポイントシュート成功率、アシストでキャリアハイを更新する驚異的な活躍で、何とかチームを踏み留まらせました。2年連続でオールNBAチームに選ばれたポイントガードは、チームが低迷するほどに個人の活躍度を上げていく『さらなるステップアップ』を実現したのです。

『バブル』でのシーズン再開を迎えた時点で29勝37敗と1試合も無駄にできない状況、なおかつサンズやスパーズの追い上げもある中で、リラードは毎試合のように紙一重の試合を制する活躍を見せてくれました。

ヌルキッチの復帰で全体の運動量が上がり、チームディフェンスは見違えるように改善しましたが、上位チームとの対戦ばかりの中では限界があります。しかも過密日程の中で試合をこなすごとにディフェンスは機能しなくなっていきました。しかし、オフェンスでも運動量を落とさないヌルキッチは、ワンポゼッションの中で何度もそして確実にスクリーンを掛けて、リラードやCJ・マッカラムの突破を助け、これまで以上に個人で得点しやすい環境を整えました。

リラードは『バブル』で平均12.4本の3ポイントシュートを打ちましたが、そのうち8.3本をフリーの状況で打っています。中断前が6.5本だったことを考えると、絶好調のリラードが徹底的に警戒されているにもかかわらずフリーになる回数が増えたことになります。またスクリーンを掛ける位置もハーフライン近くまでヌルキッチが押し上げており、ディフェンスのプレッシャーを受けずにプレーできたことがリラードのスタミナロスも抑えてくれていました。

リラードに得点を取らせるためにヌルキッチが献身的な働きは、リラードが最後の5試合中4試合で40点以上を記録することに繋がりました。特別な個人能力を発揮するリラードと、そのエースを運動量で支えるチームメートという『ブレイザーズらしさ』は完全に戻ったと見ていいでしょう。

リラードの驚異的な個人能力に目が行ってしまいますが、再開後はチームのアシスト数が3.8本増えており、ヌルキッチを経由することでチーム全体のボールムーブも大きく改善しています。ブレイザーズは特別な選手であるリラードのチームですが、個人技をチームの力として繋ぎ合わせるヌルキッチの献身性が支えているチームでもあるのでした。