文=泉誠一 写真=野口岳彦、FIBA.com、古後登志夫

男子と女子、賞金額の大きな格差はなにゆえに?

男子の賞金額1万2000ドルは女子の8倍である。その格差について協会は、「チケット売上の差」、「男子は家族を養うためにもお金が必要」、「男子はスピードがあって力強く、競争が激しい」ことを挙げ、最後に『何よりも見ていて面白い』と主観的評価で結論づけた。

だが実際は、チケット売上は同等であり、女子にだって生活がある。スピードや力強さは、男子の方が数値的に上回るかもしれない。それでも競争が激しいことに性別の差はないはずだ。

女子選手たちは協会主催の大会をボイコットし、新たなる大会を作って男子に負けない賞金獲得へ向けて奔走する。さらに、それぞれのプライドを賭けた『男女対抗戦』へ発展していくことに──。

これは1973年にテニスの男女対抗戦を行ったビリー・ジーン・キングvsボビー・リッグスを描いた映画『Battle Of the Sexes』の冒頭部分である。飛行機の中でなにげなく見始めたこの映画だったが、思わず日本の現状とシンクロさせながら見入ってしまった。日本一を決めるトーナメントの賞金額は男子の天皇杯が2000万円なのに対し、女子の皇后杯はたった500万円。4倍もの格差があるのが現状だ。

男子プロリーグが世界に遠く及ばない年俸事情

2018年現在、プロテニスの賞金額はどう変わったのだろうか。男子1位のロジャー・フェデラーは365万ドル(約3.8億円)。女子1位のキャロライン・ウォズニアッキは322万ドル(約3.4億円)と今では同等である。日本のプロゴルフ事情を見ても、昨年の賞金王である宮里優作は1.8億円であり、賞金女王の鈴木愛は1.4億円とこちらもほぼ差はない。

一方、バスケ界はまだまだ大きな隔たりがある。ステフィン・カリーの3400万ドル(約36億円)を筆頭にNBAの平均年俸は710万ドル(約7.5億円)。女子WNBAでトップクラスの選手でも10万ドル(1000万円強)程度であり、その差は天皇杯と皇后杯どころではない。しかし、テニスやゴルフと違って、明白なマーケティングの差がある以上、致し方ない部分もある。

世界のプロスポーツリーグにおける平均年俸ランキングを見てみるとNBAが1位だった。2017年度のプロ野球は3826万円、Jリーグは2313万円である。日本のトッププロリーグと世界を比較すればMLBは450万ドル(約4.8億円)、プレミアリーグは340万ドル(約3.6億円)と遠く及ばない。しかし、日本のスポーツはまだまだ成長できる余地があるという証でもある。さて、Bリーグはいかほどなのだろうか?

世界プロリーグ平均年俸ランキング
1位 NBA(アメリカ/バスケットボール) 710万ドル
2位 MLB(アメリカ/ベースボール) 450万ドル
3位 IPL(インド/クリケット)390万ドル
4位 EPL(イングランド/サッカー)340万ドル
5位 NHL(アメリカ/アイスホッケー) 310万ドル

上記のランキングを20位まで広げてみても、女子リーグは一つも入っていない。世界の女子プロリーグの平均年俸が記された資料を合わせて紹介しよう。

世界女子プロリーグ平均年俸ランキング
1位 WNBA(アメリカ/バスケットボール) 7.5万ドル
2位 Super Netball(オーストラリア/ネットボール)5.2万ドル
3位 D1 Femine(フランス/サッカー)5万ドル
4位 Frauen-Bundesliga(ドイツ/サッカー)4.4万ドル
5位 FAWSL(イングランド/サッカー)3.5万ドル

どちらもバスケが1位だが、世界的に見ても女子のスポーツマーケットは発展途上である。

主観的に言えば、『何よりも見ていて面白い』

リオで8位だった女子日本代表は、次の東京オリンピックでは金メダルを狙っている。しかし、オリンピックで好成績を収めた競技が、その後の国内や国際大会まで注目が続き、繁栄するかといえば、そう簡単な話ではない。ロンドンオリンピックで銅メダルに輝いた女子バレーボールだったが、その後に行われたV・プレミアリーグは平均2875人と前年平均の3069人よりも集客数は落ち込んでいる。

平昌オリンピックで獲得した13個のメダルのうち、8個は女子アスリートのものだ。現在、熱戦を繰り広げているパラリンピックでは、村岡桃佳がすでに4つのメダルを獲得。だが、ブームになっている競技を頻繁に目にする機会も4年に1度であり、オリンピックと競技単体は別物と捉えた方が良い。世界で活躍する日本の女子アスリートたちを輝かせるにはどうすべきか。世界的に発展途上である女子プロスポーツに対し、逆転の発想で日本から何かを企て、世界をリードできるポテンシャルだけはヒシヒシと感じている。

そう思っていた矢先、『3×3.EXE PREMIER』が世界初となる女子プロリーグ発足を発表し、参戦チームを公募している。女子3×3と言えば、2016年に3×3女子U18日本代表がアジア選手権で優勝。2011年の第1回ユース3x3世界選手権に出場した当時高校生の宮澤夕貴(JX-ENEOSサンフラワーズ)、三好南穂と長岡萌映子(トヨタ自動車アンテロープス)、近平奈緒子(アイシンAWウィングス)は世界3位となって銅メダルを獲得している。世界に先駆けて立ち上がった3×3女子プロリーグにより、東京オリンピックに向かって盛り上がっていくことだろう。

Wリーグは今週末より上位8チームによるプレーオフが始まり、いよいよクライマックスを迎える。主観的に言えば、日本の女バスだって『何よりも見ていて面白い』。

東京オリンピックで女子バスケが活躍することにより、今のカーリングチーム同様、必然的にブームが巻き起こる。その流れに乗って大きくブレイクするために、どうマーケットを拡大させるかを考え、今から準備しておく必要がある。3×3女子プロリーグが産声を上げ、Wリーグは来シーズン20年目を迎える。明るい未来に向かったマイルストーンを設定するには最高のタイミングでもある。