文・写真=鈴木栄一

残り0.6秒、タフショットをねじ込み勝利の立役者に

4月14日、名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、リーグ屈指の強豪アルバルク東京とのアウェーゲームに臨んだ。第3クォーター終盤に最大22点のリードを許す劣勢となったが、見事な逆転勝利を挙げている。

決勝点を挙げてヒーローとなったのが船生誠也だ。残り12秒、1点を追う名古屋Dはファウルゲームを仕掛け、A東京の安藤誓哉がフリースローを2本失敗。名古屋Dは笹山貴哉とジャスティン・バーレルのピック&ロールから笹山がシュート。これは外れるが、オフェンスリバウンドをつかんだ船生が体勢を崩しながらもジャンプシュートを沈め、残り0.6秒で逆転。93-92で名古屋Dが勝利した。

この値千金の一撃について船生は、「リバウンド、無我夢中で行ったら落ちてきた感じです。打った瞬間に入ったと思いました」と振り返る。笹山は「船生はああいうタフなシュートを結構決めてくれる選手。打った瞬間、入るという感覚がありました」と船生の勝負強さを信頼していたと言う。

逆転勝利を呼んだ「思い切ってリングにアタック」

試合全体で11得点を挙げた船生は、大逆転をもたらした要因について次のように考える。「後半、ゾーンディフェンスにすることで相手が攻めあぐねていました。そして自分たちが思い切ってリングにアタックすることで、相手がファウルトラブルになったり、簡単にシュートを決めることができました」

実際、船生が言及したようにゾーンディフェンスを敷いてインサイドへの守備を強化したことで、前半は19点を取られていた相手ビッグマンのアレックス・カークを後半は9得点に抑えた。特に勝負どころの第4クォーターはわずか2得点に封じている。

一方でオフェンスは、梶山信吾ヘッドコーチも「インサイドのアドバンテージはウチにあると言い続けていました。ただ、前半はペイントアタックしているのに、冷静さを欠きヘルプが来て空いているところにパスをさばけなかった。後半、最初のオフェンスで中東(泰斗)がレイアップを決めて落ち着けました」と語るように、ゴール下へのアタックで効率的に得点を挙げられたことが後半の追い上げに大きく寄与した。

インサイドアタックを重視した結果として、カーク、ブレンダン・レーンと相手ビッグマンがファウルトラブルとなり、激しい守備ができなくなった。それが試合終盤におけるバーレルのゴール下での連続得点を導く要因にもなった。

「自分たちのプレーができれば、かなわない相手はいない」

ここ1カ月、A東京は大量リードを奪うも追い上げられ、なんとか逃げ切る試合が増えていた。ただ、試合巧者のアルバルク相手に逆転勝利まで持っていくのは相当に難しい。しかし、船生は「ウチは15点、20点のビハインドから勝つことも多いです。自分たちのプレーができれば、かなわない相手はいないと思っています」と、自分たちの底力に自信を見せる。

混戦の中地区2位争いで大きく抜け出すためには、ここで同一カード連勝が欲しいところ。「アルバルクさんは新潟戦以外、連敗したことがないです。そのチーム相手に明日も勝って弾みをつけて、自分たちの力でチャンピオンシップ出場を勝ち取っていきたい。勝つ自信はあります」と船生は言う。

「今日、勝ったことでおごる選手はいないです。ただ、かといって慎重に入りすぎてはいけない。しっかり楽しんで、コート上でしっかりコミュニケーションを取りながら自分たちのバスケットボールをできればいいと思います」

船生がこう語るとおりのプレーができれば、名古屋Dが連勝を果たすことは十分にあり得る。勝利のためには、攻守ともにアグレッシブなプレーを見せ、ここ一番での勝負強さを持った船生の活躍が大きな鍵となるはずだ。