文=丸山素行 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

「何をすればいいかというのはコートで表現できた」

栃木ブレックスは先週末の富山グラウジーズ戦で2連勝を収めた。それでも2試合とも逆転勝利で、序盤の戦い方に課題を残している。特に第2戦では第1クォーターで2桁のビハインドを背負う展開に。ここで流れを変えたセカンドユニットが、その後の勝利を手繰り寄せた。

試合開始5分過ぎ、栃木は一度に4人の選手を交代させた。それだけ流れが悪かったことだが、交代で入った生原秀将は「コーチに何か言われなくても自覚はあるので、何をすればいいかというのはコートで表現できた」と、5得点を挙げて流れを呼び込んだ働きを振り返った。

「控えで出てくる選手が身体を張ったり、ブレックスらしいプレーを表現できて、それが第2クォーターや第3クォーターにつながったと思う」と生原は語る。栃木は持ち前のリバウンド力と堅守を取り戻し、第2クォーターを10点に封じて逆転に成功した。

一度立ち直った後は、主導権を握り続ける展開に。竹内公輔は「ナベ(渡邉裕規)と生原がオフェンスでリズムを作ってくれた。ウチはそんなにスタメンと控えに差がない」とコメントしている。生原も竹内と同じ考えを持ち、「セカンドユニットで出てるというよりは、チームの一員としてプライド持ってやっています」と言う。

宇都とのマッチアップで得た新たな発見

生原はこの試合、ゲームハイのライアン・ロシターに次ぐ14得点を挙げ、得点面でチームを牽引した。約1カ月ぶりとなる2桁得点だったが、「タフショットもあまりなかったですし、チームで作った場面でのシュートが入っただけ」と生原はチームオフェンスの成果だと謙遜する。

それでも1対1からプルアップジャンパーを放つシーンが何度かあり、これは個での打開ではないかと疑問を投げかけると、生原はこう説明してくれた。「でも、あれは組み立てる中でいきなり自分でシュートを打ったわけじゃなく、まず逆サイドに展開した後に自分に与えられた場面でした。しっかりスペースがあって、狭い中でやった印象はなく、パスを展開した中で自分が打った形です」

現代バスケではポイントガードにも得点力が求められる。対戦相手である富山の宇都直輝は得点力のあるポイントガードの代表例だ。生原はマッチアップの感想をこう語る。「宇都さんはリーグを代表する選手だと思います。自分は若いし、スピードも持ち味としてあります。宇都さんみたいに早い段階でボールをもらってプッシュして、行けるところは行って、ディフェンスが対応してきたら外の選手が空くという意味で、ドライブが重要だと思いました」

生原は理想のガードに近づくため、新たな引き出しを手に入れようとしている。「宇都選手はドライブで崩してフィニッシュまで持って行けますし、外の選手に出せるというのは自分にはあまりないところなので、ブレイクでももっとシュートを狙っていっていいのかなと思いました」

田臥のような落ち着きを与えられる存在を目指して

生原は以前の取材で「学ぶために栃木を選んだ」と話し、「入団当初とは違って、欲が出てきてしまった」と、学ぶだけでなく試合で活躍することへの欲求が高まっていると明かした。生原は一定のプレータイムを勝ち取ったが、まだ終盤の大事な時間帯を任せられるまでには至っていない。「自分が監督だとしても、田臥さんを出してゲームを落ち着かせると思います」と生原自身もそれを認めている。

「特に田臥さんが出てる時間は落ち着きますし、そこは自分がもっと学ばないといけないです。今日の終盤も田臥さんが出て自分も出るという場面もあったので、そこを自分一人だけで任せられるくらいの選手になれば、自分に自信を持っていいと思います」

2試合とも20分を超える出場機会を得て、終盤もコートに立ち続けた。「今日の場合は試合に出れましたし、そこで慌てずに自分のプレーができたので良かったです。シーズン当初に比べると、第4クォーターの終盤で出ることもあるので自信になっています」と成長を噛み締めた。

今週末はアウェーで川崎ブレイブサンダースと対戦する。川崎とは6ゲーム差開いており、残り7試合で覆す可能性は極めて低い。それでも「チャレンジャー精神をしっかり持ってやっていきたい」と意気込む生原にとっては、毎試合が信頼を勝ち取るための大事な場である。一戦必勝で臨むことに変わりはなく、生原個人の挑戦に終わりはない。